第32話 能力の一端
なんと言うことでしょう。
彼女の亡くなった母親以上に……
翠羽さんの『
こんなにも……能力が甚大だとは思いませんでした。
「……聞こえますか?」
とにかく、身体を再生させられた……魍魎の幹部候補は、上を見てぼんやりしているだけでしたが。
やはり……『魂』本体は、ここにもう宿っていないのでしょう。ただの『抜け殻』に過ぎません。
「……課長、これでは」
部下の
しかし……私も刑事の端くれです。この状況を冷静に、正確に判断せねばいけません。急いで端末を使い、鑑識のひとりを呼ぶことにしました。
「……こりゃぁ、すげぇなあ?」
ドワーフ族の鑑識部長、
この状況を、下の者では任せられませんので……彼をお呼びしました。
「他言無用でお願いします。そちらの……現在右足のみで浮いている、翠羽さんのお陰です」
「……ああ。俺の霊力でもなんとか視えんな? 可愛い嬢ちゃんじゃねぇか?」
『……よろしくお願いします』
翠羽さんは、
彼女のことはさておき、現状の方をどうにかしましょう。
燐音さんは、幹部候補の身体を……特殊手袋をはめて観察していきますが、すぐに首を横に振りました。
「ダメだ。中身がまるっきり『無い』」
「しかし……呼吸器官などは機能しているようですが」
「そこが不思議だ。……嬢ちゃん、ここを『戻した』のか?」
「……それも他言せぬよう」
「わーっとる。戻しても、時間経ち過ぎて『中身』までは取り込めなかったようだな?」
「……この身体は、鑑識行きでしょうかね?」
「だが、『生きてはいる』から……解剖は出来んな。基礎的な診断程度だ」
「それでも……魍魎の奴らの情報が得られれば」
「やるだけやってみるわい」
少しでも……奴らの情報を得られることが出来れば。
我々の悲願もですが……翠羽さんの身体を取り戻せる情報も得られます。
普通なら、生きていない状態でも……足が幽体と同化しているので、他のパーツも『生きている』のでしょう。
奴らは、どこまで卑劣か。
時蟲のためとは言え……やはり、許し難い存在ですね。
ひとまず……国綱さん達には解析などに時間がかかるので、お帰りいただきましたが。
幹部候補の身体は……鑑識を通しても、再び破裂することなく、呼吸を繰り返していることは、私がデスクに戻ってから燐音さんより端末経由で連絡がありました。
貴重な証拠戻ったとは言え……翠羽さん自身は辛そうでなくとも。少女にあのような力の使い方をさせてしまったことは、今でも罪悪感があります。
しかし……刑事としては、可能性を少しでも利用せねば。
解決への糸口が、見つからないのです。
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