閑話4-2

オナグル様の冷たい目に不味いと思った

思ったことを隠すのも忘れていたと気付いても時間は戻せない


「ゴールドランクの称号を持つ家の者とは言え、そなた自身はただの一般人だ。それが王族に無礼と言えるとは…学園の『非常に優秀で品行方正な素晴らしい令嬢』がいかほどのものか…」

あざけりを含んだその言葉に羞恥心に見舞われる


「俺も学園には通っていたが…そなたが非常に優秀であれば学園は非常に優秀以上の者で溢れ返っていた事だろう」

「な…」

「表情を崩す、大声を出す、机を叩くなど令嬢にあるまじき行為だ。今のまま王族として扱うなど自殺行為だな」


確かに私の成績は悪いし学園でも叱られてばかりだった

それでもいいと、その上で正妃になれたのだと思っていたのに…

まさかお父様がそんな評価を王家に伝えているなど今初めて知った


お父様は一体何を考えて…私がそんな振る舞い出来ないってご存知なのに…

そんなことを考えていると更にオナグル様は続ける


「そこで2つ目の条件だ。もう決まったことである以上、対外的には正妃として迎える。だが、俺の用意した教師が合格という言葉を出すまで、そなたを正妃として扱うつもりはない。もちろんそれまで外部との連絡は一切許可しない」

「そんなの酷いわ!」

合格なんて貰えるはずがないじゃない!

そしたら私はずっと正妃として扱われない…

正妃としての権力を持つことで、これまで従わなかったゴールドの同級生も従わせる予定だったのに叶わないじゃない


「酷い?『非常に優秀で品行方正な素晴らしい令嬢』なら何の問題もないだろう?」

「だからそれは…」

お父様のしたことだと伝えたところで通用しないことだけは分かる

むしろそんなことを言えば王家を謀ったことを責められるかもしれない


「それほど難しい条件ではないだろう?正妃として、王族として、恥ずかしくない礼儀と教養を身につけろと言っているだけだ。教養に関しても、学園で優秀な成績を収めていたなら、1月も必要ない程度の内容を追加で覚えるにすぎん」

『そもそもの基準が違うのだから』と言いたいのを必死でこらえる


「この2つの条件が飲めないなら、この話は断らせてもらうがどうする?」

「そんなの…今更『正妃になれませんでした』なんて言えるわけないじゃない…」

その時オナグル様が見せた意味ありげな笑みに冷や汗が流れる

多分調査されているのだろう

紹介状の裏事情も私が正妃になれるから、と周りから祝いを貰っていたことも…


「ではこの書類にサインを」

「…わかったわよ!サインくらいいくらでもするわ」

半分やけくそでサインした

だって私には今さら正妃にならない選択など出来ないんだから…


「それを複写した上で原本を父上に」

「承知しました」

側近の一人が書類を持って出て行って初めて、内容をちゃんと確認しなかったことに焦りを覚えた

かなり細かい字が沢山書かれてたけど…一体何が書かれてたのかしら?

書かれている内容によっては、私だけじゃなくオーティ家も大変なことになってしまう…

だからと言って今さら止めることもできない

サインした以上それを無かったことにすることは出来ないし、サインをしないという選択肢もないのだから…と自分に言い聞かせるしかなかった

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