第80話 ネンネンコロリヨオコロリヨ
「あっちはどうやら、片付いたようだぜ?こっちもそろそろ終わらせねぇか?」
「ま、これで会話が出来りゃ、ちったぁ面白みがあんだけどな」
スサノオは徐ろに
そしてスサノオは腰に差してある
これまでウルと闘ったスサノオとしては、ウルの土俵で
達人級同士の闘いとは技量が少しでも上の者を、下の者が簡単に倒せる程に甘くはないのだ。
「さてと、こっからがオレサマの本領発揮だ。闘神の剣技、とくと味わえや!」
ぶおん
スサノオは自分が持つ
ちなみに「
「へッ、そっちに逃げるのはお見通しなんだよッ!」
しゃしゃしゃしゃしゃッ
スサノオが最初に放った剣撃は言わば誘い水であり、本命は次の剣閃にあった。
スサノオはウルの逃げる方向を理解していた為に、そこに誘い込まれた事になる。拠って、ウルは剣閃に捕われたのだった。スサノオは予め目にも映らない神速を用いて、
この戦闘技法は操られている時に少女と闘った折にも使っており、少女はそれに因って散々苦しめられていた。少女の持つ
こうしてウルはスサノオの剣閃に因りサイコロ状に斬られ、もはや誰とも判別のつかない姿になって
「あーあ、これだからツマラねぇんだよ。オレサマが本気で剣を使うとみんなこうなっちまう。ま、アイツくらいだったな、死ななかったのは」
「まぁいいか、あばよ弓兵。「冥界」であったら狩りの仕方でも教えてくれや」
「終わったようだな?それにしても……いつ見ても凄まじい剣捌きだ」
「オレサマが
「どちらにしても生命を奪う力に違いはないな」
「それじゃサリエル、アイツにオイシイ所を全部持ってかれる前に、早いとこ追い掛けるぞッ!」
サリエルは額の瞳を閉じ、走り出していたスサノオの後を追い掛けていった。その顔はどこか呆れ顔だったが、悪い気はしなかったのだった。
「まったく、根っからの
少女は階段を昇り2階へと来ていた。どうやら2階はその部屋全てが1つの広間となっている様子だ。
バルドルが引き連れていた軍勢の
拠って、社交性のある光景とは言えないだろう。
更には聞き取れない言葉を発しながら、少女へと襲い掛かっていったのだった。
「ちょッ?!あの行軍についていた
「操られていると考えるべきね?でも、1人1人を正気に戻してる猶予なんてないから、クッ」
ぎりッ
少女は「
少女はそれぞれの手に「神」と「魔」のそれぞれの力に拠る「剣」を持ち、二刀で数の暴力に対抗する事を選んだのだった。
そんな少女が噛み締めて血を流していた傷は、とっくになくなっていったが心のキズは癒やされていなかった。
少女は操られているだけの
今度は少女の正面から向かって来た3人の
そして投げられた
「貴女達、まだ
かちゃかちゃ
ざっざっざっ
「聞く耳は持ってくれない……か」
少女の悲痛な声は大広間に響きわたっていった。だが、
その手に各々武器を持ったまま。
少なからず少女は
ある者は胴体から切り離された腕が飛び、腹に大穴を開けられその場に崩れ落ちていった。
ある者は頭が泣き別れ、盛大に
腕が飛び、脚が飛び、首が飛ぶ。
「もう殺したくないのッ!」
「お願いだからもう止めてッ!」
少女は心の中で叫びながら剣を振るい、泣きながら剣を振るい、傷つきながら
だが、
こうして、大広間にいた
だからこそ遣り切れない思いが心に込み上げ濁していく、割り切れない気持ちは鬼気迫る表情へと塗り替えていった。
そして敵が全ていなくなった2階から、3階へと繋がる階段をゆっくりと踏み締めて昇っていく。
「生命を弄ぶ
ヘルモーズがバルドルを連れて地下牢獄から地上に出て来たのと同時刻、スサノオとサリエルは宮殿の中へと
「おぉ、ヘルモーズじゃねぇか、どうやらそっちは無事そうだなッ」
「スサノオ殿!ウル殿とヘイムダル殿を相手にしてご無事とは流石ですな」
「あ、あぁ、まぁな。ところでソイツ、大丈夫なのか?」
「分かりません。だが恐らく、フレイヤ殿の
くんくん
「確かにそうみてぇだな。だが、今までのヤツに比べればそこまで臭くはねぇな。まぁ、助けたいヤツを無事に助けられたんだ、良かったじゃねぇか、ヘルモーズ!!」
ばんばんッ
「げほっげほっ。スサノオ殿、それは有り難いですが、力が強いですな」
スサノオはヘルモーズが無事でいるかは気掛かりだった。少女に対してはそこまで心配はしていないが、戦力外でしかないヘルモーズを、本拠地に向かわせた事は心配のタネだったのだ。
だが元気そうかどうかは置いといて、探し人を無事に連れ出せた事でホッとしていた事に変わりはない。
「ところで、アイツはどうした?」
「はい、非才と別れて1人で上階へ」
「そうか……。じゃあオレサマはアイツを追い掛けるが、まだ、捕まってるヤツはいるのか?」
「はい。まだ地下にいます。ですが、フレイヤ殿の
「ちッ、しゃあねぇな。サリエル、ヘルモーズと一緒に捕まってるヤツらの救助を頼めるか?」
「了解した」
「サリエル殿を?!い、いや、それは……」
「
ヘルモーズは地下牢獄の実態を渋々話した。フレイヤの家畜に成り下がった、哀れな男達の姿を伝えなければならないと感じたからだ。
あんな哀れな姿を女性であるサリエルが見れば、嫌悪感を露わにする事は間違いがないだろうし、サリエルが女性だと知られれば肉欲を満たす為に、被害者である救助者達が加害者になる心配もあるからだった。
そうなれば目も当てられない。
話しを聞いたスサノオとサリエルは非常に不快そうな表情をしており、身体に
「まぁ、それならばなんとかなるだろう。もしも
「おいおい、ソレ使ったら殺しちまうんだろ?」
「なぁに、相手が
「サリエルって、意外と乙女だったのな。ま、まぁ、そんなワケだ、ヘルモーズに付いていってもらえるか?」
「あ、あぁ。任された」
こうしてサリエルはヘルモーズと共に救助にあたる事になった。しかしヘルモーズは人手が増えた事を喜びつつも、サリエルの身を案じて……いや、これから助けに行く人達の身を案じていたのだった。
「ところでスサノオ殿、先程、
「おいおいそりゃ、一体どう言うこった?ここには
「スサノオ殿、ここにはオーディン様の元に
「うっ、そりゃあ言葉のアヤってヤツだ。細けぇコトを気にすんなよ。アイツみてぇじゃねぇか。で、フレイヤはそんなにヤバいヤツなのか?まぁ、見た目がヤバいとかって話しなら、おめぇをぶっ飛ばすけど、そんな与太話じゃないんだろ?」
スサノオは意味深な事を言うヘルモーズに対して問いを投げていたが、その内容はヘルモーズを震え上がらせるには充分だった。
しかし、謂れのない事で「ぶっ飛ば」されるワケにもいかないので、決意を固めてありのままに話す事にした様子だった。
「フレイヤ殿は今やフレイヤ殿では無く、その身体には「グルヴェイグ」と言う
「へぇ、あのオッサンでも倒せなかったのか?そりゃ随分と……」
「スサノオ殿?貴殿も大概なのは理解したが、ヨダレを垂らしながら聞く話しでもあるまい?」
「あの魔性、「グルヴェイグ」には
ヨダレを指摘されたスサノオはゴシゴシと拭きながらヘルモーズの話しを最後まで聞いており、ヘルモーズの表情に書いてある「必死」さだけは理解出来ていた。
しかし鬼気迫る表情で訴えるヘルモーズの
「まっ、そう言う事なら上手い事やってやらぁ。だからその、グルなんとかの事は気にせず、ヘルモーズは捕まってるヤツらを集めたら「ユグドラシル」に向かってくれ。サリエルは……任せた。そん時の判断で動いてくれ。そっちの方が、おめぇらしい」
「わ、
スサノオの提案に2人は乗るしかなかった。少なくとも相手が「魔性」の存在ならばヘルモーズの
少女の
しかし一方で、サリエルはスサノオから助けられた事や、人柄に触れた事をきっかけに好意が芽生えつつあったが、経験した事のない不本意な感情に戸惑っている様子とも言えた。
少女は3階へと来ていた。そこは2階とは様相が異なっており、大広間では無く廊下の左右には幾つも扉が見えている。
要は1階と同じ造りに違いないが
「左右の部屋に敵がいれば大絶賛で挟撃されるけど、そん時はそん時ねッ!だから、最速で駆け抜けるッ!」
「アタシとしてはもう、あんなのはコリゴリだもの」
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