第38話 ニチリンヲマトイシモノ
「ッ!?アテナッ!!」
「アテナ、アテナッ!しっかりして、何があったの?」
「うっ……うぅぅ」
少女は
アテナはその身体に特に外傷はなさそうだったので、少女はアテナを抱きかかえるとベッドに仰向けの状態で寝かせ、ヘラに向かって声を掛ける事にした。
当たり前だがそれは、ヘラから授かった
「ヘラ叔母様、ヘラ叔母様、聞こえますか?」
「どうしたのだわ?」
「今は少し忙しいから、簡潔に話して欲しいのだわ?」
「ヘラ叔母様、アテナが、アテナが大変なんです!」
「アテナ?今、目を開くから少し待つのだわ」
少女の呼び掛けに反応したヘラは少女の額に第3の瞳を開眼させ、指示した方を見るように伝えていた。まぁ、目だけでは見たいものが見れないので仕方ない。
そこは2人の共同作業が必要になるのだ。
「何者かがそこに侵入した形跡があるのだわ。恐らくアテナはそこで返り討ちにあった感じなのだわ?」
「アテナは無事なんですかッ!?アテナはどうすれば?」
「放っておけばその内回復するのだわ」
「アテクシ達、オリュンポスの
「アテナも見たところ、
「何かあったら、
「分かりました。ありがとうございます、ヘラ叔母様」
少女はベッドの上で苦しそうに
一方で少女は、ヘラが言った「別の意味」は完全に聞き逃していた。それくらいアテナのコトで頭が一杯一杯だった。
「アテナ、一体何が起きたっていうの……」
「またアタシに、あの笑顔を見せてよ……」
翌朝、少女はアテナの傍らで目を覚ました。アテナの顔は見付けたばかりの時みたいに
少女は昼まで待って、アテナが目覚めないようなら調査に乗り出す事を心に決めた。アテナがこの部屋で襲われたなら、それはこの部屋を使っていた少女を狙った者の犯行であると思えたからだった。
「アテナに酷い事をしたヤツを見つけて、叩きのめしてやるんだからッ!もう、ギッタンギッタンのけちょんけちょんの刑ね」
「アテナ…早く起きてよぉ」
少女は未だに目を覚ますことのないアテナを見詰めていた。その寝顔は安らかで美しく、とても穏やかで普段のアテナが見せているのとは、まるで違った一面のようにも思えていた。
少女はいつしか、うたた寝をしていた。その中で夢を見ていた。
微かに覚えている夢の記憶の中に映っているのは、見覚えのある「誰か」だった。
そしてその「誰か」は少女の事を恨めしそうに見ながら叫んでいた。
「お前さえ、いなければッ!」と。
「はッ!」
「夢……か。アタシいつの間にか寝ちゃってたのね。そうだ、時間!入って来る陽射しがだいぶ高い。アテナの様子は……」
「ほっ。良かった、穏やかなままね。あぁうん、良くないわね」
“行くのか?”
「えぇ、アテナは必ずアタシが治してみせる」
“それならば、東に向かってみるといい”
「東?東に敵がいるの?」
“それは分からない。だが、可能性の話しだ”
アテナは先程までと変わらず、穏やかな寝息を立ててベッドの中にいた。少女はアテナに異常が無く安堵したが、うたた寝をしてしまった事で時間がある程度経ってしまった事から、当初考えていた行動に移す事にしたのだった。
少女はアテナの神殿を後にし、ブーツに火を
少女はバイザーで網を張り空を東に掛けていく。誰かが追い掛けて来るようならソイツが「犯人」である可能性が高いからだ。
そして、誰かが少女の事を追い掛けて来ているのを悟ったのだ。
「誰かがアタシの後を付けて来ているわね?」
「犯人ってコトでいいわよね?」
“それは分からん。だが、必ずしもそうであるとは言えんから熱くなり過ぎるのはオススメしない”
少女は舵を切り、方向を変えていく。そしてそれは後に付いて来ている者も同じだった。
拠って少女の心の中でそれは確信に変わり、見通しのいい場所で迎え撃つ事にしたのである。
「アタシに何か用かしら?」
「汝がここ数日の内に、この地に
向かって来たのは1人の男だ。そんな男は少女に対して紡いでいく。
この男は背が高くヒョロヒョロで
そしてスキンヘッドに茶色の肌……だから
だが、その姿よりも不思議なモノがあった。それは足元にある「車輪」だ。
その「車輪」は光輝を放っており、車輪の中央部―車軸の外側部分に翼を生やしている。そしてそのまま宙に浮かんでいた。
言うなれば、戦闘用馬車の「チャリオット」の人が乗る部分だけで飛んでいるような感じと言えば伝わるだろうか……。
いや、凄く伝わり
「アンタが、アテナに酷い事をしたのね?」
「「アテナ」とは何ぞや?拙者は密偵より聞いた出で立ちの汝を見つけた為、追い掛けただけである」
少女はあからさまに怪しい男に向け、敵意と殺意を放ち、手に力を込めていた。そして、猛然とその男へ向かって特攻を仕掛けていた。
要は熱くなっていたのだ。むしろ
だが男が紡いだその言葉を聞き届けた少女はその男の眼前で……、ギリギリのところで手に込めた力を解いたのだ。
それはもう既のところであり、拳が放つ風だけがその男に直撃していた。もしもスキンヘッドでなければ髪の毛が揺れていた事だろう。
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