第10話 パジャマパーティー

やつが口を開く。

『真由って、思ってたより細いね。折れそう。』

『だろ?大切に扱え!』

『それが無ければ、女子として可愛いんだけどなぉ(笑)』

『うっさい!放っておけ。』

 少しだけ、人間の温もりってこんなんだなって思い出した。あー、私ちゃんと心があったんだぁ。

 それから、二人でゲームして、お昼には外でランチして、ついでにスイーツ食べて来た。帰るつもりだった。

『え?帰るの?泊まって行かないの?』

『え?何で泊まるの?何も、持ってきてないよ!』

『買えばいいじゃん!』

『お前、庶民をなめんなよ…。』

 萌ダーリンは、私に一式買ってくれた。さすがに、下着を買いに着いてきたのはびびったけど。一緒に選んでくれた…下着も。少しだけ、恥ずかしいと思ってしまった。

『おい、真由。スキンケアは、どうするんだ?』

『あ、久しぶりです。俺様!』

『余計なことぉ!』

 女子との買い物は、あっちこっちに行くから疲れる。でも、やつは今は男子。颯爽と買い物を済ませて、無駄に広いタワマンに帰った。

『パジャマパーティーだね♡』

 だからさ。可愛いんだって。油断してたわ。


 その夜、私は生物学的男と夜通し恋バナをした。とは言っても、一方的に萌ダーリンが話していたのだが。私には、ネタが無かった。好きな部下との出会いから、今に至るまで、事細かに話してくれた。きっと、話を聞いてくれる人が居なかったのだろう。その話は、尽きることは無かった。

『あーさーだぁーよぉー。』

『朝まで話しちゃったね!』

『今から寝ていい?』

『腕枕、必要かい?』

『噛み付くぞ、おい』

 同じベッドに寝ていても、変な気はお互いにおきない。てか、このベッドって何サイズなの?何人寝れるの?居心地が良すぎる。面倒な営みが要らない。スキンシップも必要ない。話をするだけ。これは、最高なのでは?その後、私は眠りに落ち、起きたら夕方だった。

『私の休日が…』

 当たり前に、夕食と言う名の朝食を食べて、家に送って貰った。傍から見ればお泊まり。おい、ラブラブじゃねぇかよ!ってなるけど。すみません、色気のある事は、何一つ存在しませんでした。清々しいまでのパジャマパーティーでした(笑)

 夕焼けが綺麗だった…。明日は、雨になるのかな。部屋の窓を開け風を通し、和室にちょこんと座る。

『何か、最初の印象と違いすぎて、よく分からんが楽しいな…。萌ダーリンといるの。楽だな、気持ち的に。』

 萌ダーリンは、本当に私に女らしさを求めていない。むしろ、自分の女子力を見せつけてくる。普通のカップルとは違うけど、普通じゃない時間が楽しい。

『苦しみって人を優しくするんだな。』

 私は、優しくない。人の苦しみとか、分かってあげられない。苦労もしてない。だから、当たり前に目線がフラットで偏見とか差別が無いだけ。でも、やつは違った。性自認にしても、自分の道に関しても、どうしていいのか分からない中で、手探りで歩いてきた。

『普通にしてるだけで、皆の好物だろうよ、あんな男は。』

 ただ、性自認を理解し、それでも一緒に居られるかと言う問題のみだ。

『夕焼け…にゃんにゃん…ふるっっ。我ながら、なんで知ってるんだ?』

 その日は、本当に夕焼けが綺麗だった。

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