第9話 天野さんと僕とデート?


風呂の事件が起きてからというもののなんだか天野さんとの距離が縮まった気がする。


というのも食事中に天野さんから話しかけてきたり、学校での会話が増えたのだ。


関係を疑われるようなことは避けていた天野さんが急に変わって話しかけてくるようになったのは嬉しかったが、それよりも驚いた。


実際、周りの目から向けられるも変わったものになっている。


なんなら付き合っているのではないかという噂までたちはじめているという。


そしてある日、家だというのにも関わらず、外に遊びにいくかのようなオシャレな服装を天野さんがしているのを見たので、不思議に思っていた時、天野さんから声をかけられた。



「ねぇ、その··· 松下くん。もうすぐこの世界とはお別れだし、どこか行かない?」


「そうか… もうすぐなのか」


「そうよ。明日にはいけるんじゃないかしら?」


「・・・」


僕はもうすぐこの世界とはお別れらしい。わかっていたことだけど、何か寂しい。


そういえば世界の名前って何だろうな。


どんなところなのだろうか?


「天野さん、そういえば異世界ってどんなところなんです? 名前すら聞いてないんですけど」


「ん? 言ってなかったかしら? 名前はヴァルナヘイル。ちなみに地球がある世界はエデンと呼ばれているわ。どんなところかは、分かりやすく言うとこの世界の異世界系ラノベみたいな世界よ」


「へー 地球の異世界系ラノベって言ったらエルフとかドワーフとかだから案外ヴァルナヘイルにもいたりして、なん──


「ええ。居るわよ。今松下くんが思ってるような亜人が居るわよ」


──ということは猫耳獣人とか、竜人とか、紫髪ツインドリルですわ口調お嬢様とかもいたりするの?」


「流石に、そんなお嬢様はいるかはわからないけど身分制とか亜人の存在は確かよ」



想像してたよりも数倍ラノベしてる。


ラノベだと現代知識無双とか、現代料理無双とか、現代兵器無双とか、何かと無双してるけど僕でもなにか出来るかな? と天野さんの提案を忘れて思考を巡らせていた。



「けっこう時間あったし、どこに行きたいか考えれたわよね?」


「!」


マズイ。


考えていない。


こういうときはとりあえ遊園地!


「そ、それじゃあ、USJ (Universal stadium Japan)とかどう?」


「良いわね。行きましょう!」



僕はそう言って微笑んでいる天野さんの手を引いた。


そして2人でバイクに乗った。


天野さんは手を僕の肩にのせていた。


天野さんとバイクでUSJに向かう。


それは、デートに行くカップルのように感じられて、なんだか嬉しかった。



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「久しぶりに来たけど、相変わらず混んでるなぁ」



「···ここまで混んでるとは思ってなかったわ」


僕と天野さんは今、USJに来ているが、入り口では人がひしめきあっていた。


こりじゃあチケット買うのも一苦労だな···


「せっかく来たのに、これじゃあ色んな所を回れないじゃない!」


そう頬を膨らませてプリプリ怒る天野さんも久しぶりに見たけど可愛い。


「な、なによ!」


「ふっ、なんでもないよ。天野さん」


「いーや! 絶対なんか考えてたでしょ!」


「教えな~い」


そんな他愛もないやりとりをしているとチケット順が回ってきたようだ。


「高校生チケット2人分お願いします」


「はい。ちなみにお二人は付き合ってたりしますか? 今、カップル割りというのをしているのですがいかがなさい──


「はい。それをお願いします」


隣で天野さんが少し赤くなっているが気にしない。


お金は大事だもの。


こうしてチケット2人分を買い、入場すると天野さんが赤い顔のまま言ってきた。


「ちょっと松下くん! 私達は付き合ってないのに何でウソつくのよ!」


「ん? だって割引できたならその分のお金を中で使えるし、それに僕は天野さんと付き合いたいんだよ?」


「そりゃそうだけど··· 先に言ってくれれば構えれたのに」


シュ~って音が聞こえてきそうなくらいに天野川さんは更に顔を赤らめた。


入ったはいいものの僕と天野さんは落ち着くまで入り口付近で休むことになった。



天野さんが落ち着くまで結局10分かかった。


「それじゃあ行こう! 天野さん!」


「···バカ」


「? 何か言った?」


「何もないわよ! さぁ! 行きましょ、松下くん」



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ギャアアアアアアアアアアア


ジェットコースターとか無理!


初めて乗ったけど何あれ!?


体はフワッとするし、体の中がずり上がった感覚はするし、高いし、速いし、落ちるしでムリムリムリムリ。


天野さんはケロっとしてるけど僕はダメでした。


「あ~! あれ乗ろう! 蜘蛛男!」


「えっ··· ちょっと待って、天野さぁ~ん」


有無を言わさず連れ回された。



「そろそろ昼にしましょ」


連れ回されて疲れている僕には朗報だった。


「天野さん、是非そうしましょう!」


そうして食事処に着いた。


天野さんは可愛い黄色い生き物をモチーフにしたパフェとオムライスを注文し、僕は恐竜世界をモチーフにしたワイルドな肉料理を注文した。


が、1つだけ誤算があった。


カップル割引が利用できると言うのでお願いしたところ、大きな1皿にオムライスと肉料理、2人前のパフェが1つの器に入って出てきたのだ。


「···なんでこうなったのよ。付き合ってるみたいじゃない!」


「···すみません。注意書も何もなかったのでお得な方を選んだらこうなりました…」


「なってしまったのは仕方ないから··· それに…その…」


「ん?」


「なんでもない! さ、食べましょ!」



僕は天野さんが言いかけたことが気になったが、せっかく天野さんと食事ができるというのだから、そのような些細なことは言及せずに、2人で食事を楽しんだ。



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俺は林とかダチ達に連れられてUSJに来ている。


多分、天野さんにフラれたの俺の傷心旅行みたいなもんだろう。


結構USJに行ったことはあるが、今日は何か嫌な予感がする。


───暫くして昼飯時


ん? あれは天野さんと…誰だ? クラスにいたような気はするが…


あっ! 思い出した松下陽仁だ!


でもなんであいつが天野さんと2人で、しかも1皿に盛られた料理を一緒に食べてるんだよ!?


もしかして悪い予感ってこれか!?


ダチ達も俺が気付いたことに気付いたようで顔を青くして、そろそろ移動しようと言った。


俺はどうしてもその光景を忘れられなかった。



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「楽しかったわね、松下くん。最後の思い出は出来たかしら?」


「うん。そりゃもちろん!」


「ふふっ。良かったぁ」


そうして家に帰ろうとしたとき、長谷川と

出くわしてしまった。


「え!? なんでここに長谷川くんが!?」


「それはこっちのセリフだ!? なんで、なんで天野さん、どうして松下と一緒にいるんだよ! 俺をフッたのは既に付き合ってたからなのか? どうしてなんだよ!?」


僕が長谷川の立場なら同じことを言ってしまうような気がする。


けれども天野さんは


「私が松下くんならって思えたからよ。貴方は器ではないもの。」


ばっさり切り捨てた。


それと僕は以前聞いたから知っているが、天野さんは多分、魂の器の大きさのことを言ってるのだろう。


けれども意味そのままで捉えるとかなり辛い言葉だろう。


実際、長谷川はかなりショックを受けたようだった。


「そいつのどこが! どこがいいんだよぉ!」


そう叫びながら長谷川は走り去っていった。可哀想だ


「···バレちゃったけど良いの?」


「どうせ明日には私達が存在した記憶は失われるのよ。まぁ今日までバレなければ良かったのよ。彼の傷心もなかったことになるし… それにこんな日に知り合いがいそうな場所の提案を受け入れたのは私なのよ。まぁ彼には悪い気もするのは確かだけども…」


「···それじゃあ帰ろうか、天野さん」


少し気まずい雰囲気だったが、僕がバイクに股がると


「えぇ。そうね。帰りましょう」


そう言って手を、行きは肩だったのに僕の腰に回してくれた。


フワッと漂ってくる香り。


天野さんの肌の温もり。


柔らかな感触。


えっ!? 天野さんが腰に…手を…?


僕は嬉しさと驚きではち切れそうだった。


「何ぼーってしてるのよ。ほら! 帰るわよ、の家に!」


「···ありがとう。天野さん」


僕はそう言ってバイクを家へと走らせた。


地球生活最後の日、色々あったけど、今日の日は忘れようがないくらいに濃かった。


天野さんに告白してから、僕の生活が鮮やかとなった。


ヴァルナヘイルでもきっと上手くやっていける。


そんな自信が溢れてきた。




───────────────────



というわけで、1章終わりです。


申し訳ありませんが、『小説家になろう』版の二章が完結するまで投稿を中断します。誤字脱字などの修正、加筆は行っていきますので、再開まで気長に待って貰えると幸いです。

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