名探偵ヒカコと南の島で泥棒返し!
和響
第1話
ここは日本の南西部にポツンと浮かぶ
今日はこの虹表島の金有財閥が所有する別荘で、金有財閥の重要人物が集まってのホームパーティーが開催されている。
真っ白なゲストハウスの入り口で、真っ赤なワンピースに身を包み、同じく真っ赤な口紅をべったりと塗った女性、
「本当、お兄様もひどいわよね、お宝展示の準備だけしておいて、あとは知らんぷり。実の母親の誕生日パーティーの日まで仕事だなんて」
麗子はそういうと、ふんっと鼻を鳴らして、ビーチサイドにあるカフェテラスへと向かって行った。
「やな奴」
虎次郎はそう言葉を苦々しく吐き捨て、ゲストハウスの中へと入って行き、黒服のボーイからトロピカルドリンクを受け取って、一階のバルコニーに出た。九月終わりとはいえ、南の島は未だ夏の暑さをしっかりと残している。
「昔は、よかったのにな」
そう呟いて、バルコニーの手すりに腕をかけているところへ、一見風変わりな格好をした少女が近づいてきた。彼女は、かの有名な探偵一族、
「気をつけて見ててよ、名探偵さん。今日、この会場で秘宝アボカドの種を盗もうとしている奴が必ずいるんだから」
そう言って、虎次郎はバルコニーに背もたれて、ゲストハウスの方を見た。つられて隣にいた名探偵ヒカコもゲストハウスの中をあやしそうに見る。
「本当に、この中に秘宝アボカドの種を盗む人がいるんでしょうかね?」
「多分ね」
「でも、アボカドの種、あんなに厳重に警備されていますよ?」
そう言ってヒカコが指をさした方角には、ガラスケースの中に入り、警備員に四方を守られている秘宝、アボカドの種があった。秘宝、アボカドの種とは、アボカドによく似た、大きなエメラルドの原石で、その時価総額二十五億円とも言われている、金有財閥一の財宝である。
「予告状が来ていた以上、必ず誰かがあれを盗むはずなんだ」
虎次郎がいう予告状とは、一週間ほど前に寅次郎のもとに届いた手紙のことで、その手紙にはこう書かれていた。
『 ぴーとぅーど、んべおでねそぬわにしみ 』
虎次郎は、予告状と書かれた手紙を受け取ってすぐに謎道ヒカコに連絡をした。虎次郎から連絡を受けた名探偵ヒカコは、電話口でこの暗号文をいともたやすく見破った。
「わかりましたよ! 虎次郎さん! これは、[、]の前まではあいうえお順の一個前の文字に当てはめて読んで、[、]から後ろは、一個後の文字で読むんです。結構簡単な暗号文ですね。だから、えっと、この場合は、[パーティーで、アボカドのタネをぬすむ]になりますね」
こうして、今現在、名探偵ヒカコは金有財閥所有の南の島のプライベートリゾートに来ている。
「でも誰が一体、アボカドの種を盗もうだなんて」
「二十五億円のお宝を盗んでこっそり闇ルートで売り飛ばしたら、金有財閥のしがらみから逃れて一生遊んで暮らせるからね」
「金有財閥のしがらみ?」
「そう、しがらみだらけさ」
そう言って虎次郎はカフェテラスの中に入って行った。カフェテラスのバーカウンターには、虎次郎の叔母の麗子と、夫の孝之の姿があった。
「あの方は?」
「あれは麗子おばさん。派手ずきで、見栄っ張りで、金遣いが荒い」
「怪しいですね」
「一番ね」
二人はぐるっとカフェテラスを見回してからビーチへと向かった。白い砂浜に品の良い緑色をしたパラソルがいくつかたち、その下ではリゾートさながらに寛ぐ人たちがいる。
「あの人たちは?」
「あの人たちも親戚だけど、あんまり関わったことがない部類の人たち。僕が知ってるのは父さんの兄弟くらいだね」
「さっきの人が妹さん、それ以外も兄弟が?」
「弟が。ほら、あそこ、あのピンク色の水着を着ているのが父さんの弟の
「へぇ、お父さんのご兄弟は二人。なるほど」
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