第16話 クラスメートの訓練開始
俺の名前は長谷川浩一。
休み時間に、突然クラスメートたちと異世界に召喚されたらしい男だ。
召喚をした人たちの説明によると、俺たちクラスメートが勇者とその仲間であり、最近に衝突が増えてきた魔人への対抗戦力として召喚されたらしい。
そして今シスターたちが、クラスメートがどのような力を持っているのかを検査するために『鑑定水石』という水晶みたいな石を準備しているようだった。
それは、遠目で見ただけでも透き通った水色をしていて美しかった。
やがて準備が整ったのか、俺たちは一列に並ぶよう言われた。
そのときに、並び順は特に指定が無かったので、とりあえず背の順で並ぶことにしようとなった。
背の順だと176cmの俺は割と後ろの方だ。
ちなみにクラスで一番背が低いのは林で、さっそく鑑定を受けていた。
鑑定を終えた林は俺の元に来て次のように告げた。
・土属性の適正があること。
・MPのステータスが高いらしいこと。
・その他のステータスは低く、魔導士となるだろうこと。
・土属性は攻撃性能があまり高くなく、防御性能が高い属性であることで、味方の防御に貢献しようと思っていること。
あまり運動が得意でない林らしいと感じながら順を待つ。
しばらくするとシスターたちにどよめきが起こった。
見てみると森の番だった。
「このステータスとスキルは勇者様だ! 別室で丁寧にもてなすのじゃ!」
そして森はシスターとニノマエに連れられて別室へと連れていかれた。
連れていかれる森の後ろ姿はいつもとは少し違う気がした。
勇者が出たからか、その後は少し雑になっている気がする。
先ほどとは比べものにならないほど早くに俺の番になった。
「それでは次の方どうぞ」
素っ気ない声で、残っているホヅミが言う。
俺は言われるままに鑑定水石に手を置く。
するとそこには『全属性適正』『全ステータス中』の表示があった。
「にぇ!?」「は?」
俺と揃って声をあげたあとに、ホヅミは俺にその場で待つよう指示してどこかに走っていってしまった。
突然の出来事に理解が追い付いていないが、あんなに慌てるということは勇者並みの結果だったのだろうかという憶測が頭をよぎる。
しばらくするとホヅミがシスターを連れて戻ってきた。
そして未だに表示されている鑑定水石の結果を見て驚いているようだった。
「これは… ステータスだけ見れば勇者様を超えてはいないが、勇者様でも三属性適正だったのに全属性適正とは… 勇者様に匹敵する結果じゃ… もしやすると勇者様は1人ではないのやもしれんな」
「これは国王様に報告するべきでは?」
「そうじゃな。ホヅミ、後は任せるぞ」
そう言うとシスターはどこかに行ってしまった。
残りのクラスメートの鑑定はホヅミ・ツナシ・イチジクがささっと片付けた。
その後一人一人に部屋が与えられ、その日を過ごした。
そうして異世界転移1日目は終わった。
翌朝、名前を知らない人に起こされた。
メイド服っぽい服を着ているから、そういう仕事をしている人だとは理解できた。
朝食が運びこまれ、食べ終えたら昨日の広間に来るよう告げられた。
食事はパンらしきものとスープっぽい汁物と水で、旨いとも不味いとも感じなかった。
食べ終えて広間に向かうと数人の姿は見えたが、まだ来ていないものが大半のようだった。
しばらくして全員が揃う。
すると、そこにいたメイドの1人がどこかに走っていった。
誰かを呼びに行ったのだろうか?
やがて戻ってきたかと思うと全員外に出るように言われ、俺たちは誘導されて外に出る。
外には4人の姿があった。
右から、本を片手にどっしりと構えている筋肉隆々の背の高いロン毛の男性。
いかにもやる気が無さげな無精髭を生やし髪がボサボサな男性。
緑のローブを着て帯剣しており、無い胸を張っている小柄なエルフ耳の女性。
フルプレートに身を包み、もじもじしながら杖を持っている人。
「皆様、こちらに来ていただいたのは冒険者ギルドのギルドマスターたちです。魔法系の方2名と近接系の方2名に皆様を鍛えてもらいます。ギルドマスターは元上位の冒険者ですので実力は確かです。」
シスターがそう説明し、自己紹介に移った。
「俺は火の魔法使いをしていたヴェルメっていうもんだ。今から漢になれる訓練をするからしっかりついてこいよ!」
「あ~ 俺は剣士をしていたものだ。名前はカカロだ。まぁ金貰って呼ばれて来たからにはやるからよろしく。」
「ん。私はシシィ。剣士。よろしく。」
「ニコラです。鎧については言及しないで下さい…」
とまぁ、個性が感じられる。
そしてそれぞれのステータス、魔法適正にあわせて担当に振り分けられる。
結果、俺の担当はカカロさんとなった。
ちなみに林はヴェルメさん、森はシシィさんの担当になっているようだ。
聞けば、カカロさんは剣を2本手に持ち、風魔法を補助的に使う剣士として活動していたそうだ。
さっそく訓練に入るそうだが、カカロさんはまず魔力の認知から行うのだと言う。
カカロさんが言うには、剣だけで戦闘は熟練者でもよほど実力がない限り無理があるという。
振り分けられたクラスメートは属性もバラバラだが、魔力の認知自体は仕方に変わりはないようで、カカロさんの指示にしたがってみると何となくだがそれらしき存在を認知できた。
クラスメートたちには、できて喜んでいるものもいれば、なかなかできず明らかにテンションが下がっているものも見受けられた。
全員が魔力を認知すると、カカロさんが魔法を補助的に使うとはどういうことかを実践してくれるようで、近くの森に移動することになった。
森に着くと、そこには魔物がいるらしく、いつ対峙してもいいようにカカロさんは無属性魔法の1つの収納魔法で剣を取り出した。
森をしばらく進むとふとカカロさんが立ち止まる。
近くに『マリティムス』という魔物がいるらしく、静かにするように俺たちに告げた。
しばらくゆっくり進むと魔物が見えてきた。
その姿は5M近くある熊のようで頭部には大きな角と、腕にはブレードのような刺があった。
カカロさんは、クラスメートたちを近くに集めると、これから討伐すると言った。
カカロさんは剣を両手に駆け出し、魔物に接近する。
魔物もカカロさんの存在に気付いたようで咆哮をあげ、カカロさんめがけて突進する。
その距離はぐんぐん縮まり、あわやぶつかると思われた時、カカロさんの体がふっと浮き上がり、突進を躱しつつ剣を真下に向ける。
すると、真下に向けられた剣は、反応しきれずに突進する魔物の背をその勢いで切る。
切られた魔物はその痛みでふらつき、木に衝突し、気を失っているようだった。
「す、すげー」「人は見た目によらないって本当ね…」
その光景を見たクラスメートたちは口々に呟いている。
魔物が気を失っている間にトドメをさしてカカロさんは俺たちのもとに戻ってきた。
「とまぁ、こんな感じだ。今のは風魔法だが、火魔法や水魔法でもその勢いで似たようなことができる。火魔法ならそのまま火に突進させれば火傷を負わせることも追加で考えれるし、水魔法なら氷の壁を作ればそのまま衝突して気絶するかもしれない。近接戦闘で大事なのは魔法の威力より魔法の使い方だ。わかったなら明日から練習な。」
「「はい。」」
クラスメートたちの目には尊敬や憧れがあらわれていた。
【マリティムス(熊のような魔物)】
話中ではカカロによって討伐された。主に森林に生息しており、その姿は3m~7mと大きく、頭部に大きな角を、腕部にはブレードのような刺が生えている。
雑食性であり、基本なんでも食べる。森林内の食料が減ると人里を襲うこともあり、認知度も高い種である。
身体能力は高いが、知能はあまり高くない。そのためRANK制では3から討伐依頼が受けれる。
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