体重計
長万部 三郎太
手すりを掴んで
本格的なダイエットを始めて1ヵ月が過ぎた頃、わたしはモチベを保つためにスマホと連動できる、最新のデジタル体重計を購入した。
取り扱い説明書の注意書きにはこう書いてある。
「本製品は精密機器です。乱暴に飛び乗らず、片足ずつゆっくり乗ってください」
「ダイエットの秘訣は毎日体重計に乗ることです」
計測を日常に取り込むべく、わたしは体重計の置き場所を思案した。
結果、毎日目に入ることと、ゆっくり乗るための手すりがあるということで、階段下の脇に設置することにしたのだ。
さらにひと月が過ぎた頃、ダイエットは停滞期に突入した。
なにげなくスマホを見ると、体重グラフが日によって不規則に上下していることに気づく。わたしは大いに悩んだ。
「暴飲暴食はしていないはずなのに……」
それから数日間、とにかく節制に努め水をたくさん飲んだ。
汗をかき、筋トレのメニューもこなした。
「今日は幾分減ったはずだ」
入浴後わたしはマニュアルに従い、いつもの通り手すりを掴んで片足ずつ静かに体重計に乗った。
……見事に体重が減っているではないか。
『これは記録更新レベルだ!』
そう確信したわたしは、手すりをより強く握りしめた。
(筆休めシリーズ『体重計』 おわり)
体重計 長万部 三郎太 @Myslee_Noface
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