第6話 王国「パスカル」の救世主


 この国、王国『パスカル』は先日まで他国との戦争を繰り広げていた。どうやら、領土の取り合いで起きたそう。その時に出た負傷者、そして国王様の持病の治療が今回の任務である。


 俺とカナは、王国の門を括り入国した。するとそこに広がっていた景色はまるで廃とかした建物の残骸だった。怪我をして傷口から血を流している人間が数え切れないほど多かった。

 王城に着くまでに見た数だけでも100は居た。

 

 王城に入り王様の秘書に城の中を案内された。


「実は王の病気は今まで来た医者の方全員が完治は不可能と言っているんです。だから正直今回も治るかは怪しいです。」


「いえ! 僕が絶対直します。安心して下さい。」


「本当ですか。それは期待していますね。」


 秘書はまるで俺のことを子供を見るような目で言ってきた。


 王様の元に案内された俺たちは、辛そうに横になっている王様に話しかける。


「ご気分はどうですか? すぐに治りますからね。」


「ダイスくん。治せそう?」


「うん。余裕で治せる。カナは外にいる患者たちの様子を見てきてくれないか?」


「わかった。」


 俺はカナにそう頼み王様の治療を開始した。


「治療を開始しますね。《全再生》」


 魔力で作られた回復の波動が王様の中に入っていく。そしてすぐに王様は目を覚ました。


「お、なんだか急に体が軽くなったぞ。」


「王! 気分は大丈夫なんですか?」


「大丈夫じゃ。なんだか元気が溢れ出てくる。」


「もう治療は終わりました。これで完治してますよ。」


「ダイスさんでしたよね? 本当にありがとうございます。」


「いえ。まだお礼を言うのは早いですよ。まだ街の人たちが。」


「そうなんです。みんなの傷を治していただけませんか。」


「もちろんです。ただ少し時間が必要になります。大丈夫ですか?」


「もちろんです。お願いします。」


「後、王様はまだ安静にしていてください。」


「おう。感謝してるぞ。ダイスくん」 


 王様からの感謝の言葉をいただいた俺は、すぐさま外に向かいカナが様子を見といてくれた患者たちの治療を始めた。


「ダイスくん! 人数が多すぎるから傷が深くて出血量が多い人から治療したほうがいいんじゃないかな。」


「そうだな。みんな一斉に治療するのは難しそうだな。」


 その時俺はあることを思いついた。それは、俺の魔力で作った回復の波動にカナの魔力を流して分裂させることはできないのだろうか。カナの身体強化は、体の一部を変化させて発達させている。要するに俺の波動を変化させて分裂させることも可能かもしれない。

 このことをカナに話した。


「わかんないけどやってみる!」


「よし! 頼むぞ!」


 俺は回復の波動を作りそこにカナの魔力を流した。すると、俺の波動が俺の意思以外で動いている。その瞬間細かな粒に分裂した。


「やった! 成功だ!」


「よくやった! 後はこれをみんなに与えるだけだ。」


 俺は分裂した全ての粒を同時に街の人々に与えた。傷口の出血が止まり、みんなが自由に体を動かせるようになった。

 みんなからの讃えられる声援の中俺とカナは王城に戻り治療が終わったことを王様に報告した。


「王様、気分は大丈夫ですか?」


「ああ。ダイスくんありがとう。君ほどの医者は初めて見た。この街の救世主だ。」


「いえいえ。そんなとんでもないです。それでは僕たちは王都に戻ります。」 


「ダイス様、カナ様。出口までご案内いたしますね。」


 王様の秘書に門まで案内してもらった。


「今回は本当にありがとうございました。お気をつけてお帰りください。」


「はい。また何かあったら任務依頼してくださいね。」


「私が最速で駆けつけます!」


「わかりました。その時はまたお世話になりますね。」


 そして俺たちは王都に向かい始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る