【ショートショート】梱包された物語

雨木 志幸(あまぎ しこう)

一箱目 ハシブトの警鐘

俺ね“カラス”って生き物がどうも嫌いなんです。ほらアイツらって日本ではゴミ捨て場を荒らしたりする嫌われ者でしょ?


それが直接嫌いな理由かって言われたら違いますけど...。アイツらの目をみるとすごくやな気分になるんですよ。


「お前には俺たちみたいな立派な翼もないし、何処にも飛んでいけそうにないな」

なんて声が聞こえてくるみたいで。


そりゃもう、嫌で嫌で。


忙しい仕事がようやく終わって、屋上にタバコを吸いに行ったときだって手摺に止まってるアイツらに毎回のように会うもんだから、余計に嫌なんですよ。


あの日も仕事が忙しくて、一服しに屋上に向かってたんです。そしたら階段を一段ずつ登ってる時にアイツらがギャアギャア言ってる声が聞こえて...

イライラしてた俺はその場に立ち止まって


「そんなに飛びたきゃどこにだって飛んでいけばいい!」

って大声で怒鳴ってやったんです。



屋上に誰がいたのかも知らずに。




あぁ、なんで俺、あんなこと言ってしまったんだろな...

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