第2話 謙虚に学ぶ者たち?(魔法)

 「さて、これから授業を開始する!」

 「「「「はい!」」」」


 翌日、俺は城にいる騎士から剣術を学び、魔導師からは魔術を習い、プリーストから法術を学んだ。

 剣術に関しては若干の違いがあるが、魔術に関してはどの世界でも共通という訳じゃなかった。

 第一と第二、第五と第六の世界では魔法と呼び、第三と第四の世界では魔術と呼ばれていた。

 魔法は…自らの体内から魔力を消費されて発動出来る技に対し、魔術は自然界から体内の魔力を組み合わせて発動出来るというものだった。

 傍から聞いていれば同じ様な物に聞こえるかもしれないが、魔法は場所を選ばずに発動出来るが、魔術はそうはいかない。

 周囲の地形によって使える能力が限られてくる。

 例えばダンジョン内だと、地属性には優れているが風や炎属性の物に関しては、外部からたいまつなどを持ち込んだりしない限り単体の炎属性では効果が薄いからだ。

 なので第三と第四の世界では、魔術の仕組みは理解はしたがあまり使用する事は無かった。

 なので、この世界では魔術が主体なのだが…魔術は上級者向けなので、魔法を教える事にした。

 この世界にはマナも体内魔力も両方存在するので問題は無かった。

 問題があるとすれば…魔術しか知らない魔導師に見られた際に質問される事が山の様に降り掛かって来るのが面倒なだけだった。


 「さて、これから魔法の授業を行いますが…勇者・賢者・聖女は分かるけど、聖戦士ってどんな能力なんだ?」

 「聖戦士とは、光の法術と戦士の力を併せ持つ者の事で…」

 「そんな重要な職業が、この女に務まるかねぇ?」


 俺はミクを見ると、体を抱え込む様な感じで座り込んでいた。

 ミクは最初にフルアーマーを渡されたが、重いだの動き難いだのと文句を言った結果…ビキニアーマーを着せられたのだった。

 そしてほぼビキニと同じ面積しかない鎧をまとって、恥ずかしさのあまりに立ち上がれないでいた。


 「早く立ち上がって胸を張れ!」

 「こんな姿で胸を張れって…出来る訳ないでしょ!」

 「お前がフルアーマーが動きにくいと言ってその鎧を支給されたんだぞ!」

 「こんな鎧じゃなくて、もっと普通の鎧は無いの?」

 「安心しろ、ビキニアーマーがある位だから多分標準装備なんだろ。 その内に慣れる。」

 「不知火は私の姿を見て平気なの? おかしくは無い?」

 「おかしいと言えばねぇ…旅慣れていないから筋肉質という訳ではないし、日焼けもしていない真っ白な肌…さぞかし周囲からはエロい目線を仕向けられるだろうな。」

 「もういやー! 私はこんな物脱ぐから!」

 「おぉ、ここで脱ぐのか? ならお前の裸を見せてくれ!」

 「この場で脱ぐ訳がないでしょ!」


 そう言ってミクはメイドを連れて建物の中に入って行くと、俺は三人から冷たい視線を向けられた。

 …というかミクの奴、恥ずかしさのあまりギャル語を話していなかったな。

 アレが素なのか?

 暫くするとミクは服を着て戻って来た。

 まぁ、今すぐ旅に行く訳では無いから普通の服でも問題は無いが…少し惜しい気がした。


 「まずは俺の手の平に手を重ねてくれ。 そして魔力を流すから感じ取ってみてくれ。」

 

 魔力と法術は違う物…この世界ではそう教えられているみたいだが、基本は同じ物だ。

 ただ魔力を+か-にするだけで、基本はあまり変わらないからだ。

 俺は水道から細長い線の状態の様な魔力を流したのだった。

 一度に大量に放出しても構わないのだが、俺と4人の魔力量が圧倒的に違うのでこの方法を取った。


 「不知火君の手を通して、体の中に何か流れて来るのを感じる。」とマサギ。

 「よく集中しないとわからないけど、何かを感じるわね!」とミク。

 「私にはじんわりと温かい物が流れて来る者が解るわ!」とマミ。

 「これが魔力か…これにイメージを合わせると魔法が使えるんだな?」とユウト。

 「まぁ、ユウトの言う通りなんだが…簡単に出来る物ではないぞ!」


 俺は魔力流しを終えると、皆に距離を取らせた。

 そしてまずは魔力の流れを感じる事から始めさせ、次により明確なイメージをさせてから炎魔法を発動しろと言った。


 「僕もミクもマミも炎属性は適性が無いという話だが?」

 「光の属性にも炎は存在する。 セントフレイムという光属性の炎があるからな。 ユウト以外は、白く輝く炎をイメージしてくれ。 ユウトは赤い炎をイメージしろ。」


 すると、その様子を見ていた魔導師と王女が話し掛けて来た。


 「サクヤ殿…一体何をされているのですか?」

 「この周辺では、炎を発生させる魔術は難しいと思われるのですが…」

 「俺が奴等に教えているのは魔術ではなく魔法なので…あいつらに魔術は難しすぎるから、まずは簡単な物から教えているんですよ。」

 「魔術ではなく魔法とは一体?」


 説明しても良かったんだが、実際に見ないと言っても信じないから…実際に見せてから説明する事にした。

 とはいえ…イメージするにしても明確な…となるとイメージなんか中々出来ない。

 俺は手の平から炎を出現させて、これをイメージしろと伝えた。

 俺の炎で何かが掴めたのか…ユウトとマミが出来ると、そのすぐ後にマサギも出来たが…懸念した通り、ミクはいつまで経っても出来なかった。

 今使えなくても後日使えれば問題ない…と思ったが、この先の旅で使えないと困るので俺はミクに挑発めいた事を言った。


 「これだから胸ばっかデカくて頭空っぽの女は…」

 「何ですって⁉」

 

 ミクは明らかに激怒していた。

 そして手を俺の方に向けて唸っていた。

 魔力の流れは十分に感じているが、イメージが明確では無いんだろうな。

 すると、もう一押しか?


 「唸っていたって出ねえぞ! それともクソでも漏らす気か? 安心しろよ、魔法が使えなくても守ってやるからさ。」

 「え?」

 「その代わり、守ってやる代わりに夜の相手を頼むぞ。 エロい体しか取り柄が無いんだから、それ位しか役に立つ方法が無いだろうからな!」

 「な…な…な…なんですってぇ!!!」


 マサギとマミは俺の言葉に近寄ろうとしたが、俺は静止した。

 次の瞬間、俺に向けて大量の炎が放出した。

 俺は魔法防御で炎を消し去ると、ミクはそのまま魔力欠乏症になって倒れた。


 「不知火君は芝居をしていたのか。」

 「たとえ芝居でもあんな事を女の子に言うもんじゃないわ!」

 「芝居? 何の事だ?」


 俺はミクの元に寄ってから体に触れようとすると、その手をマサギが跳ねのけた。

 

 「気絶しているミクに何をする気だ⁉」

 「魔力欠乏しているから魔力を与えるだけだ。」

 「卑猥な目的で触れるとかじゃないんだよな?」

 「肩に手を置くのがマサギには卑猥な行為に見えるのか?」

 

 俺はそう言うと、マサギは後ろに下がった…が、監視する様に俺の行動に目を光らせていた。

 手が滑った…とか言って胸とか触ろう物なら、マサギもさすがにキレると思ったので、ミクの肩に手を置いて魔力を分けてやった。


 「これで、しばらくすれば目が覚めるだろう。」

 「魔力を分け与えなければ、どのくらい眠っていたんだ?」

 「限界以上の魔力を放出していたからなぁ…10日か2週間くらいは目を覚まさなかっただろう。」

 「だが、元はと言えばさく…いや、不知火君が原因なんだぞ!」

 「呼びたいのならサクヤで良いぞ。 これには理由があるんだよ…」

 「どんな理由なんだい、サクヤ?」

 「1人だけ魔法が使えない状態で旅に出ると、絶対に負い目を感じて不協和音が起きる。」

 「僕達はそんな事はしない!」

 「初めの内はな…だが、旅を続けていくと絶対にどちらかが不満を言い始める。」

 「それは過去の召喚であった事なのか?」

 「まぁな…だから挑発してでも今ここで発動させておけば、今後の旅ではスムーズに行えると思っただけだ。」

 

 マミは地面に座ってミクに膝枕をして寝かせていた。

 俺達はミクが目覚めるのを待っていると、ユウトが声を掛けて来た。


 「炎のイメージは大体出来た。 他の属性のイメージもしたいが…思い付かなくてね。」

 「ふむ…? ならば見せてやるよ。 ユウトは確か全属性持ちだったよな?」

 「あぁ…」


 俺は炎を出現させて言った。


 「まずは炎…次に水、風、土…これが四大属性な! 次に雷と氷…それに光と闇、最後に無だ。」

  

 俺の周囲には9つの属性が浮かんでいた。

 ユウトは俺の真似をしようとして左右に別の属性を出現しようとしていた。


 「あぁ、無理無理。 炎魔法がやっと使えた者が、俺の真似なんかまだ出来ねぇよ!」

 「どうすれば出来る様になる?」

 「全ての属性を出現出来るようになれば、感覚で出来る様になるさ。 それまで我慢しろ!」


 ユウトは手を見つめながら意識を集中しているみたいだった。

 だけどすぐには発動なんか出来る訳ではない。

 俺達はミクが目覚めるのを待っていた…が、中々目を覚まさなかった。


 「次は武器での戦闘の仕方だ。 皆は体をほぐしておいてくれ…」


 さて、次は誰が最初に音を上げるかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る