20-2


「何でもないよ。それより、そのボール気に入ったみたいね?」

子供達がボールを持っている姿はかなりの確率で見ることが出来る

ここ数日外で遊ぶ時は大抵ボールを持ってるのだから当然だけど


「うん。このボール面白いんだよ!」

「面白い?」

楽しいではなく?

間違えているわけではなさそうな言葉に首を傾げた私の耳に入ってきたのは…


「さっき釘が刺さったのに割れなかったし空気も抜けなかった。それにね、ジョンが踏んづけてもなんともなかったんだよ?」

「「え?」」

予想もしなかったコルザの言葉にロキと2人顔を見合わせる

穴が開かない

負荷をかけても割れない

そこから導き出されるのは”ただのボールではない”ということだけではない


「…考えてみたら30階超えた場所なんだよな」

「うん」

そしてあの時は首を傾げたものの鑑定で表示された”素材としての需要がある”という言葉

でもこれ、毛皮よりたくさん出たのに…


「どうする?牙並みの価値だったら」

「考えたくないかも」

「だよな」

「でも…今度売ってみた方がいいのかな」

考えたくないけど気になるものはしょうがない

それにこのままほっておくのは余計に怖い


「色んなことはそのあとで考えましょう」

「…だな」

私たちが困惑するのはその価値が高かった場合の事

牙1本が60万シア

それと同等の価値があった場合、私は知らなかったとはいえ、子供たちにそんな高価なおもちゃを与えたことになるのだ

気に入ったと握りしめているのを見る限り返せと言うのは難しそうだ

そうなるとどうやって子供たちを守るかが問題になる

もっとも価値があればの話だけど


「あ、そうだロキにお客さん来てるんだった」

「客?」

「うん。馬車を届けに来たって。ロキも知ってるはずだからって言われて母さんが客間に案内してたよ」

「あぁ、分かった。ありがとなコルザ」

王都を出る前にそんな話をしていたのを思い出し2人で客間に向かう


「何だ、ダビアなら急ぐ必要なかったな」

ロキは中にいるのがダビアとその部下だと気づくとそう言った


「お前…大概失礼だな。まぁ別にいいけどさ」

ダビアは苦笑する

2人の前には紅茶とお茶菓子が出されているのを見て、カメリアはいい人材だと改めて思う

その減り具合から見ると、結構待っていたのかもしれない


「馬車を届けに来てくれたって?」

私が2人に会釈してからロキの横に座るとロキがそう切り出した


「ああ。そしてこれが俺の王宮騎士としての最後の仕事だ。お前に馬車を渡した時点で契約解除」

「何だ、愚痴を言いに来る前に辞めたのか?」

ロキは呆れたように笑いながら言った

でもその後続けられたのは思いもしなかった言葉だった

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