異世界召喚されそうになったが、昔召喚された時に編み出した技で召喚を拒否することに成功した〜だが何度も繰り返しているうちに相手も本気を出してきたようで、その結果召喚が乱れて魔王城に召喚された件について〜
@YA07
プロローグ
第1話 二度あることは三度ある
突然だが、皆は召喚陣というものを見たことがあるだろうか?
俺か?俺はある。というか、正に今現在俺の足元に───
「嘘だろ…………またかよ!」
俺の足元に広がる摩訶不思議な光る模様。俺はこれに、二度の見覚えがあった。
一度目は十三年前で、二度目は五年前。いや、地球の年月で言えば五年前と二年前だが、今はそんなことはどうでもいい。とにかくこの模様は召喚陣と呼ばれるもので、俺を問答無用で異世界へと誘うイカれた『魔法』というやつだ。
「クソ!なんだってまた異世界なんかに行かなきゃなんねえんだ!?魔法さえ使えればこんなもの…………!」
異世界召喚といえば、君は勇者だなんだと言われて魔王を倒すというものが定番だ。俺もその例に漏れず、過去に二度も魔王を倒してこの地球へと帰ってきた。だが異世界召喚なんてものは実質的に夢を見ているようなもので、地球へ帰ってくると召喚された時点に戻されるし、肉体的成長はなかったことになる。精神的成長や魔法の力なんかは維持されるようだが、地球じゃそもそも魔法を使えないので意味がない。結果的に残るのは、歳に不相応な経験や精神と、虚無感だけだ。
しかし、何かこの召喚から逃れる方法はないのだろうか。二度目の時は召喚陣から離れてみたが、無意味だった。おそらくこの召喚陣が展開された時点で、地球と異世界を繋ぐゲートに俺が紐づけられいる状態になっているのだろう。だとすれば、それを断ち切るか?
…………いや、無理だ。ゲートを壊すなんてそれこそ強力な魔法でも使えないと無理だ。ゲートまで潜り込めば魔法を使えるかもしれないが、ゲートの中でゲートを壊すなんてことをしたらどうなるかわかったもんじゃない。壊れたゲートに閉じ込められでもしたら、それこそおしまいだ。
「マズいな、もう時間が…………いや、待てよ?」
召喚というのは、紛れもなく魔法だ。しかし、ゲート自体は魔法で創るものじゃない。だとしたら、どこに魔力が使われているのだろうか。
おそらくそれは、先程俺が予測を立てた俺とゲートを紐づけているものだ。恐らく異世界から伸びてきて、ゲートを通じてこの地球へとやってきた魔力の紐。もしこの推測が正しければ、俺には一つそれに対抗できる手段があった。
「一か八か、やってみるしかねえか…………!『マジックキャンセル』!」
マジックキャンセルというのは、俺が二度目の召喚をされた時に編み出した技だ。こっちは魔法を使えないが、相手は魔法を使える。そんな理不尽な状況下で思いついた、魔力の流れ自体に物理的に干渉して魔法をかき消す技。物理的にかき消す技なので、遠くの相手がただ魔力を集めて魔法を発動させるだけなら止めることはできないが、こちらに干渉してくるような、まさに俺の身体まで魔力を伸ばしていると思われるこの召喚魔法ならかき消せるはずだ。
「頼む…………!もう異世界はコリゴリなんだよ!」
そんな願いが通じたのか、身体のどこに紐づいているのかもわからない魔力を目指して体のあちこちにマジックキャンセルを試しているうちに、いつの間にかその召喚陣の光は薄らいでいき、やがて跡形もなく消え去っていった。
「や、やったのか?」
そんなフラグを立ててしまったのは、気が緩んでいたからだろうか。
俺の呟きに応えるようにして再び現れた召喚陣に対して、俺は猛るように吠えた。
「クソが!何度やっても無駄だぞ!『マジックキャンセル』!」
再び消える召喚陣。そして現れる召喚陣。消える、現れる、消える、現れる───
「しつけえんだよ…………クソが!」
俺が流れをかき消した魔力は、どこへ消えるのか。答えはもちろん、消えることなどなく俺の部屋に漂っているというのが正解で、それはつまり、俺は今地球に居ながら魔法を使えるということでもある。
それを身体で感じ取っていた俺は、失敗した時のことも考えずに地球と異世界を繋ぐゲートの入り口である召喚陣に向かって魔法を撃ち放った。
「これでもくらって諦めやがれ!『サンダーボルト』!」
俺が放った雷の魔法は、俺の目論見通り召喚陣に吸い込まれて消えていった。
魔法というのは魔力に吸い寄せられるという性質があるので、おそらくは俺に通ずる紐を逆に辿って俺を召喚しようとしている輩へと辿り着くだろう。魔力量があまりにも少なかったのでしょぼい魔法しか撃てなかったが、それは大した問題ではない。今召喚しようとしている人が召喚陣を逆に利用して攻撃してくるような危険人物だとわかれば、向こうも召喚を諦めて───
「っておい!全然諦めてねえのかよ!」
召喚陣のラッシュが収まって息をついたのも束の間、再び俺の足元に召喚陣が…………しかも先程よりも随分とデカい召喚陣が広がっていた。
「うそだろ…………おい!『マジックキャンセル』!『マジックキャンセル』!『マジックキャンセル』…………!ダメだ、全然消えね…………」
我武者羅に抵抗する俺の努力も空しく、俺はついにそのデカい召喚陣へとなすすべもなく吸い込まれてしまったのだった。
…………いや、正確に言えば最後少しだけ光が薄らいでいた気もするが。
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