赴くままにキミを欲す。

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応えたい、その熱に


何よりお前を求めているのは────…




         『赴くままに、キミを欲す。』








梅雨明けの青空と共に、



僕…水島みずしま 綾兎あやと芝崎しばざき 健太郎けんたろうは、



所謂“恋人”という、関係になった。





生まれて此の方、恋愛に対しては無頓着で。

殆ど興味すら無かったから…。


芝崎に抱くこの想いが恋心だと気付くのに、

随分と遠回りしてしまい…いろんな事があったけれど。




上原や町田さん、それから僕の母さんと…


彼らの助けもあって。



互いに思いを伝えることが出来た僕達は、

新たな関係を築き、今に至るのであった。






そんな、付き合い始めて早くも1ヵ月以上経った、

8月半ば。



付き合うといっても、

すぐに恋人気分を満喫する暇もなく…。


その後、待ち構えていた期末試験をなんとか終えはしたものの…。



僕は受験生と言う立場もあり、夏休みは学校の夏期講習などにほぼ毎日参加。


芝崎は芝崎で、稼ぎ時とばかりにバイトを始めてしまった為に…



夏休みもあっという間にお盆が開け…。

気が付けば残り僅かと、なってしまっていた。






そんな会えない日々が続いたある日の事。

僕はある不安に苛まれていた────…




それは、恋人ならまずぶち当たるであろう問題で。


僕らの場合、それは…

“男同士”と言うのが、かなりの障害となっていた。









「はぁ……。」


恋人になってからは、お互い両想いなのだから。

ある程度の…キスや多少のスキンシップは、それなりにされてきたのだけど…。




ふたりきり、どんなに甘い空気になろうとも、

に進むことは、無かった。



それは芝崎の方から求めてこないから、だったが…。






自分からはまず、そういう行為には及べないものの…。芝崎を好きだと自覚してからは、人並みに欲もあったから…。


一応、覚悟はしていた。






そもそも女性と付き合うどころか…

恋愛感情を抱いた事さえ無く。


僕の知識は、なんとも悲惨なものだったから。





…せめて男同士での行為に対する知識だけは、身につけておこうと思い、


本屋でそれとなく調べたりしたけれど…。





そういった類いの本は、何故だか女性向けの漫画コーナーに置いてあったりして。

僕がそこに行くと、必ず女子高生なんかに好奇の視線を浴びせられるものだから…。



居たたまれなくなり…結局は何も獲られないまま、

徒労に終わるばかりだった。






ネットで調べようにも、

何を調べればいいのかがまず解らないし。


まして本人には、死んでも聞けるわけがないから…。




唯一の友人である佐藤は、元よりそういう話題を話すようなタイプじゃないし。


上原にも聞けるような内容では無いから…。





他に頼る宛もなく八方塞がりだった僕は…


思い切って母親に、相談してみる事にしたんだ。

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