第47話 服を買いに行く

「いやー、まさかあそこまで宿が壊れるとは思わなかったよ…」


「コルトさんの力が強すぎたのでしょうか…、それにしても強すぎると思いますが…」

モモは、僕の力に対して少々違和感を覚えているらしい…。

僕だって何で未だにあれだけの力が出たのか、分からない…。


「でも主、カッコよかった~凄い、ぼほわ~ん!って壁が吹き飛んでったの面白かった!」


エナは未だに興奮しているようで…、僕の右腕に抱かれながら大きく手を振り上げる。


「さすがご主人!私たちのボスだけある!」「そうだね…、凄かった…」


マルとミルも僕のズボンをギュッとつかみながら興奮しているようで、目を輝かせていた。


「僕も…未だにあれだけの力を出せるなんて…思ってもみなかったよ…」


「え…未だに…ってどういう意味ですか? ご主人様…」


「い、いや。何でもない。さ、僕たちは今から向かわないと行けない所があるんだ。今からそこに向うよ」


「?」×9


何とか大型の馬車を見つけ、全員を乗せた。


まず主としてやらなければならない必要条件…それは、衣食住を与える…。


そう…これはもう義務なのである。


今皆の着ている服は今だ奴隷商で着ていた麻服…、既に色あせており、所々のほつれも酷い…まるでボロ雑巾のような服を着ていたのだ。


馬車に揺られ、数分…。


「お兄さん…つ銀貨三枚だ」


「ありがとうございます。銀貨三枚ですね」


僕達はお金を払い、馬車を降りる。


そして…目的地に僕たちは降り立った…。


「えっと…ここは、市場ですか?」


モモは、物珍しそうな目で辺りを見渡し、僕に質問してくる。


「そう、市場だよ。まずは皆の服を買わないと、いつまでもボロボロの服を着てたら、かっこが付かないからね」


「でも…コルト君、私達がちゃんとした服をなんかを着てもいいの? 一応私達…奴隷だし…」


ルリさんは鉄首輪に手をやりながら、少し不安そうな表情をしていた。


「はい、勿論。逆にちゃんとした服を着て貰わないと、僕が困ります。衣食住、ちゃんと満たさなければ、僕は皆さんを買った意味がありません。これは僕の責任なんですよ。だからまずは皆さんのボロ雑巾みたいな服を何とか普通の服にグレードアップさせます!」


「ボロ雑巾…、主~、エナ…ボロ雑巾…?」


「いや、服がだからね。エナの服がボロ雑巾なだけだから…。まぁ…えっと、とりあえず…男女に分かれてもらって、それぞれの下着やら上着を買おう。僕には女性ものの服とかよく分からないし、何が必要なのか分からないから、ルリさんに任せっきりになっちゃうけど大丈夫かな?」


「はい! 全然大丈夫です! 私に任せてください!」


服を買えると知り相当うれしいのかルリさんは満面の笑みになり、背筋を伸ばした。


「えっと…それじゃあ、一応で…中金貨一枚を渡すけど、これで足りる?」


「いやいや、そんないらないですよ。多分…小金貨1枚あれば皆の服を買えます」


「まぁでも…一応、中金貨一枚渡しておくよ、余ったら4人で好きな物でも食べていいから」


「そ…そうですか。分かりました…」


ルリさんはお金を持つのも恐れ多いと言わんばかりに手を震わせながら、中金貨一枚を受け取った。


「はい、エナ離れて。今からルリさんに付いて行くんだよ。可愛い服を買ってもらいな…」


僕はエナを引きはがそうとするが…中々放れてくれない…。


「エナ…~、主に服~選んでほしい…。主の選んだ服着たい…、ボロ雑巾が好きならボロ雑巾でも着る~」


「いや、ボロ雑巾は見かけが悪いから…。えっと…エナ、僕にそう言われてもね…ダメなんだ。僕のセンス…壊滅してるから…」


「それでも…、主のがいい~」


「ん~、じゃあ一回、見てもらうか…、ちょっとエナ…ついてきて」


「うん!」


☆☆☆


「…‥‥…………」


「す…凄くかわいいですよ…エナ…。お饅頭みたいで…」


「いや…お饅頭みたいと言うか…、お饅頭でしょ…これ」


エナは、饅頭の着ぐるみを着て戻ってきた。


顔がすっぽりと入った白饅頭、頬が膨れ紅を叩いたように赤くなっているおかげか出来たての様だ。


「ほらね、エナ…。僕が選ぶと、こうなっちゃうんだ。だからルリさんに選んでもらったほうがいいよ」


「エナ…これ好き…でも。人に見られるの恥ずかし…」


「ご、ごめんな、エナ…」


エナ、マル、ミルをルリさんに預け、僕たち男子組はそれぞれ好きな服を物色していた。


「コルト! 見てくれ! どうだカッコいいか!」


ハオは赤いマントを羽織り、くるくると回る。服はまだボロボロだが…、ハオの黄色い髪によく似合っていた…。


「ああ、ハオ、凄くカッコいいよ。勇者みたいだ…、でもそれは商品だから、そこにちゃんとたたんで置くように」


「イェッサーボス!!」


「何だよそれ…何かの掛け声かなにか?」


「ハルンがハイの替わりに言えって…言ってた」


「今すぐやめてね…、その言い方…」


「イェッサーボス!!」


「はぁ…」


子供に言い聞かせるのはどうも難しい…。その後、何とか止めてもらえたので良かったけど…結構な体力を使ってしまった。


他の服屋を見て回るため移動していると…ハーズが何かを凝視していた。


「…………」


パーズが見ていた物は、簡単な作りをした木剣だった。


「どうしたのパーズ? 木剣が欲しいの? 欲しいなら、買ってあげるけど…」

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