スキル『勇者』売ってしまった編
第3話 成人を迎えました
「お誕生日おめでとう!コルト今日で15歳ね」
「これで、コルトも大人の仲間入りだ」
「ありがとう、爺ちゃん、婆ちゃん…」
僕を祝ってくれているのは、爺ちゃんと婆ちゃんの2人だ。
母さんと、父さんは俺が生まれてからすぐ死んだらしい。
だから僕には父さんと母さんの記憶がない、あるのは2人の絵だけ。
赤ん坊からずっと大切に育ててくれたのは、爺ちゃんと婆ちゃんだった。
僕は爺ちゃんと婆ちゃんに感謝してもしきれないほど、愛情を注いでもらった。
父さんと母さんがいない寂しさを埋めるようにいっぱいの愛情を。
「それでコルト、どうするんだ?例の件は…」
「やっぱり、僕の気持ちは変わらないよ」
「そう…コルトの好きなようにしたらいいわ」
「ありがとう、婆ちゃん」
誕生日を迎えた次の日、僕は村で7日に一度しか訪れない馬車に乗り王都のギルドまで数日掛けて向かった。
「やっぱり遠いな…王都は、馬車でも数日かかるのは遠すぎるだろ…。いや、僕の住んでいる村が田舎すぎるのかな…」
王都には何度か来た経験がある。僕の好きな冒険者が王都に来るって聞いた時は何日も前から、王都へ泊りいい場所で待ち構えてたっけ…懐かしいな。
って…違う違う、今日は思い出に浸りに来たんじゃない!
僕の人生を変えに来たんだ!
王都で最も大きなギルドへと向かう。
向かう途中…僕は田舎の村と全く違う生活をしている王都国民を目の当たりにした。
派手な馬車…宝石をジャラジャラと付けたマダム…
綺麗なスーツに身を包んだジェントルマン…
逆に何日き込んだのか分からないような服を着た老人…
食べ物を望むボロボロの子供たち…
これほどまでに差が開いている生活だとは昔から知っていたけど…改めて現実を付きつけられると心は…痛い。
田舎者の僕は王都を移動する際、激安の馬車で移動する。
「どこかに、いい感じの馬車は走ってないかな…」
心からの声を口走っていると、ホントに僕の近くを良さげな馬車が通りかかった。
周りを走る馬車とは違いぼろぼろ、所々に亀裂が入っているような凄く年期の入ったおんぼろ馬車だ。
この馬車を見ると凄く安心する、何故かというと僕の住んでいる田舎を走る荷馬車もこんな感じだからだ。
「すみませ~ん。王都で1番大きなギルドって『ウルフィリアギルド』ですよね?」
「ああ、そうだが?乗ってくのかい」
「はい、よろしくお願いします」
僕がおんぼろ馬車に乗り込むと、馬車の手綱を引く老人が馬に合図を出す。
すると、馬は次第に動き初め低速からいつも通りの心地よい速度へと上げて行った。
少しして老人がいきなり僕に話しかけてきた。
「あんた、田舎もんだろ…」
「え…そうです。よく分かりましたね。どうしてわかったんですか?」
「そりゃあ、その服装やこんな馬車に乗ろうとする奴なんて田舎もんくらいだろう」
「はは…確かにそうですね。僕には豪華な馬車に乗るお金も度胸も足りませんので」
不甲斐なさを大げさな手の動きで誤魔化す。
「あんた、何しにこの王都まで来たんだい? 何か目的があってきたんだろ。ギルドへ向うみたいだが…冒険者にでもなるのか?」
「いえ、冒険者にはなりませんよ。僕は冒険者さんたちの活動を見るだけで十分です。王都には来たのはまた別の理由ですよ。理由はちょっと恥ずかしくて言えませんけど…」
「そうか、まぁ…冒険者なんぞ金持ちがやる仕事だわな…」
「そうですね…元々強いスキルを持っていれば、底辺から成り上がれるかもしれませんけど…。生まれた場所の勝ち負けはあるかもしれません。ですが!僕の最も押している冒険者、『アイリア・シーリス』はたった1人でBランクにまでのし上がった凄い人なんですよ!ぜひお爺さんもアイリアさんを応援してあげてください!」
僕は大好きな冒険者アイリアさんの知名度を上げるべく、知り合った人たちに出来るだけアイリアさんのすばらしさを語っている。
「は…はぁ…アイリア・シーリス…知らないな…」
「そうなんです、すっごい人なのになぜか知らない人が多すぎるんですよ。お爺さんもぜひアイリアさんをいろんな人に教えてあげてください。あ!この冒険者新聞見ますか。丁度冒険者さんたちの活動報告が乗っていると思うので」
僕は持ってきたバックから王都に来た際速攻で買った冒険者新聞を取り出す。
「字は読めんのだ、締まってくれ」
「あ…。ご…ごめんなさい」
僕は再度冒険者新聞を綺麗に折りたたみバックに入れる。
「お爺さん、何かこの街でお勧めな場所とかありますか?用事が済んだ後王都を観光していこうと思って」
「あ~、金の心配が要らないなら、王宮付近は色々と面白い店や露店が沢山あるぞ。金は掛かるがな…。金を掛けたくないって言うなら…王宮からから離れた教会付近なら手ごろな出店が多い、観光客は大体こっちに行くな。良心的な金額設定にしてあるぞ…。絶対に言ってはならないのが…ここから最も北にある辺境区、王都で最も迫害を受けている地域だ。行ったら最後無事に帰って来られる保証はない。しっかりと覚えておけよ」
「あ…ありがとうございます、参考になりました…」
その後もお爺さんと他愛のない話をした。
どうやら僕はお年寄りに好かれる舘らしい…。
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