26-3

一般の果物で何ができるか考えかけたタイミングでその答えが明かされた


「出回ってても食べたことが無いのって意外と多いのよね」

え?そうなの?

と、そっちの方が信じられない私に気付くこともなく彼女たちは続ける


「あーそれは分かる。果物って食べるタイミングが難しいものが多いもの」

「そう。それよ。だから結局食べなれたモノばかり買っちゃうのよね」

想像以上に初歩的な問題があったようだ

土地柄なのか世界的なものなのかは分からない

でも思わぬところに商売のヒントがあるようだ

やっぱりお客様の意見を聞くのは大切よね


「そう言うことなら…1週間ごとにメインの果物を変えるのもいいかもしれないですね」

「あら、それは毎週来いってことかしら?」

「だと嬉しいです」

試すように言われたのでにっこり微笑んで返す

強制はしない

でも通いたくなる仕掛けは必要だから


「甘いわよ。オリビエの事だからメインの果物は同じでも、毎日違うスイーツが並んでるかもしれないわ」

上客だけに中々するどい

でも流石に毎日3種類考えるのは…きついのよね


「その辺りは何とも言えないですね。デコレーションが少し変わることは充分あり得ますけど、流石に毎日違うものを3種類も考えるほど私の中にアイデアがないですしね」

「それもそうか?」

「毎日通ったとしても3日間は同じものを置いてほしいものだけどね」

毎日通ってくれている女性はショーケースを眺めながら言う


「材料の都合もありますし何とも言えませんけど、メインがその果物というだけで別の果物のスイーツが出せないわけじゃないですし…」

「つまり?」

「しばらくの間この5種類は物珍しさもあって重宝するでしょうから、メインで出してなくてもショーケースには並んでると思いますよ」

思い付きの提案を決定事項のように言ってみる

この反応でどうするかを決めるのも有でしょ


「なるほど。一般の果物がメインで置いてあっても、このスイカのスイーツが食べれる可能性もあるってことね?」

「はい」

「…何か燃えるわね」

「そうね。来たタイミングの勝負ね」

ん?何か違う気もするけど気のせいかしら?


「とりあえずショーケースを覗きに来るだけっていうのも有よね?」

「そうですね。購入いただければその方が嬉しいですが…もちろんウィンドウショッピングも歓迎しますよ」

「あ、それよりも予約するって言うてもあるわよね」

「そうか。その手が…でもそれはそれで迷うわ」

ん?なぜ?

と、首を傾げていると…


「取りに来た時に絶対別に気にいるのが並んでるはず…」

「あー確かに。今のところ毎回いいのがいくつかあって悩むのが普通だもんねぇ…」

「そうなのよね。かといっていくつも食べてられないし…」

なるほどと妙に納得してしまう

それならバイキングを時々してみるのもいいかもしれないと、勝手に考え出してしまった


お客様の我儘は商売のネタの宝庫だ

この調子でいくらでも要望を出してほしいものだと思いながら、尽きることのない会話を楽しんだ

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