第5話 特別医療任務


 任務を達成し報酬を受け取った俺とカナはすぐさま次の任務を探していた。だがあまり迷っている時間はない。俺たちは効率よくポイントを稼がなければいけないのだから。

 

 なのだが、何故か上位ランクの任務しか残っていなかった。受付カウンターに聞いてみるも下位ランクのCランク以下の任務は全ての受付が終了したとのこと。

 

 俺たちがマテ草の任務を受ける前まではあんなにあった下位ランク任務がこの短時間で全てなくなるなんて絶対におかしい。その俺の予感は当たっていた。

 

 何が起きたのかというと、原因の根本はリヤだ。あいつが大学院生の先輩に喧嘩を売ったせいで、大学院生が嫌がらせとして下位ランクの任務を全て受けたのだ。あいつはいつまで経っても余計な事をするな。


 俺とカナはどうするか話し合った。


「Cランクから急にAランク以上なんて、危険すぎるよ。」


「そうだよなぁ。カナはまだしも俺には戦闘能力がない。2人の連携を完璧に取れてるわけでもないしな。」


 と、そんな時1つの特別任務が入ってきた。

 その内容とは、医療任務でこの王都から北の方向にある国『パスカル』の国民、国王の治療。というものだった。


「これなら俺でも出来そうだ。いや俺にしか出来ないかもしれない。」


「まるでダイスくんの為にある任務みたいだね。」 


 考える間もなくこの任務を受けた。


 さらに特別任務はいい成績を残すと、パーティー特定の任務として入ってくることが多くなる。この任務でいい成績を残すことができれば俺たちのパーティーに医療任務がたくさん入ってきて、効率よくポイントを稼げるようになるかもしれない。

 それに報酬も1500ポイントとかなり美味しい。これを続けることができれば大学院に入るのも夢じゃない。


 早速俺とカナは任務に行く準備をした。移動距離は馬車で8時間ほど。割と距離があるので少しだけ食料を持っていく事にした。正直今保管している食料は少ないが未知の領域で狩りをするよりかはマシだろう。


「カナ、準備はいいか?」


「うん。」


「よし! 行くぞ! パスカルへ」


 俺たちは馬車に乗り、王国パスカルへ向かい始めた。



 王都を出発し2時間が経った頃……


「カナ! 魔物の気配がする。ものすごいスピードだ。」


「わかるの? もしかしてダイスくんって魔感持ってるんじゃない?」


「何を言ってる! そんな事を聞いてる場合じゃないぞ!」


「大丈夫だよ! ほら見てて。」


 何をするのかと思ったら、カナは馬に触れ自分の魔力を送り込み身体強化を行っていた。馬の足が速くなり、馬車のスピードが上がる。


「カナの身体強化は他の生物にも使えるの⁉︎」


「そうだよ。私の魔力があればどの生物にだって効果がある。」


 俺たちの馬車を追いかけてきていた魔物は狼の魔物のワードウルフだった。

 このワードウルフは魔物の中でも最高峰の足の速さであることで有名なAランク級の魔物。その魔物から逃げ切れるほどの身体強化を行えるカナは何年かに1人逸材に違いない。

 

 カナの身体強化により、ワードウルフを相手にもせず、さらに予定時間の半分の時間でパスカルに着くことができた。


 これから俺たちは、医療任務を行う。

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