後悔の渦へ

TEI

後悔の渦

君は後悔している。


丸い太陽が地平線に沈みかけ、半円状になって空を橙色に染め上げているその時。


半年ほど通い詰めた病院の一室で。




 「特別に面会をさせてあげてるんですよ。」


そんな先生の話など頭になかった。早く検査が終わってくれないか。もう時間がないんだ。


やっとのことで足を踏み入れた病室。


実は面会したときには息を引き取ってたのかもしれない。でもそんなこと考える余裕なんてなかった。ただ目の前の大切な人が眠っているかのような安らかな顔を見て、色々な思い出が蘇ってきていた。


友人の死に向き合ってとても悲しんでいたこと。兄の困難な時期にまるで自分の事のように寄り添ってあげていたこと。思い出の旅行先で笑顔で写真を撮っている姿。大好きな手芸に沢山取り組んで、机に並んでいる作品の数々…


そして今自分の首にある貴方が作ったネックレスを見る。


貴方の体のことなど何一つ知っていなかった。知ったときには症状が現れており、余命1年。


一番近くにいたのに何も気付くこともできず、余命宣告を受けた後に焦るかのように色々な手伝いをした。


最後だけ。そう最後だけだ。


後悔を残さないようにできる事は全部しよう。半年間できるだけのことはやった。


それでも遅すぎた。まだしたいことが沢山あったのに。思い出をもっと作りたかったのに。今まで頼り切っていた部分を一人で出来るように色々教えてもらいたかった。大好きなメンチカツの作り方も。


すっかり太陽が沈み、夜の街の景色が眼前に広がる病室で。貴方は息を引き取った。




それから少し経って先生と話し合いをした。


何を言っているのか頭には全く入ってこなかった。しかし一言だけ未だに心に残っている言葉がある。


「「このご時世に家族が揃って病室に居れたのは恵まれていることなんですよ。」」


何を言っているんだこの人は。ふざけるな。そんなことどうだっていい。


「お前みたいな人間がのうのうと生きているのはなんでだ!代わりに死んでくれればよかったのに!」


唐突の言葉にさぞ驚いたことだろう。


あぁなんてことを言ってしまったんだ。


後悔の渦に吸い込まれる。










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