12章:resources of war(和軍船 vs 帆船)
第38話「和軍船 vs 帆 船『 包 囲 』」
「
旗艦・弁慶丸から指示の
水夫たちが身をひるがえして持ち場へ飛びつく、主帆・前帆から放射する格子の綱を駆け上がり横帆をかけて持ち場につく、砲手の動きは砲身・弾丸・弾込めと役割位置作業素早く
メインマストの頂点近く
横帆に脚ふんばり物見の声が貫く
「小早舟(こはや)二十三
関舟(せきぶね)四
大安宅(だいあたけ)船一隻、櫓数一〇〇
船尾楼に船大将・鵜萱(うかや)、彼の前面広がる真っ青な海面に、見えた。
和船、大安宅一〇〇梃櫓級
全長九九尺(三〇m)肩幅三一・三尺(九・五m)航長八三尺(二五・六m)となると、印象は船というより砦だ。
巨体の左右からみっしりつきだして海をかく櫓は、
一〇〇挺の櫓に二人、つまりは櫓水夫だけで二〇〇人。
和船の規模は「水夫の漕ぐ、挺艪」の数で測るほどだ。大きさと戦闘員の数が同時にほぼ知れる。
前方の大安宅船は一本のみの帆柱に、小砦なら一包みに出来そうな長大な帆を上げていた。
巨船だ、キャラック鵜萱の帆走できる高い帆柱と帆幅の大きさを除けば船体だけならば倍近い。
「
右顔面は目玉ごと爆裂弾にもがれた赤い傷華やかな武将あがりの船大将
自分の巨躯に、すっぽり隠れて見えなくなるほど細い望月の横で
「
進路です」
望月の黒衣が副指揮座に立つと乗組員達から見え、
その男にも女にも聞こえない声で、相手が何者かを知れと指揮声がつらぬく
「
くるぶしまで揺らぐ丈長の絽の外套が、ふわんと風をはらんで陽光に黒鮮やかにひらめく。和軍船にあがる大将の名前を記す旗印を探す
同時に旗艦・弁慶丸から総大将・弁慶丸の指揮が貫く
カンカンカンカンカンカン!
敵襲へ立ち向かう全速攻撃の準備をしろと
総大将自身が駆る船団の中心に黒色のキャラック船、
根津甚八の稲妻紋琉球紅型が、紅蓮の
望月乗船するジャンク船・鵜萱に旗艦・弁慶丸キャラック船が併走を始め
同時に旗艦・弁慶丸から
たあん
上空に打ち上がった火矢が破裂し、黄の色粉がたなびき次に
たあん
白色。
全船が視認するとほぼ同時に
遊撃を担う小型で細身キャラベル船・
甲板走り回り
指揮船弁慶丸と鵜萱の左舷右舷を走り抜け船団先鋒へ踊り出て
猛獣二頭のように、旗艦と副大将艦の盾の位置で
海上に全船を
副大将船・キャラック鵜萱の甲板に落ちてくるメインマスト
「見えもうしたあ! 船旗は大将名でなく
瞬時に船太鼓に変換され並び立つ弁慶丸と
その、曲がりのある三本線にて表される家紋名が通達される
「
望月は静かに、前方の大安宅と、その後ろからでてきて海上に羽虫のようにわらわらと重なりひろがって見え始めた数多い
ならび立つ鵜萱の、ひき結ばれる唇からうなり
「……
三島村上海賊の来島当主だったが、天正十年の戦闘さなか来島村上氏を滅ぼす気かと必死に止める自分の
海戦ばかりか陸戦にも才能があり、関白秀吉が大のお気に入りで「
秀吉へのご機嫌とりもふくみ、彼を「
「三島村上」の家紋「丸上」は四年前に捨てている、が
大のお気に入りとして関白秀吉に与えられた「五三桐」も使わない
生きぐせの強い男だが、そこも秀吉のお気に入り。
キャラック船・鵜萱では帆柱頂点近くの物見台、ならぶ船団に数々の声がかさなっている
「
「なんで秀吉の飼い犬がでてくる! おれらと手をむすんだろうが!」
「大将旗あがったあ!
船大将・鵜萱が右顔面吹き飛んだ
「誰かあ、 悲鳴なんぞあげおってえ
ドッザアーーーン!
波を船底で踏み込んで、旗艦・弁慶丸の根津の琉球紅型と軍師衣装の見える鵜萱の盾の位置、ジャンク船・洛陽と虹花が減速、大砲射出準備よしの船太鼓
ざ、ざあーーーーっっ
甲板に左右の舷側から叩きつけてきた波頭が船尾の望月の足元で粉砕し、きらきらきらと輝き降る中、甲板各所から報告弾ける
「四〇挺艪の
こちらも村上通総の大将旗
「
黒色のギャラック帆船、旗艦・弁慶丸で
総大将・
「相手の
弁慶丸の声に真っ黒に突き上がった三本マストの頂点から、艦首船尾から
「
四〇
五隻、総数十四門っ」
「関・小早の鉄砲隊も見えもうしたあ、
待ち構える各船の船大将へ、根津の即断
「いっこもいらんわ」
即時、全船へ船太鼓の伝令つらぬき
各船で各船大将の決断、指揮号令がほぼ同時に重なる
「撃沈用意! 砲撃かまえい!」
「まて」
根津が赤茶のビー玉みたいにきらつく目をほそめて、真正面に展開し始めた小早船のむれの向こうの島影をにらみながら、奇妙なことを言いだした。
「
和船どもぜんぶに囲ませろ、俺と望月をや」
十三隻の帆船は船速をおとし、キャラック船・磐、キャラック船・洛陽まで護りてとしてそこへ残して
前に進みでた
旗艦・弁慶丸と
副大将艦・鵜萱。
大安宅船を背後に聳えさせ、
関船と小早船の群れにあっという間に取り囲まれていった。
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