第30話
「桜、一緒に帰ろうぜ。球技大会の打ち上げも兼ねてさ」
「あー、ごめん。少し用事ができたから、それは彼女としてくれ」
「ちぇー、了解。また今度な」
「うん」
球技大会が終わり、それぞれが打ち上げの話や球技大会の思い出について語っている時、二人から同時に連絡が来た。
『今日、兄さんと一緒に帰りたいです』
『今日は、一緒に帰りたいな』
バレーで大活躍していた桜木さんと花蓮にそう言われてしまっては仕方が無いし、二人を労いたい。
二人に返事を送って、僕も教室を後にする。
そして、いつもの場所へ行くと二人は何故か只ならぬ雰囲気でにらみ合っていた。
「花蓮?桜木さん?」
「兄さん!!」
「夕顔君!」
二人が一斉に僕の方へと駆け寄ってくる。
「お疲れ様、二人とも」
「うん」
「それで、どうして喧嘩してたの?」
「そ、それは......」
「それは、ですね。バレーの対決の興奮がまだ収まらず、少々熱い口論になってしまって」
「そうだったんだ」
「逆に質問ですが、何故この人をここへ呼んだのですか?私だけでは不満ですか?」
「何よ。逆に夕顔君は花蓮がいることで不満だよ」
「あなたは口を閉じていてください」
「それは、そっちこそ」
あれ?二人ってなんか仲よさそうな感じがしていたんだけれど、違うっぽい?
「いや、二人とも頑張ってたから三人で何処か食べに行こうかなって思ってただけだけれど?」
「......そうですか」
「......そうなんだ」
依然と二人とも何故か釈然としない顔をしているような気がする。
「まぁ、兄さんの言いたいことは分かりました。では、行きましょうか」
「......そうね」
そう言って、桜木さんはそっと僕の袖を恥ずかしげに掴んでくる。
前は手を握ってくれたから、あんまり恥ずかしくないと思っていたけれど、慣れるまでは恥ずかしいな。
そう思っていると反対側から、花蓮がそっと耳でこうつぶやく。
「約束、覚えていますよね?兄さん」
「う、うん」
「楽しみにしていてくださいね?」
そのまま花蓮は僕の腕に抱き着くような形になる。
それを見た桜木さんは綺麗な顔を何とも形容しがたい顔に歪ませて、覚悟を決めたのか僕に抱き着くような形になる。
「ゆ、夕顔君」
「な、なに?」
「はしたない、とか思わないでね?」
「そんなこと思ってないよ」
「良かった」
安心したのか、もっと僕に密着して大きな果実を僕の腕に食い込ませて、沈んでいく。
二人に抱き着かれた記憶が今日の球技大会の思い出を上書きした。
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