第21話 医学魔法大学院転入式


 花壇に一直線に向かって桜の木が植えられている。桜の花びらが散る中、医学魔法大学院転入式が行われようとしていた。街の人たちや保護者が集まり、この先自分たちを守ってくれる医者をここぞと見に来ている。


 今日から俺たちはこの学校から選ばれた大学院生。会場に入場するとあたり一面観客に囲まれていた。

 生徒と観客からの拍手が起きる中、入場が終わると正面のステージから、スラっとしたスーツを着たロイズさんが登場した。


「これから医学魔法大学院転入式を始めます!」


 ロイズさんが一礼をし退場すると再びあたり一面から拍手喝采が起き、興奮のあまり席から立ち上がり柵に乗り上がる観客もいた。


 しばらくすると再びロイズさんが入場し、1人ずつ転入生の名前を言う。一人一人が椅子から立ち、大きな声で返事をした。

 名前を呼び終えると学院長からの一言。おそらく俺たちのパーティーへの話が出るだろう。


 ロイズさんは大きな声で祝福の言葉、そして観客へのお礼、最後に俺たちへの転入を認めると話した。


 無事に終わると思ったがそうはいかなかった。学院の生徒が1人批判をし始めた。俺たちは大学院に入るべき人間じゃないと。理由も曖昧すぎて聞く気にならなかったが、こんな大勢の前で空気を読まずに批判をした事だけは褒めてやろう。


 その批判にロイズさんは大声で言う。


「私、学院長の判断に何か文句でも?」


 その言葉はとても強烈だった。まるで会場の雰囲気を一瞬で変えてしまうほどに。その言葉を聞いた学院生も何も言うことができずそのまま流されてしまった。


 その後は順調に転入式が行われ、大学院の新しい制服や医学魔法学院から医学魔法大学院に改稿された学生証を1人ずつ教壇に行き、深く礼をし受け取った。

 

 開始から会場のテンションはずっと高く、すごく歓迎されていると感じ、あっという間に退場にまで式は進んでいた。

 席を立ち1人ずつ退場していくと同時に、少しずつ会場も静かになっていく。そこには何か悲しさを感じたが、それよりも今は嬉しさの方が勝っている。


 明るい雰囲気の会場で強く俺たちの転入を認めた事を言ってくれたロイズさんには頭が上がらない。また今度、学院長室でお礼をしに行こう。


 明日から俺たちは医学魔法大学院一年、自分の実力に浮かれすぎて本来の目的を忘れてはならない。 だが今日くらいはいいだろう。

 片手にジョッキを持ち2人で上に掲げお互いのジョッキをぶつけた。


 医学魔法大学院転入 おめでとう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る