第94話 胡散臭い鍛冶師
「寄ってらっしゃい見てらっしゃ~い。うちの武器や刃物は全て一級品だよ~。買わないと損だよ~。前の村では買わなかった人がいないくらいだ~」
はげた男が、そろばんで頭を叩きながら言葉を吐き捨てる。
どこからどう見ても胡散臭い…。
「あの~ちょっと高くね~かい? さすがに1本の包丁で中金貨5枚は払えね~だよ。もう少し安いのはね~のか?」
腰を曲げたお婆さんが、包丁を持って男に話を持ち掛ける。
「お! 美人さん。い~の持ってるね~。それは伝説の鍛冶師が打ったちょ~高級品だ。本当は大金貨1枚のところを今回特別に半額で売ってるのよ~。買わないと損だよ~」
「でもよ~。うちにそんな金ね~だよ…」
「ん~~~~、しょ~~~が無い。美人さんにはかなわんな~。この包丁、今回限り1本小金貨5枚で売りましょう」
「な! ほ…ほんとかえ…。で、でも…小金貨5枚ですら…うちの家には…」
「お~と美人さん、金がね~なら何かと交換でもいいでっせ~。美人さんの首にかけてるその銀のネックレス、ちと見せてくれやせんか~」
「こ…これかい。これは、死んだ爺さんから始めてもらった贈り物なんだが…」
「い~からい~から、ちょっと見せてもらうだけやから」
「そ…そうかい…、わかったよ」
言われるがままお婆さんは男にネックレスを渡した。
「ん~~~~美人さん~。こら~~偽物ですは~。でも今回は特別に金貨5枚で買い取ったりますわ」
「いや…でも…」
「な~~に迷ってるんですか。偽物のネックレスと超高級包丁を交換してやってもええって言っとるんでっせ~~。こんな幸運滅多にないですよ~。この包丁使ってお孫さんにちょ~~美味しいご飯作ったってくださいな~」
「は…はぁ…そうですね…。孫の為やったら…爺さんも喜んでくれるやろ…」
「そうですそうです~~。おじ~さんめっちゃ喜ぶと思いまっせ~。天国で笑ってますわ~」
お婆さんは男から包丁を受け取り、寂しそうに家に戻っていった。
「ささ! 他に欲しいもんある人はおりますか~~。大特価時間でっせ~~」
「ハゲ~。この剣~、本物?」
――ちょ! エナ。何やってるんだ。
僕は群衆の後ろの方で見ていた。
エナは前の方で剣を持ち、男の前に差し出した。
「お~~獣人の奴隷ちゃん~~。どないしたんや~」
「これ~。伝説って、ほんと~?」
「あ~~。これか~、ほんまやで。超伝説の剣や。伝説の鍛冶師が作って龍の首を一撃で切り落としたっちゅ~~すんご~~い、剣なんやで~」
「これ~、いくら~ エナでも買える~?」
「あ~~~、奴隷ちゃんにはまだ早いんとちゃうかな~。ご主人さんどこや~」
「主なら~。そこ~」
エナは僕の方を指さした。
「あ~~なんや~お兄さん、めっちゃイケメンやん~。ささ、こっちに来て話しましょうや」
僕は男に手招かれ、前に向った。
「伝説の剣やけれども~お兄さんにめっちゃ似合うと思うんやけどな~」
「いえ…僕はもう自分の剣があるので…」
「そうか~、そら~仕方ないな~。そや! ここらへんで実践と行きましょか! 皆さんも見といてください。絶対欲しくなると思いますんで!」
男は、馬車の荷台からレンガを取り出した。
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