26-2

「ねぇオリビエ」

「はい?」

「このスイカって元はどんな状態なの?私がお店で買っても簡単に食べられる?」

「そうですね。さっき試しに食べてもらった状態なら切るだけですよ」

そう言いながら調理場にある冷蔵庫から5種類の果物を持ってきた


「ちなみにその話題の5種類がこれなんですよね」

「えー?!」

見た目にくぎ付けのお客様

お世辞にもおいしそうな見た目とは言えないだけに仕方がない


「見た目はちょっとあれなんですけど…」

自分にはある意味見慣れたものだけに驚く気持ちが分からない

かといってそう言うわけにもいかず言葉を濁すことで対応することにした


「最初に食ったのはよっぽどの怖いもの知らずだろうな。これを見てよく食おうと思ったもんだ」

そんな言葉が出るということは用途発見者が私とは知られてないということだろうか


「どれも美味しいですよ。あ、今日のスイカはこれですよ」

緑と黒の縞模様の果実を手に取りにっこり微笑んで見せる


「さっきの元がこれとは…でも味を知ってしまった以上は…」

どこか認めたくないというのがひしひしと伝わってくる

そこまで頑なにならなくてもいいのに、と苦笑する


「でもお店で見たら買っちゃうわね。別のと間違う心配もなさそうだし」

あぁ、そう言う考え方もあるのね?

確かにこれを前に間違えて買うことも、勘違いすることもないと思う


「そうね。こんなにおいしいんだもの。見た目が少々あれでも関係ないわ」

酷い言われようだ…

お客さんの話を聞きながら複雑な笑みを浮かべた私を見てロキが苦笑していた


「これ全部、中が想像できないわ」

「見た目と名前と味が一致するようになるまでにどれくらいかかるかしら…?」

その言葉にさっきの答えが見つかった気がした

並べ方と提供の仕方を工夫すればすべて解決するかもしれない

そう思いながらショーケースの中を入れ替える


「ちょっと特別感を出して…」

中央当りの一角に台を置いて少し高くする

そしてその場所に3種類のスイカのスイーツを並べた

お客様から見て一番奥にスイカの現物と半分に切った状態の物を置き“スイカ”と書いた札を立てる


「こんな感じならどうかしら?」

声をかけると皆が見に来てくれる


「あら、いいじゃない。凄くわかりやすいわ」

「本当ね。スイーツになる前の状態もわかっていいかも」

「よかった。こんな感じで特別感を出したら注目してくれるかなって」

フェアみたいな感じなら馴染みやすいだろうし…


「間違いなくするわね」

「そうね。迷ったらとりあえず…みたいな感じにもなるかも」

「ただ…」

好感触の中にその言葉はかなり心臓に悪いわ

どんな言葉が飛んでくるのかと身構えてしまった


「ただね、そうやって3種類並べられると全部食べたくなっちゃうのよね…」

「ヤダもぅ…紛らわしい言い方はやめてよね?」

友人同士で来ていた片割れが大笑いしながら言うと皆もつられて笑い出す


「その気持ちは分からないでもないけどね」

「本当よね。でもこれは本当にわかりやすくていいわ」

「どうせなら一般に出回ってるのでも同じようにしてくれないかしら?」

「え?」

旬のフルーツで…とかはありだと思うけどそんなに需要あるかしら?

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