第88話 ロクデモナイノハボクカキミカ
少女はふと部屋の中を見回していた。何か気になった事があったワケでは無く、ただなんとなく見回しただけだった。
やはり暗殺に近い方法を取った事が、センチメンタルにさせていたのかもしれない。
そしてふと見回した結果、見てはいけないモノが視界の隅にあった気がしたのである。
言い換えるならば、見てはいけないモノを見てしまったのだ。
「アレは、まさかレーヴァテイン?何で……ここに?」
「そうだあの時、シンモラが死んだ後でアタシはあのままあそこに、レーヴァテインが刺さったままにしてたんだったわ」
シンモラを
その剣を見た途端、少女の背中に一筋の嫌な汗が流れて行く。見ただけなのに足は竦み力が抜けていくようだった。
ここにいてはいけない。
ここに居てはいけない。
此処に居てはいけない。少女の心が、けたたましくアラームを鳴らしていた。
早く逃げろ。
早くにげろ。
早くニゲロ。少女の心がまるで呪詛のように植え付けられた恐怖を語っている。
「スサノオ待って、まだ終わってないかもしれない」
「おいおい、どうした?何が終わってないって?」
突如として震え出した少女の変化に、スサノオは心配になりながら駆け寄っていった。
「あ、あの剣が、ここにあるのッ!あの剣がッ?!」
「えっ、ウソ……でしょ?」
少女の目に映ったのは、スサノオが心臓を貫き確かに死んだハズのセックが、ゆらりと立ち上がっていく姿だった。
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セックは目を開けた。自分の胸の上には既に事切れたスカジが横たわっている。白目を剥き口から泡を吹いたままスカジはセックの上で
セックはスカジの顔を掌で優しくなぞってスカジの瞳を閉じると、ゆっくりとスカジの亡き骸を自分の上からずらし、そして、その場に立ち上がったのである。その視界には侵入者が3人映っていた。
そして、自分達を殺した男に向かってセックは得物も持たずに速攻を仕掛けたのである。
「スサノオ殿、後ろだッ!まだ生きているぞッ」
「なにッ!?」
その声は少女の後ろから響いて来ていた。サリエルがスサノオに対して声を掛けたからだ。サリエルの言葉にスサノオが急ぎ振り返ると、自分まであと一歩の所まで迫っているセックの姿がそこにあった。
「ちぃッ、気付かれたかッ。気付かれなければ素っ首をねじ切ってやったものを……。仕方ないレーヴァテイン来いッ!」
すちゃ
「その首、斬り落としてくれるッ」
ざんッ
レーヴァテインをその手に収めたセックは、スサノオに対して先ずは斬撃を放っていった。
しかしスサノオは
「心臓を刺して絶対に死んだと思っていたが、生きてるとはどういった了見だ?」
「レーヴァテインの「
スサノオは少女に問いを投げていたが、少女はセックに対して問いを投げており、スサノオの解答は消失していった。
しかし、スサノオはセックから視線を切らずに、まるで悍ましいモノでも見ているかのような目をセックに向けたままだった。死んだと思っていた者が蘇ったのだから当然と言えば当然の事だろう。
「
「なるほどな、そういう了見だったか。オレサマの
スサノオは先程とは違い、少しばかり嬉しそうな表情でセックに斬り掛かりレーヴァテインと刃を交錯させていく。
こうして2人の剣が激しく火花を散らしていくのだった。
「アイツの分身?まさか、あのセックと言う女も?」
「アナタも「ロキ」なのね?」
「ッ?!」
少女は疑問に思った事を纏めると、それをセックに対して投げていった。セックはその言葉を受け取ると驚いた表情になって、撃ち合っていたスサノオと一度距離を取ったのである。
「へぇ?じゃあ、アンタがアタイ達の……アイツらの魔石を持ってるってコトでいいのか?」
「そうだ……と言ったら」
「じゃあ血祭りに上げるのは、先にアンタからだよッ!」
セックは一足飛びで距離を詰めると少女に向けて強烈な「突き」を繰り出していった。
ちなみにセックがその身に纏っているものはベビードールだけであり、下着すら身に着けていない血塗れの格好なので、同性の少女であっても目のやり場に困ると言えば困る。
それが一足飛びで距離を詰めて来たのだから、少女からしたらそれはもう狂気の沙汰としか言えなかった。
そしてこの時、少女は何も
要するに現状、この中で一番弱い少女が無防備でいる事が間違いとしか言えないだろう。
「右へ翔べッ!」
「えっ?」
バッ
スサノオの声が突如として響き、少女はその声に従って左足に力を込めると右側へ大きく跳躍していった。
少女はスサノオの
「サリエル今だ、やれッ!」
「承知している」
セックとサリエルの間に少女がいたので、スサノオは少女をどかしたかっただけだった。よって
ちなみに、少女はサリエルの額の瞳について詳細な情報を持っていないので、それはスサノオとサリエルの息のあった作戦と言えるだろう。
「くッ、随分と厄介なモノをもってるじゃないか?」
「
「そんな厄介なモノ、
サリエルに殺し掛けられたセックは、レーヴァテインをサリエルに向けて放っていった。サリエルは自分との間にある力量の差に戦意を失い掛けていて、斬撃を躱す猶予は無かったと言える。
幾重にも及ぶ斬撃が迫って来ていたが、その斬撃は「がぎんッぎぎんッ」と言う凶悪な音を立て、セックの前に立ちはだかったスサノオに因って止められていった。
「
「火事場にいて身に降り掛かる火の粉が、たった1つだけと言うことはあるまいッ」
「へっ、そりゃ癪だが同感だ」
スサノオは「
「おいおい、マジかよ。オレサマの「
「あははははは、どうしたどうした?奇襲じゃなきゃ、アタイ1人ロクに殺せやしないのかい?」
スサノオの「
ちなみに、下位互換の
また、この手の
この
因ってそのバグの影響でスサノオは苦戦を強いられる事になる。
そして肉眼だけでは捌き切れない程の、セックから放たれてくる斬撃は
幸いな事にセックに対しては
これならば、完全目視で闘うよりは時間稼ぎになる算段でいた。しかし手傷は増える一方なのでそれが
「おい、おめぇら!コイツはオレサマがなんとかする。だから、おめぇらはコイツをなんとかする策を練ってくれ!」
「アタイを1人で抑え込めるなんて勘違い、傲慢だねッ。おらおら、どうしたどうしたッ」
滅茶苦茶な事をスサノオは言っていた。「
セックの攻撃を致命傷を避けて捌けるのは「
それは
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