第64話 光源平野

僕達は歩ける距離だったので、集団になって歩いていた。


「主~、エナ達どこに行くの…?」


「王都の外にある『光源平野』って場所に行くんだよ。そこで悪さをするスライムたちを倒すんだ」


「エナもできる?」


「まだ早いかな…。もう少し大きくなったらエナでも倒せるようになるよ」


「ほんと! エナも主の役にたてるの~!」


「まぁ…そうだね。でも、戦ったりしなくても大丈夫だよ。魔物はとても危険な生物なんだ。エナも怪我したら嫌だろ」


「痛いのは嫌~。でも主人が〜ナデナデしてくれるなら、エナ痛いの我慢するよ」


「エナが痛い思いしなくても、僕はナデナデしてあげられるから…、安全に過ごして行こうね…」


僕はエナの頭を撫でようとしたが、既に左腕は埋まっていた。


(それにしても…ララ。奴隷の数多いね…)


(ほんと、ほんと。もしかしてコルトさん、お金持ちだったりして…)


(私達も今10憶円持ってるから。結構お金持ちだよ。だから相手がお金持ちである必要ないんじゃない?)


(確かに~。それはある…。『どうせなら優しい人にしとけ』ってお母さんも言ってたし…)


(どう見ても優しいだろあいつ…。いや…子供に好かれすぎだろ…。どこにもくっ付く場所ないぞ…)


(まぁ、好かれてるのは子供だけじゃないんだよね~)


(うん…。そうだね…)×3


――また4人でコソコソと…何を話しているんだろうか…。まぁ良いか。これからハルンさんとルリさん。『ブレーメン』の実力が見れるんだ。僕はちゃんと子供たちを守らないと。


僕達は王都の門を潜り、外へ出た。


「うわ~、広~い。主~! 凄い広~い!」


「そうだね。エナは外に出るの初めて?」


「うん! エナずっと檻の中に居たから~初めて~」


エナは僕の腕から飛び出し、草原を走り回る。


先日、記念公園で見た子供たちと同じような笑顔でとても楽しそうだ。


「俺も行くぜ!! とりゃ!!」


ハオも僕の頭を蹴って飛び出していく…。


「待って! 私も行く!」


マルも2人について行ってしまった。


「う…う…外、怖い…広すぎて怖い…」


ミルはどうやら外が苦手らしい。


僕の足にギュッとつかみプルプルと震えてしまっている。


細く長い尻尾が完全に下を向いてしまった。


「よいしょ…。ほらこれで怖くないだろ。僕の腕の中に居れば安全だよ」


「あ…主様…。ごめんなさい…怖がりで…」


「大丈夫、初めては誰でも怖いものだから、少しずつ慣れて行けばいいよ。きっとミルも皆と楽しく遊べるようになるさ」


「うん…」


「パーズ、外だよ…。見なくていいの?」


「…命令ですか…」


「命令って訳じゃないけど…」


「…なら見ません…」


「そ…そう…。分かった…」


パーズは全く外を見ようとしない、ずっと僕の胸に顔を埋めたままだ。


僕達は外を少し歩き『光源平野』へ移動した。


僕とモモ、ナロ君は子供たちの見張り役、他の6名はスライムに集中してもらう。


スライムは『光源平野』にわんさか湧いており、すぐ見つけた。


6人は飛び出していき、スライム1体に1人で対面していた。


安全な場所で、はしゃいでいる子供たちを僕は木陰で見張っている。


「主様! はぁはぁはぁ、外めちゃくちゃ楽しいです! ほんとすっごく楽しい! ねえねえ~ミルも一緒に行こうよ!」


マルはミルの腕を引っ張るが、ミルは僕の腕をつかんで離さない。


「わ…私は…いい。ここに居る…」


「そう! 分かった! 何か面白いものを見つけたら持ってくるね!」


「う…うん…」


マルはもう一度平野へ飛び出していく。


入り違いでエナは汗だくになりながら戻ってきた。


「主~ 外〜 ちょう楽し~!」


「それなら良かった。…さてと…。お手並み拝見と行こうか…」


「それにしても…、ここは広いですね…。こんな平原が有るなんて…。壁に囲まれていたので全然わかりませんでしたよ」


ナロ君は、光源平野を眺めながら風邪を気持ちよさそうに浴びている。


「でも…確かに、ミルの言うように、広すぎてちょっと怖いですね…。私の居た村はもっと狭かったので…こんな広い所始めてきました…」


モモはナロ君の隣で座りながら下を向いている。


「大丈夫だよ、いずれなれるさ…。お…始まるみたいだよ」

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