25-4

「早速読んでるのね?」

「今は話しかけても気付かないわよ」

「そんなに集中してるの?」

「そうなのよ。だからこの子たちが余計に落ち着かないみたいで…」

カメリアはコルザとロベリを見て苦笑しながらそう言った


「じゃあ2人にも早く渡さないとね」

そう言いながら練習帳を2冊取り出した


「はい2人ともお店のお手伝いしてくれてありがとう」

「「うん!!」」

2人に渡すと早速中を確認し出した


「オリビエありがとう!」

「ありがと!」

「ふふ…どういたしまして」

キラキラした笑顔で言われるとこっちも嬉しくなる

2人は早速、練習帳に夢中になっていた


「そういえばこっちで小さい子たちの学校って聞かないね?」

「こいつらくらいのってことか?」

ロキだけでなくカメリアも、ジョンもマロニエも首を傾げる

ダビエはまだ帰ってきていないものの、この場にいたら同じ反応をしそうだ


「学園は称号持ちしか通えない。それ以外は家庭教師を雇うくらいか」

「王都の方はそうなのね?この辺は教会で教えてもらえることもあるけど、今の神父さんはお年を召してるから大変みたいで…だから今は自分の家で親に教えてもらうくらいかしら?」

「そうなるだろうな。でも教えるほどわしらも学んできたわけじゃないからな」

ジョンが笑いながら言う


「じゃぁウーが文字を読めるのは?」

「嫁に学があったから小さい頃に教えてたんだよ」

「そうだったの…じゃぁウーにとって本は、お母さんとつながるものでもあるのかしら?」

「そうかもしれんな。最もあの頃はまだ絵本や、それより少し文字の多い本くらいだったがな」

ウーの母親はウーが7歳の頃に亡くなったという

その後はジョンの手伝いをしながら暮らしてきたと言っていたから、自分で勉強していたのだろうか


「ウーの場合は商人に教えてもらってることもあるわよね?」

「ああ、隣国の商人にはこっちの言葉がわかる気さくな者が多いからな。ウーはよく可愛がってもらってる」

「隣国ってカクテュスのこと?」

「ああ。地形の関係でこの町で取引されることが多いんだ」

そう言われて地図を思い出す

確かこの町は険しい山越しに3方をカクテュスに囲まれていた


「山を迂回するにもかなりの距離と険しい道が続いてる。自然とこの町を経由するようになったらしいが、いつからか経由するくらいならとここで取引するようになった」

「気付いてみれば、この町はソンシティヴュの国に属していながら、カクテュスの方が身近な国になっちゃったのよね」

「どういうこと?」

「ソンシティヴュからは忘れられた町って言われてるのよ。スタンピードの時も援助どころか復興のための支援すらなし。この町が立ち直れたのはカクテュスのおかげなの」

カメリアの言葉にロキを見るとただ静かに頷いた

それは肯定を意味しているのだとわかる


「生活雑貨や日用品もカクテュスの物の方が多い。そう言う意味でもここはソンシティヴュなのかカクテュスなのかわからんな」

豪快に笑うジョンに唖然とする

でも、この町の人たちがたくましい理由が少しわかったような気がした



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