第15話 懲りない愚か者

 「サクヤ、僕にも聖剣をくれないか?」

 「は?」


 俺はマサギに突然そう言われた。

 あまりにも唐突に言われたものだから、一瞬呆けた返事をしてしまった。


 「ミクには聖剣や防具を上げたじゃないか!」

 「ミクは、聖剣や聖防具の適合者だったから渡しただけだ!」

 「それなら僕にも資格がある筈だ! 僕は勇者に選ばれたのだから!!」


 本当に…何故に選ばれたのだろう?

 俺は他の三人を見ると…三人は呆れた顔をしながら首を振っていた。

 恐らくだが…マサギは、ミクに聖武具を渡された姿を見て自分も貰えるものだと思ったのだろう。

 そして…その事を三人に話して有無の確認でもしていたのだろうか?


 「あのなぁマサギ、以前にも言ったと思うが…お前がある程度の経験を積んだら考えてやると。」

 「だけど、ミクは貰っているじゃないか!」


 コイツはさっきの話を聞いていなかったのか?

 ミクは選ばれたから渡したというのに…。

 それに、聖剣は勇者だからって必ず適合するとは限らない。

 第六の異世界召喚の時の勇者だって、自意識過剰な奴だったが…ある程度の経験を積んだ奴でさえ適合者には選ばれなかった。

 それを…あの戦いの最中に戦いに参加もせずに傍観していただけの奴に勇者だからって適合するとは限らない…いや、寧ろ適合なんかしないだろ。

 聖剣の方が逆に嫌がるぞ!

 だが、マサギを見ると…自分も貰えるものだと思って目を輝かしていた。

 なら…現実を教えてやるか!


 「渡すかどうかの前に、まずはテストをしてやる。 そのテストにクリアしたら、聖剣をやるよ。」


 俺はそういうと、収納魔法から五本の聖剣を取り出した。

 マサギは聖剣を手に取ると、鞘から抜こうとした…が、聖剣は鞘から抜ける事はなかった。

 まぁ、当然だな…。

 そして2本目…3本目と手にしたが、鞘から抜ける事はなかった。

 そして4本目の聖剣は、触れる事すら出来ずに…5本目を手に取ろうとすると、聖剣から雷が発せられてマサギの体は青白く光ってから、口から煙が出ていた。

 そう…聖剣はマサギを拒否したのだった。

 

 「サクヤ、聖剣はこれで全てなのかい?」

 「あぁ、俺が所持している聖剣はこれで全てだ! 後は、ミクに渡した聖剣くらいか?」

 「そうだ、ミクの聖剣があったじゃないか!」


 マサギはそう言うと、ミクの元に行って聖剣を手に取ろうとした…が?

 聖剣の方が拒否反応を起こし、マサギは手に触れた瞬間に弾き飛ばされたのだった。

 

 「適合者が確定した聖剣が他の使い手を選ぶわけないだろ…」

 「何故だ! 何故なんだ! 僕はだぞ‼︎」

 

 勇者とは、勇気ある者の総称だ。

 戦いに参加もせずに傍観していただけの奴に勇気なんてものがあるとも思えないし、聖剣に選ばれる筈もない。

 するとマサギはまだ諦め付かないのか…今度は俺に魔剣を寄越す様に言ってきた。

 

 「魔剣は…やめた方がいいぞ!」

 「それは何故だい?」

 「魔剣は聖剣以上に人を選ぶ。 例え鞘から抜けても…」

 「御託は良いから出してくれ‼︎」

 「どうなっても知らねぇぞ!」


 俺は収納魔法から、デスブリンガーが持っていた2本の魔剣以外の3本を出した。

 魔剣マジックイーター、魔剣ライフイーター、魔剣…これ名前なんだっけ?

 マサギは魔剣マジックイーターを手に取ってから鞘から抜いた。

 魔剣は聖剣とは違って鞘からは抜ける…が、適合しないと…?


 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」


 マサギは叫び声を上げて倒れた。

 魔剣マジックイーターは強力な攻撃力を引き換えに、大量の魔力を吸われる剣である。

 なので魔力がほとんど無い状態のマサギでは、瀕死の様な状態になるのだった。

 マサギがレベルでも上げていれば、そこまでの状態にはなる事はないだろうが…?

 マサギはしばらくすると立ち上がって、ライフイーターを手に取ろうとした。


 「やめろマサギ! マジックイーターでそんな状態だと、ライフイーターでは死ぬぞ‼︎」

 

 マサギは俺の忠告は一切聞かずに、魔剣ライフイーターを手に取ってから鞘から抜いた。

 すると、マサギはドヤ顔をしながら魔剣ライフイーターを振り回した。


 「どうだ、サクヤ! 僕にも適合する剣があっただ………」


 マサギの顔がどんどん生気を失っていった。

 魔剣ライフイーターは、トドメを刺すときに適した剣で…瀕死の重症を負わせた敵にトドメを刺すときに突き刺すというのが正しい使い方で、敵がいない時に鞘から抜いて暫く経つと…こちらの生命力を吸われる魔剣だった。

 なので当然マサギは………青白い顔をしながら魔剣ライフイーターを手放して地面に倒れたのだった。


 「流石にこれで懲りたろう…魔剣は片付けるか!」

 「待ってくれ! まだ最後の剣を試していない‼︎」

 「いや、やめておけ…この魔剣は扱いづらくて、俺でも数回しか使ったことがない魔剣だからな!」

 「いや、やるさ! やらせてくれ‼︎」


 そう言ってマサギはフラフラになりながらも魔剣?を手に取った。

 すると邪悪な黒いオーラがマサギの身体に流れ込んで、マサギはすっかり変貌した姿になった。


 『クックック…これは良い気分だ! アーッハッハッハッハッハーーー‼︎』

 「あ、思い出した! アレは魔神の魔剣だ!」


 魔神の魔剣は、精神力が弱い奴は身体を乗っ取られるという厄介な魔剣だった。

 俺は聖剣を取り出してからマサギを峰で殴り付けると、マサギは魔神の魔剣から手を離して地面を転げ回った。

 そして魔神の魔剣を鞘に戻すと、残りの魔剣と一緒に収納魔法に放り込んだ。

 これで、物の見事にマサギは全ての聖剣や魔剣の適合は叶わなかった。

 しばらくして…マサギは立ち上がった。

 マサギは言ったのだった。


 「この世界には、勇者が手にする聖剣があるという話だから…僕はその聖剣を手にするまで待つとするさ!」

  

 いや…その聖剣ですら選ばれる可能性が低いとは思うんだが…?

 聖剣だって、は選ばないと思うぞ!

 そもそも…マサギが旅なんかに出たら、聖剣を手にする前に死ぬ方が先なんじゃ無いかと思う。

 コイツの考え方はかなり甘いしな…!


 こうして、この騒動はこうして幕を閉じた。

 後は4日後の襲撃だが…?

 他の3人は役割が分かっているみたいだが、マサギは何か考えているのだろうか?

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