第65話 Yamabeno Akahito ~ Nubatamano ~
どどどどどどどどッ
「うはは、やれやれい、もっとやれいッ!それじゃ、ワシも手心を加えてやるか!ん?それだと手加減してやる事になるか?まぁ、いいわい、どっちにしろワシも加わるだけだッ」
フォルニョートは高笑いをしながらも、自身の掌に岩の塊を生み出すと少女へと向かって投げ付けていく。こうして、土、火、風、氷の四属性による絶え間無い攻撃が少女に向かって繰り広げられていったのだった。
「絶え間が無さ過ぎる。魔石を使いたいけど、デバイスはシールド展開で使っちゃっているから、えぇいもうッ!やったろうじゃんかッ」
「
「
少女が先ず呼び出したのは武力を持たない盾兵であり、これはその次に呼び出した機関銃兵を守る役目だけを与えられた、文字通り「盾」である。
盾兵は素早く方円陣を敷くと盾と盾の間に機関銃兵達が収まっていき、そして余った機関銃兵達はそのまま陣の中央に座して対空用に配置されたのだった。
ちゅんちちゅんちちちゅん
ちちちちゅんちちちちちゅん
ちちちちちちゅんちちちちちちちゅんッ
機関銃兵が地面を除く全方位に向けて光弾を放っていた。更に少女は先程、上空から降ってきた辺りに対して、牽制の意味も込めて魔術を幾つか投げていく。
機関銃兵の無慈悲の弾丸は機械的に流れるルーティンワークのように、そうなるのが然も当前とでも言うように様々なモノを
各兵に与えられた2000発もの魔力弾はものの数分で撃ち尽くされ、機関銃兵達が役目を終えた時には、少女に対する攻撃はほぼ皆無になっていた。
こうして全弾撃ち終えた機関銃兵が余韻を残して消え去り、その機関銃兵を守る為だけに
少女は敵の攻撃が止んだ事でやっとデバイスのシールドメイデンを解く事が出来た。
そして次の手に出る為にベルゼブブの魔石を剣に宿し、その姿を変えていくのであった。
「この状態なら、死角が無いからどっからでも掛かってらっしゃい……なんだけど、さっきの銃撃で殲滅されちゃった……なんて事は無いわよね?」
「えっと、うん。まだ、光点はあるから、生き残りはいるみたいね?」
「がぁああぁぁぁぁああぁ」
「取り敢えず、いちッ」
ざしゅッ
「続いて、にッ。
少女は雄叫びと共に向かって来た
背後から迫るフォルニョートの斧を自分の目で見る事なく避け、上から降ってくる真空刃に愛剣の
そして降って来る炎の塊には、今斬り倒したばかりの
「じゅッ」と音が響き、肉の焼ける臭いが辺りに充満していく。
少女の流れる一連の動きにフォルニョートは為す術なく、躱された斧で大地を斬り裂きながらも呆然とする事しか出来ないでいた。
「ば、化け物めッ」
「まったく失礼ね?この姿になりたくてなってるワケないじゃないッ!ふんすっ」
「見た目が化け物なこんな姿、乙女なアタシが好き好んでなりたい
「…………」
少女はフォルニョートの呟きに反応した。しかしまぁツッコミどころ満載で見当違いも甚だしいが、そこはツッコまないであげてやって欲しい。
「カーリ、ロギ、主に伝えろ、ここはもう保たん。最後に一太刀、せめて一太刀浴びせられればいい方だと」
「へぇ、覚悟を決めたのね?じゃあいいわ、掛かって来なさい。城壁の上の2人の前にアナタから決着を付けてあげるッ!」
「武人として、誇りある死をッ」
「いざ、参るッ!」
フォルニョートは速攻を仕掛け、少女に向けて斧を振り下ろしていく。渾身の力を込めた斬撃を少女に喰らわすために。せめて一太刀浴びせるために。
そして、誇りある武人としての一騎打ちを全うするために。
その一方で、少女は視ていた。死角がない視界でフォルニョートの行動を包み隠さず見定めていた。
斯くして、放たれる一閃。
フォルニョートの斧が完全に振り下ろされる前に、フォルニョートの頭と身体は泣き別れていったのだった。
「ば……け……、も……の」
「父上ーーーッ」 / 「親父殿ーーーッ」
「子供の見ている前であっても、誇りある武人としての死を求めた不器用なアンタは嫌いじゃないわ。でもそれにしてもホント、失礼しちゃうわね。バケモノだなんてッ!アタシはこんなに可愛くてピュアな乙女なのにッ!」
少女はフォルニョートを一瞥して空へと舞っていった。城壁にいたフォルニョートの息子達の反応は既にない。父親の死を伝えにいったのかもしれない。
今なら城壁に近付いても危険はないかもしれないが、念には念を入れてベルゼブブの姿のまま近付いていく事にした。
「恐らく、この城壁は幻術かしらね?それなら強引にでも突破するんだけど」
「でも、なんかありそうなのよねぇ。幻術だけだと思わせといてホイホイみたいな?」
「じゃあ、試しに。デバイスオン、ガンモード」
ばしゅうッ
少女は相手が「ロキ」であれば、単純な幻術だけで守りを疎かにするワケがないと確信していた。
拠って、デバイスから魔力弾を放ってみたのだが、放たれた魔力弾は案の定、城壁に当たる前に「バチッ」と音を立て霧散したのだ。
「城壁は幻術。でも、それ以上に結界が張ってあるのは厄介ね。この中に不用意に突っ込めば……ちょっと考えたくない……かな」
「ま、せっかくこの姿になってるんだから、ちゃちゃちゃっと破って、とっとと中に入っちゃいましょッ」
「我が内に在りし暴食の力よ。その力の一翼を持ちて、全ての事象を喰らい尽くせ!
少女の詠唱に拠って力が一点に収束していく。そして少女の掌から放たれた黒い竜巻は、城壁に向かって凶暴な牙を突き立てていった。
ばぢばぢばぢばち
「ふぅん、結構強力な結界なんだ?それじゃ、もうちょっと出力を上げてっと」
ばぢばぢばぢばぢばぢばぢ
結界は必死の抵抗をした。結界は襲ってくる黒い竜巻の牙に対して、不協和音を発しながらも
結界を喰らい尽くした黒い竜巻は城壁と言う名の幻術すらも喰い破り、城壁に大穴を開けていく。
少女はその大穴にすかさず飛び込んでいき、無事に入城を果たしたのであった。
陽の光は完全に落ちる寸前で、空は紫色のマジックアワーを終えようとしている。夜の帳がもう顔を半分覗かせている頃合いだから、潜入するにはいい頃合いと言える。
まぁ、これだけ大音量で暴れまわった後だから、潜入も何もないのだが、気分だけはスパイのようにひっそりと潜入したい気分だった。
大立ち回りをした結果、それくらい疲れていたとも言い変えられるし、大分オドを消費していた感もある。
これから外は夜に向かう道中にある。城の中が暗いとは思えないが、
少なからず少女はバイザーを使う事で夜目が利くし、ベルゼブブの
今は少女にとって
少女は城壁を越え空から眼下に広がる「ウトガルザ」の街を見下ろしていった。
そしてその中心にそびえ立つ城に向かって空を駆けていく。
「さぁ、鬼が出るか
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