31-2

どこか憎しみの籠ったその目から視線を外せない自分がいて、気づいたら質問していた


「…ロキってナルシスを憎んでたりする?」

「な…?」

驚いた顔をするロキにそれが当りなのだと理解する


「何となく…ご家族の死の話を聞いてからそんな感じがしてたんだけどね」

「…」

「ごめん。簡単に踏み込めるようなことじゃないと思うから無理に聞く気はないの」

「悪い…」

ロキはバツが悪そうに視線を外す


「いいの。国が絡んでれば簡単に話せないことも分かってるから。でも…いつか話せるようになったら、みんなにもその苦しみを分けて欲しいとは思う」

助け合ってる仲間だ

一人で抱え込んで苦しみ続けるなんてことだけはして欲しくなかった


「…ああ」

ホッとしたように頷くロキにそれ以上の言葉はいらないだろう

全てを暴くのが私の望みというわけでもないのだから

だとすればこの話はここでおしまいでいい


「調べてみたらこの町の平均収入は15万シアくらいだったの」

明らかに話を逸らすとロキの強張った顔が緩んだ


「でもジョンのような職人の相場はもう少し高かったわ」

「ウーを見ながらってので足元を見られたせいだろう。カメリアにしても同じか」

「最低の領主だわ。これは早い所いろんな理由をこじつけて2人の報酬を上げないと…」

「…まぁそれはおいおいだな。2人ともここに住んでることと、食事付きってことでその分を報酬換算して計算してるからな」

「家賃と食費ってこと?」

「カメリア自身そう言ってただろ?長屋ですら4万シアだ。普通の部屋借りたら6万シアは軽くいく上に光熱費もかかることを考えれば10万シア相当だ」

「…」

まぁ確かにそうなんだけど


「ジョンにしたら同じ10万でも倍の価値があるってことだ。お前の気持ちもわかるけど、相場に合わせるためにって急いで上げるのは逆に2人の負担になるんじゃないか?」

「確かに…」

「お前の気持ちが収まらないならその分、迷宮で種やら調味料取ってくりゃいいだろ。2人にとったら報酬よりそっちの方が価値がありそうだ」

「そっか。確かにそれは有かも」

少しこころが軽くなる

2人の報酬の事はこれからゆっくり相談しながら考えていこうと改めて決めて、話を元に戻すことにした


「そういえば忘れられた町って言ってたっけ」

「…あぁ」

お駄賃替わりの練習帳を買った日に聞いた話を思い出す

スタンピードの際にも何の援助も復興支援も無かったと言っていた


「これで手加減する必要はなくなったな」

「え?」

「こっちの話。領主の事は何とかする。そのための伝手と手段はあるからな」

「…そう」

頷くもののどこか不穏な何かを感じた

いつものロキとは違うどす黒い何か…

でもなぜか、そのことに触れてはいけないような気がした

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