結局ぜんぶ、ひとりよがり。

ほりかわ しおり

衝動

 愛情が憎悪に変わったときのエネルギーを甘く見ていたかもしれない。さすがに理性がブレーキをかけるけれど、包丁でひと刺ししてやりたいというのが頭によぎらないかというと、それは嘘になる。


 冷静に考えれば、あれは単なる勘違い。仕事上愛想よくされたのを、好意を向けられていたと勘違いしていただけ。


 そんな事実が頭をよぎるたび、もう人を好きになってはいけないと思う。勝手に膨大なエネルギーを使い、消耗し、そして散ったらそのエネルギーがあらぬ方向を向いていく。実に無駄である。


 わたしのような人間は、都会でなんとなく過ごし、なんとなく死んでいくのが、お似合いなのかもしれない。会社帰りの電車に揺られながら、無意識に何かを諦めた。

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