オ-ロラ姫

あのね!

第1話⁂シンとシュウ⁂


 🔥火のように赤い夕日がふもとへ落ちて


 山々が真っ赤に燃えている🌋

 

 ……と、その時夕暮れの雲間から


 光のシャワーがさんさんと降り注ぎ、何とも神々しい


 やがて、マリ-ゴ-ルド色の夕日がダイヤモンドの光を放ち

 

 後光が差したようにキラキラ光輝き✨💫

 

 かなめの頂上は、天然石を磨いたように美しい

  


    ******

 

 その山々を駆け回る、仲の良い坊やたち。


「ワッハッハー」


「ハハ ハッハッハ~」


「今日は木の芽が採れたな~」


「良かったな~」


 ◆▽

 今から100年以上も前の話である。

 シンとシュウという、とても仲の良い男の子たちがいた。


「オイ!シン向こうの山まで競争だ!」


「あぁ~いいよ!シュウ」


「ハア ハア結構大変だな~!オイ!いつもの様に分かったな?」


「ウ ウン分かっているよ」


 実は…シンとシュウは友達と言っても、そこには使用人の息子と仕事を束ねている親方の息子という大きな差があった。


 とっても仲の良い友達だが、シンは高等小学1年生からシュウの家に住み込みのお手伝い補助として働いていた。


 その為、シンとシュウは村に有る唯一の高等小学校に一緒に通っている。

 その時にシュウは必ず家に有るリヤカーを、シンに引きずって行くようにと言い付けている。

 一体何故?


 それはシュウが疲れて来ると、そのリヤカーに乗りシンに引っ張らせる。そういう目的があったからなのだ。


 本当に酷い話。これでは友達ではなく完全に支配者と奴隷と言っても過言ではない。


 リヤカ-に素早く飛び乗るシュウ。


「オイ!引っ張れ!もっともっと早く早く遅いぞ————ッ!」


 ◆▽


 中国の内陸部の生活は現在でも悲惨な状況だが、昔は想像を絶する貧困にあえいでいた。

 そんな中、シュウの家はこの村一番の金持ち(村長・むらおさ)。

 更にはこの村の収入源である材木店を営んでいた。


 一方シンの家族は貧乏で、父親はシュウの家の従業員。

 だが、こんな村の材木店の稼ぎなど、たかが知れている。


 いよいよ学童期になったが、シンは家が貧乏で学校に行く余裕がない。

 可哀想なことに、まだ6歳だと言うのに近所にある牧場でヤギの世話係として働き出している。


 そんな時にシュウの計らいで、シュウの家の家事手伝いをして残りの時間で学校に通わせて貰える事になった。

 シンは元々本を読む事が大好きな男の子、嬉しくて嬉しくて仕方がない。


 こうしてシンとシュウの学園生活は始まった。

 

 ◆

 時は過ぎ、シンは王子様のように美しい、更には成績優秀な少年に成長した。

 一方のシュウは小柄でお世辞にも男前とは言えない、更には成績も今一振るわないとんだ我がまま息子に成長した。


「オイ!分かったな?これやっておけ!」

 ノ-トを出して机の上に放り投げて指示を出している。


「シュウダメだよ?自分でやらなくては?」


「偉そうにそんな事言えた義理か?……ハッ💢」

 

 最近は益々シュウの支配力が、度を越してきている。

 こんないびつな、歪んだ友達関係に、取り返しの付かないヒビが入る。


 

 ◆▽

 ある寒い冬の夜の事、シンが家の後片付けをしてゴミを捨てに外の焼却炉に出ると、誰かが外でうずくまっているではないか?

 どうしたのかと思い話しかけてみた。


「君、大丈夫かい?一体どうしたんだね?」


 すると、何とも美しい少女が、夜空に幻想的な光の帯、揺れる光のカーテン、まさに、オ-ロラが幾重にも折り重なった様な、何とも幻想的で美しい、ひらひらとしたエメラルドグリ―ンのワンピ-スと、白にオレンジ色の花かんむりを被り、おとぎ話の絵本から飛び出して来たお姫様のような出で立ちで、ス-っと立ち上がった。


 ワ~美しい少女、これは一体……僕は……僕は夢でも見ているのでは?

 そう思ったが、こんな夜に可笑しいと思い訪ねてみた。


「一体どうしたんだね?」


「私は……私は……お供の者と一緒に馬車で中国の北京を目指していましたが、はぐれてしまったのです。どうかお助け下さい!」


「そっそれでも?……僕はこの家の使用人……今日は僕の家が直ぐ近くに有るから、そこで泊ってくれるかい?僕の家は貧乏だから君のようなお嬢様には、耐えがたいとは思うが?」


「そんな事関係ありません。今夜泊めて頂ければ宜しいのです」


 この謎の少女は一体何者なのか?

 ◆▽


 美しい自然の花々が、咲き誇り。


「ウッフッフッフ~!」


「アッハッハ~!」


「本当に、この草原の花々は綺麗だね!」


 シンは束の間の休日を取って、あの晩の謎の美しい少女と草原にやって来て何やら話し合っている。


「一体あの晩何が起こったのか、まったく分からない?」


「オ-ロラは、中国の北京に行くつもりだったんだろ?」


「そうだけど、その後……?あの晩の事は全く分からない?どこかに落ちたと思ったのだけれど?凄い衝撃を受けて目を覚ましたら、あの家の前だったのです」


 


 2人は早速、農村の至る所に張り紙をして、オ-ロラを知る人物を探している。

 そして…警察にも捜索願いを出した。


 

 そんな2人の怪しげな行動に、いち早く気付いたのは誰あろうシュウ。


「嗚呼!あぁ~!何と美しい少女!」


 この恋の行方は………。



【中国では、都市部と内陸部の格差の象徴となっている「戸籍制度」がある。農村戸籍所有者は、都市戸籍所有者と同等の処遇を受けることができない。

それには次のような政府側の事情がある。

■ 都心部へ人口集中の懸念、また 都市部の失業率上昇、治安悪化などの理由から、農村部から都市部への労働力移入を制限している】


つづき

















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