第54話 セカイノインユ
少女の思考回路は自身の持つ、「切り札」とも言える「型」を使う事を決めた。それによって少女はその「型」の体勢へと身体を整えていく。
「あー、やめとけやめとけ。それを使っても、オレサマにゃ一撃すら与えられんぜ」
「なッ?!んです……って」
スサノオが投げた言の葉は、少女の行動を
そして少女の表情に驚愕が浮かんでいく。
「はぁ、なんだ。そう言う事なのね?やっと理解出来たわ、貴方の権能を……それとも
「まぁどっちでも似たようなモノね。ところでそれは「未来予知」とでも言うのかしら?だからこそ、アタシの攻撃が当たらなかったのよね?」
「流石にヒントが大き過ぎたか?実際は「予知」してるワケじゃあねぇが、似たようなモンとだけ言っておくぜ。だからその点は及第点にしてやるさ。だがまぁ、せっかくだ。やりたかったら、おめぇの取っておき……破ってやるから見せてみろや」
少女はカマを掛けていた。いやまぁ、闘う以上そんなモノがホイホイあっては困るし、敵がそんなのを持っていたら目も当てられないが、それ以外に説明が付かなかったからカマを掛けて探ったのだ。
だが、それは及第点と言われたコトから、厄介な
そしてスサノオは指先を「くいくいッ」と曲げて少女を挑発していた。流石に少女はイラつく事はイラついていたが、冷静になって「破られる事が分かってて「取っておき」を使う程、間抜けじゃないわ」とだけ呟くと、「型」をあっさりとキャンセルしスサノオに近付いていった。
「で、満足出来た?アタシと闘いたかった結果わ?」
「あぁ、そっちもまぁ及第点だ」
「そう。それなら良かったわ」
パシッ
「チっ……ダメかぁ」
少女は悪手とは思いながらも、スサノオにノーモーションで平手を出したが、その掌はスサノオの右手に掴まれていた。
「へっ、残念だったな。そんなんじゃオレサマは出し抜けねぇぞ。だがまぁ久し振りに楽しめたし、そういう気が
「な、何よ急に///」
豪快に
「で、神界に帰る方法は、教えてくれるんでしょうね?」
「あぁ、そうだったな。オレサマとしては、ここで遊んでから帰るって選択もアリなんだが……」
少女は高鳴る鼓動と染めた頬を気付かれないように抑えながら紡いだが、スサノオが取った次の行動で更に今度は耳まで真っ赤になったのだった。
それはスサノオが少女の手を取ると自身の方へと引き寄せたからだ。
「ちょ、アンタ、一体何をッ!遊ぶって、ちょヤメてよ……アタシ達まだそんな関係じゃないし早いわッ///」
くるっ
「えッ?えぇッ?!」
少女はスサノオの胸元に吸い寄せられるように引き寄せられるとそのまま
そして、スサノオは再び少女を抱きかかえ、そのまま跳躍したのである。
当然の事だが状況がまったく掴めていない少女は、驚きの声をその火照った口から漏らしているだけだった。
更に、跳躍されたコトで急激に広がる視界の端に何かを見た気がしていた。
「へへッ、こんなところにまでやって来るとはな「ヘル」!よっぽどコイツにご
「ぐぬぬ、まだ邪魔をするでありんすか?」
「それがオレサマへの命令なんでな。くれてやるワケにはいかねぇのさ」
少女がいた場所の後ろの空間にはワームホールが開いていた。いち早くそれに気付いたスサノオは、少女を守る為に抱きかかえて跳躍したのであって、それに気付いておらず勘違いした少女は急に恥ずかしくなっていたと言うのは言わずもがな……であろう。
しかし、まさに間一髪と言うのは言い得て妙だった。そこには顔を醜く歪め、老婆のような姿をした女性がワームホールから身体を半分ほど出して手を伸ばしていたからだ。
顔の半分が……いや、
あのままあの場にいれば、少女はワームホールの中へと引き摺り込まれていた事は間違いがないだろう。
「ヘル?」
「念の為だ、見るんじゃねぇ!それと、耳も塞いでおけ」
「う、うん」
「ところで
スサノオは敵意を剥き出しにして「ヘル」と対峙している。そんなスサノオの言葉に少女は、「助けてもらっておいてなんだけど、アンタがそれを言うの?」と盛大にツッコミを入れたかったのは秘密だ。
しかしながら、「ヘル」は完全にワームホールから出て来てはいない。今となっては、その位置からでは少女の事を捕まえるのは難しいとしか思えないが、完全にワームホールから出て来れない理由があるのかもしれない。
「そこな娘は父の仇でありんすぇ?そシて、その手に父の魂すら握っておるんどす。それを取り返シて、父の悲願を達成するのが、娘とシての役目でありんシょう?」
「へぇ、神殺したぁやるな、おめぇ」
「そシて……それ以前に……そいつは餌でありんす。だから喰わせてもらうとシんシょうなぁ!」
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