19-3

ソラセナが来て3日目

既にその我儘と騒がしさは誰もが知るところとなっていた

「警護は決まったのか?」

「中庭に呼び出しています。最終判断はオナグル様に任せるとのことです」

「では向かおう」

オナグルは中庭に向かって歩き出す

そこには10名の騎士が集まっていた


「この中から3名を選べとの事です」

書類を受け取ると目の前の本人と見比べていく


「そうだな…剣技を持つダビア、守護を持つマロニエ、剛盾のハンソン。以上3名に正妃の警護を申し付ける」

正妃の警護と言われその場がざわついた


「恐れながら申し上げます」

「何だ?」

「お断りした場合はどうなりますか?」

そう尋ねたのはダビアだった


「王族の命を断るという事態を考えれば…新兵まで降格…辺りが妥当か」

「…承知しました。では本日を以って辞めさせていただきます」

「騎士団をか?」

「はい」

即答するダビアをオナグルは哀れなものでも見るように眺めた


「団長という地位を捨てるか?正妃の警護という誉と共に…まぁいい。嫌々警護したところで何かあったらたまらん。他はどうだ?」

「恐れながら私も辞めさせていただきます」

続いたのはマロニエだった

その後は静まり返っている


「そなたは良いのか?」

「はい。誠心誠意努めさせていただきます」

ハンソンは跪き頭を垂れた


「ダビアとマロニエは本日の業務終了を持って雇用契約を解除する。本日は引継ぎと片付けも忘れるな」

「「承知しました」」

「2人にはもう用はない。行け」

「「失礼いたします」」

2人は簡易の礼の形を取るとそのまま中庭を後にした



「お前までよかったのか?」

「あの女に付くなんてありえません。それに新兵に降格されるくらいなら辞めます」

「正妃をあの女呼ばわりか?」

「俺はあの女の本性を知ってますからね。学園ではずっと同じクラスでしたから。守る価値のない人間だと断言します」

一見穏やかな青年に見えるマロニエから飛び出す言葉にダビアは苦笑する


「なるほど…で、これからどうする気だ?」

「まだ何も。団長はどうされるんです?」

「クロキュスに馬車を届けてそのまま辺境に留まろうと思ってるよ。迷宮が豊富にあるし食うには困らないだろう」

「辺境、ですか…いい宿屋があれば選択肢としては有りですね」

マロニエは社交辞令ではなく本心でそう言っているようだ


「お前も行くか?行くなら同行者枠に入れてやるぞ。まだ団長権限があるからな」

「…ではお願いします。団長と冒険者するのも楽しそうですから」

「ならすべきことだけ先に済ませて王都を出るか。荷物は大丈夫なのか?」

「団長と同じで物は持たない主義です。必要なものはマジックバッグに入ってますよ」

騎士団という仕事柄決定した後の行動は早い

団長の引継ぎも普段から遠征時に副団長が代理をしていたためさほど時間を要しなかった

全て済ますと2人はとっとと馬車に乗り込み出発するのだった

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