若き魔眼の剣聖と特異点の少女
ゆずどりんこ
第1話魔眼を宿す少年
「……………」
木材で作られている机の上に白色の封筒に収められている一通手紙が鎮座している。
少年はそれをゴミでも見るかのような視線でピクリとも動かずただただ視線を手紙へと向けていた。
「……何故…わかるんだ……俺の居場所が……」
頭を抱えたい衝動に襲われる。
手紙の送り主に自分の居場所を教えた事は一度もないにも関わらず、その手紙は不思議にも正確に自分の手元に届いていた。
「………あぁ…そうか。また使ったのか…あの人は」
一呼吸いれて思い出したかの様に少年は呆れながら納得する。
「俺には″無闇に使うな″と言っておきながら、当の本人は無闇に使ってるじゃないか。矛盾してるの分かっているのか…全く…」
ブツブツと文句を零しながら少年は机の上に置かれた一通の封筒を手に取る。
丁寧とは程遠い乱雑な開け方でビリビリと破りながら封筒を開封し、中に入っている手紙を抜き取る。
パラパラと紙を開ける音と共に少年は手紙に書かれてある文字を嫌な予感を抱えながら読み進める。
『ハジメよ、師匠である私からの久々の手紙に歓喜しているであろう。力一杯ハグをしたいという衝動に今まさに襲われている気持ち、私には分かるぞ。たが、それは再会した時に思う存分堪能させてやるから安心するがいい。えっ?チューも欲しいのか!?全くお前と言う奴は可愛い奴め。だが私の唇は安くはないぞ?それでも私の熱いチューが欲しいなら一つ私の頼みを聞いてくれ。そうすれば念願のチューが手に入るぞ。良かったなハジメ少年!と言う訳で、この手紙が届いたら直ぐに私の元へと来る様に!もし無視したら…………奪いに行くから。何を奪われるか…分かるよね?私の視界からは逃れられない事。じゃぁ、待ってるぞ。愛しの師匠より』
「………いや、いらねぇよ。何もいらねぇよ。て言うか奪いに行くって…怖い…怖いって…」
手紙の内容がハジメにとっては恐怖でしかない。
その為か身体が無意識にガクガクと小刻みに震え出す。
「………この瞬間も覗き見されてる可能性すら感じる…。はぁ、俺にプライバシーは無いのか…」
ハジメは観念して手紙をクシャと握り潰し、部屋に備えてあるゴミ箱へと放り投げる。
放物線を描きながら握り潰された手紙はまるでゴミ箱に吸い寄せられたかの様に収まった。
「あの人の事だ。少しでも遅かったら何をされるか分かったもんじゃないし……はぁ、行くか…」
深い溜息を一つ吐き、部屋の床に置かれている荷物を纏める。
着替えや回復薬等を荷物に乱雑に詰め込み、壁に立て掛けてある刀を腰に装着し、荷物を肩に背負いながら部屋を後にした。
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