16-2

何度も自分の中で果てるオナグルをイモーテルは当然のように受け入れた

ひと段落して身ぎれいにすると新しいドレスを身に纏う

自分が何もしなくても侍女が全てを整えていく


「お待たせ」

ソファで書類を確認していたオナグルの背後から抱き付くようにして告げる


「相変わらず美しいな」

オナグルは側近に書類を渡して立ち上がる


「さぁ、今日も君の歌を聞かせてくれ」

「もちろんよ」

エスコートされ設備の整ったホールに向かう

その間、すれ違う男の品定めをしようとするたびに、オナグルはイモーテルを抱き寄せ見せつけるようにキスをする


「もぅ…」

「歌姫は俺だけのものだ。他の男を見るのは許さない」

執着とも言える独占欲にイモーテルはウンザリという顔をする


「そんな態度をとってもいいのかい?」

指にはめられた指輪に触れながら尋ねられたイモーテルは笑顔を作る

“俺を満足させてくれれば好きなだけドレスでも宝石でも買ってやる”

最初に告げられたその言葉が頭に浮かべば仕方がない

機嫌を損ねればドレスと宝飾品を買ってもらえないのだから、機嫌を取るくらいいくらでもする


「ちょっと周りを見たかっただけよ?」

そう言いながらオナグルの腕に胸を押し付ける

当のオナグルは“これだけで機嫌が良くなるのだから楽なものだ”とイモーテルが思っているのには気付きもしないで満足げな笑みを浮かべていた


今はお披露目の為の練習に力を入れていた

当日まで観客はオナグルのみ

それでも毎度贈られる称賛に悪い気はしない

元々歌えれば満足だったイモーテルにとって今の環境は最高の環境だった


午前中の練習を終えるとすぐに昼食が用意される

それを済ませるとオナグルは執務室で仕事にかかり、そのそばでイモーテルはドレスや宝石のカタログを見る


「オナグル、この宝石素敵だわ」

イモーテルはカタログを持ってオナグルの側による


「ああ。歌姫に似合いそうだ。今度購入するリストに加えておこう」

「嬉しい!ありがとうオナグル」

抱き付いてくるイモーテルをオナグルはしばらく抱きしめてから仕事に戻る

それは夕方まで何度か繰り返され執務後の夕食が済むと2人でオナグルの部屋に入る


そこからは人払いがなされ、2人はベッドの上で日付が変わるまで互いの体を求めあう

オナグルだけでは足りないと言っていたイモーテルだが、今のところオナグルだけで満足しているようで、側近たちはそのことにただ安堵していた

満足できなくなればどうなるかは火を見るより明らかだからだ


妃としての役目や跡継ぎの事をイモーテルに求めるのは難しいということや、そもそも処女説を信仰する国のため、イモーテルは側妃にすることもできない

対面を考えて“側妃”としても実情は愛人であり、歌姫の役目以外で外に出ることは許されない

他の男たちに直接会わせたくないオナグルの策略のせいでもあるのだが…


正妃は以前より王が準備を進めていた令嬢で、イモーテルのお披露目が済めばすぐに婚姻が執り行われる

そのことをイモーテルにも説明したが分かっているのかいないのか…


「私に何かがあるわけじゃないならどうでもいいわ。好きにして」

そう言ってイモーテル自ら説明の場を打ち切ってしまった


多少の不安はあるものの、結局は王族の契約とオナグルとの契約という解除できない契約が結ばれていることから気にしないという結論に至ったのだ

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