15-2

「ねぇ」

「ん?」

「これって…」

拾い上げたドロップアイテムは直径15センチほどの球体


「…ただのボールにしか見えないな」

「だよね?」

念のため鑑定するもただのボールだった

素材としての需要もあると書かれているものの疑問しかない

その表現に引っ掛かりを感じながらも、直後に現れた魔物にそんなことは忘れてしまった


「ここ32階だよね?」

そんな深層でただのボールが出るものなのかな?

どちらかと言えば信じたくないと言った方が正しいかもしれない


「まぁ…そういうこともあるんじゃねぇの?持って帰ればチビが喜ぶだろ」

「そうだね。丁度いいお土産が出来たと思えば…」

といいつつも何となく納得がいかない

同じ魔物を倒してさっき出てきたアイテムは毛皮だったから余計だ

数種類のドロップを出す魔物は珍しくない

むしろ1種類しか出さない方が珍しいかもしれない

大抵の場合ランクに見合った素材1~2種類

中にはレア素材と呼ばれるものを出す魔物もいるけどそれこそ稀だ


「オリビエ行ったぞ」

「はーい」

こっちに向かってくる魔物を風魔法で倒す

ドロップしたのはさっきと同じただのボール

やっぱり解せない

一体このボールは何なのか?


「…」

「くっくっ…」

ロキが声を押さえて笑っていた


「…こうなったらあと2つボールをゲットしたいところね」

子供は4人

それは気負うまでもなく簡単に達成されてしまった


「…毛皮が3枚、ボールが5個、毛皮の方がレアだったってことよね」

「多分なー。俺も似たような感じだし」

相変わらず笑い続けるロキをジトーっと見る


「あはは。悪かった。でも4人分揃ってよかったじゃないか」

ロキはそう言いながらさらに歩みを進める


次の33階では色んな種類の顆粒出汁が出た

これはかなり嬉しい

料理の幅が広がるし、店では1種類しか入手できないから

それに顆粒出汁はお手軽だしね


34階で出たのは花の種

「これってジョンは喜んでくれるのかしら?」

「今んとこ庭には花は無かったよな?」

「そうなのよね。それが種や苗を買うお金の問題だったのか、庭の設計の問題だったのか…」

「ま、渡してやれば挑戦しそうだけどな。かなりの負けず嫌い」

「確かに!」

思わず笑ってしまう


上手く咲けば無理やりにでも庭の設計を変えてしまうかもしれない

まぁそのあたりはジョンに任せてるからいいんだけど


「花だけじゃなく野菜もあるわ」

どうやらこの町独特の野菜の種も含まれているようだ

鑑定したら”フジェの~”と表示される当り流石は迷宮って感じ?


「畑作ってって言ったら作ってくれるかな?」

「作るだろ。チビの手伝いに丁度いいかもな」

自分たちで育てた野菜を食べる

うん。最高かもしれない


「次は何を落とすかな?」

「…お前魔物よりドロップに比重置きすぎじゃね?」

「え?ダメ?」

「いや。ダメじゃないけどさ…どっちかって言えば普通は倒すべき魔物の方が気になるんじゃねぇの?」

「気のせいだとお…!?」

「伏せろ!!」

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