知り合いの怪獣が、わたしに可愛く手を振ってるんですけど。
五木史人
1話 怪獣 vs ヒロイン系大型宇宙人
わたしの宇宙人時代の知り合いの怪獣が、わたしに手を振っている。
それもとても可愛く。
今、奴は地球上で、ヒーロー系の大型宇宙人と乱闘中だと言うのに。
ヒーロー系と言うかヒロイン系大型宇宙人と言った方が良いかも。
セーラー服の様な服を着ているから、多分女子だ。
わたしは地球人女子として日本で生きている村仲かおり。
海兵隊のぴっちぴっちの少尉だ。
「少尉、少尉、あの怪獣少尉に手を振ってません?」
さすが天才スナイパー女子、勘が良い。
「そ、そんな訳ないじゃん!」
もちろん前世の記憶があるなんて、言える訳がない!
現在の状況は、地球側はまだ組織的な行動には至っていない。
迅速な海兵隊員としては、一番槍を入れたいところだ。
わたしは天才スナイパー女子を、海兵隊仕様のジムニーに乗せ、地下道に入った。
地下道から上がると、避難する人々をかき分け、適地に向かった。
「すいません!海兵隊です!道を開けてください!」
避難する人も必死なのだが、少しづつ道が開いて行く。
その道の先には、怪獣とヒロイン系大型宇宙人が見えた。
「でかい」
天才スナイパー女子が呟いた。
天才スナイパー女子とは言え身震いしていた。
初めて見るとそうなるよね。
わたしたちは、ヒロイン系大型宇宙人の背後に着いた。
「ここから狙って」
「えっヒロイン系を?こっちの方が味方ぽいけど」
「大丈夫」
何が大丈夫か解らないけど、わたしはそう答えた。そして、
「胃腸に優しい座薬弾を使う!」
「座薬弾って!少尉エロいっすね!」
「エロい?」
わたしは適切な作戦を指示しただけだ。
わたしたちは姿を隠しつつ、狙いを付けた。
座薬弾は、ヒロイン系大型宇宙人のお尻に向かって発射された。
さすが天才スナイパー女子、座薬弾は直撃だ!
ヒロイン系大型宇宙人は慌てて、「なんで地球人が?わたしは味方だよ」的な目で、わたしたちを見た。
そんな、せつない視線に耐えきれず、わたしと天才スナイパーは、直立不動で敬礼をして誤魔化した。
「座薬?」と、ヒロイン系大型宇宙人は、じっとわたしを見つめた。
そして、ヒロイン系大型宇宙人は気づいてしまった。
わたしが宇宙人時代に、親友で百合友だった事を。
あの頃も、座薬と言えばわたしだった。
ヒロイン系大型宇宙人は、ド変態を見る軽蔑した目で、わたしを見下ろした。
「こんな人のいることろで、座薬を撃つなんて!?このド変態が!」って視線だ。
でも、その後ホッと表情が緩み微笑んだ。
それは、わたしが生まれ変わり、地球でちゃんと生きている事に安堵した微笑だろう。
「ありがとう、わたしの親友&百合友」わたしは心の中で感謝した。
そして、わたしが微笑み返すと、ヒロイン系大型宇宙人は、少しだけ頷くと、宇宙に飛び立っていった。座薬を入れ、戦闘どころではなくなったのだ。
「あれ?」って顔した怪獣に、わたしは「早く追えよ」って目で諭した。
怪獣は「うん」と返事をすると、ヒロイン系大型宇宙人の後を追った。
怪獣が、わたしの親友&百合友の速度に追い付く事は、不可能なのだが。
こうして地球に平和が訪れた。
めでたし、めでたし。
「少尉、怪獣に何か指示してませんでした?」
「そ、そんな訳ないじゃん!」
1話・完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます