閑話5-2

「こんにちはー」

「あぁ、いらっしゃい」

やってきたのは1か月ちょっと前に越してきたというオリビエだ

その隣にはいつも寄り添うように立つロキがいる


いつも大量に購入するとは思っていたが、どうやらダビアやマロニエが一緒に住んでいるらしいとカミさんがどこかで聞いてきた

そこにはジョンとその息子、カメリアとその子供達も一緒に住んでいるとか

どおりで消費量が多いはずだ

しかも噂のカフェのオーナーでもあると知ったのは1週間ほど前の事だった


「どうだいカフェの方は?」

「おかげさまで順調なの。おじさんも時間あったら寄ってね」

「俺は甘いもんは好かん」

「あら、お昼ご飯も出してるわよ?騎士さん達にも結構評判いいんだから」

「ほう。飯もか?」

その言葉には興味が引かれた

騎士の評判がいいということはボリュームのあるモノも置いてるということか?

この商店街にも定食屋はある

でもここ何十年の間メニューが変わったことは無い

それでもたまに食いたくなるのは確かだが通うほどではない


「この町特有のものと、迷宮品を使ったもの、創作料理の3種類からメインを選んでもらう日替わりなの」

「ほう…それは面白そうだな?」

「でしょう?だから、お待ちしてますね」

これほど楽しそうに言われるとつられてしまうってもんだ


「そのうち寄せてもらうよ。で、今日はどうする?」

「そうねぇ…」

オリビエは次々と商品を選んでいく


「おじさんのところでもこの果物扱ってるんだね?」

「…そう言えば発見者はお前さんだったか?」

「あ、ギルドマスターに聞いた?」

「ああ。あいつのことはガキの頃から知ってるからな」

そのせいで今大量の在庫を抱えることになっているのだが


「そうだ、おじさんこれよかったら」

「?」

差し出されたのは5枚の用紙

果物の外見と断面のイラストに名前、そこまではホーストにもらったものと同じ

でもそれだけじゃなく親切な解説がついている


「これは…」

「うちのカフェにも置いてるの。この果物の特徴とか、切り方なんかをお客さんに知ってもらおうと思って。カフェで出すのは凝ったスイーツだけど果物はそのまま食べても美味しいから」

「これを出してるのか?」

この得体のしれない物体をスイーツにだと?

俺の頭の中は一気に混乱した


「美味いぞ」

すかさずそう言ったのはロキだった

これが…うまいのか?

半信半疑で2人を凝視したのは仕方がないはずだ


「実はカフェのお客さんの案なんだよね」

「客の?」

「そう。スイーツを気に入ってくれて、家でも食べたいんだけど未知の果物だから」

「あぁ…」

「だからね、外見と切った断面、それに食べやすい切り方なんかを、こうやって知ってもらえばいいんじゃないかって」

「なるほどな」

そんなこと考えもしなかった


「おじさんこの辺りのは熟し切ってるから売らない方がいいかも」

オリビエはそう言いながら台の上に積んだ山の中から、いくつかを俺の方に渡してきた

全種類数個ずつ

予想はしていたがこれからさらに無駄になってくるのかと思うと憂鬱になった

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