男:不問=1:1
鉄恨(てっこん)のイゼルヴロク【男1不問1_10分】
【概要】
「お前じゃない、お前じゃない、お前じゃないんだよ!!」
頑丈さが取り柄だった男は、勇者の隣にいられなかった。 そしていま、勇者の正面に立つ。
(人生を賭けた覚悟をポっと出の馬の骨に奪われる悔しさを表現したい方におすすめです)
(渾身の「そうはさせるか」で場をかっさらいたい方にお勧めです)
原作:「鉄恨のイゼルヴロク」https://kakuyomu.jp/works/16817330665771801732
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https://kakuyomu.jp/works/16817139555946031744/episodes/16817139555946036386
◆トビー
勇者に捨てられた青年。本作の9割がトビーのモノローグ。
◇乱入者
「そうはさせるか」と乱入して来る人間。
<以下本文>
◆トビー
お前はいつでも輝いていて、ガキのころから二言目には「トビー、冒険だ!」っつって突き進んでいく。おれはそんなお前の隣にいるのが好きだった。
お前ほどイカした悪戯も思いつかなかったけど、身体だけは人並み外れて頑丈だったから、お前の思いつきには率先して突っ込んでいった。
そうすればお前は誰にも見せないような悪ガキの顔をして喜ぶし、その時だけは、おれはお前と対等でいられる気がした。
女神の泉を見つけたのはおれが先だったんだぜ。女神に呼ばれていたのはお前だったけどな。
世界を救う勇者になれって言われて「トビー、最高の冒険だな!」って振り返ったお前の目が不安に揺れていたから、おれは一緒に行くと言ったんだ。
人並み外れた頑丈さで、おれはお前の
指の何本かは失った。耳の片方はなくなった。左のつま先は潰れて鉄板で補ってた。折れたことのない骨はないし、まともな歯は半分も残っていなかったし、左目はずっと白く濁っていた。
それがなんだ。
それがなんだってんだ。
なんでおれを聖都に置いていった? おれのためになるとでも思ったのか。
おれを置いていく代わりに連れて行った、あの女は誰だ。
いやわかっている。誰なのか、何なのかはわかっている。あの忌々しい女。女神の依代、加護の代行者。
依代と女神の泉で交わったな? お前の剣の輝き、お前が身に纏う光、それがあの女の今の姿か。
その力を得られるから、おれは居なくて大丈夫だと、そういうつもりだったんだろう。何が「今まですまなかった」だ。何が「もう傷つかなくていい」だ。おれの気持ちはどうしてくれる。あそこでおれを放り出して、おれにどうなってほしかったんだ。
なくした指は、耳は、歯は、目は、いったいなんだったんだ。
だからおれは、お前の正面に立ちはだかることにしたんだ。
隣にも、前にもいられないのならいっそ。
「おれは魔王軍四天王が最後のひとり、
◇乱入者
「そうはさせるか!!」
◆トビー
「なんだお前は!?」
◇乱入者
「勇者様が
◆トビー
「邪魔をするな小僧! どこから出てきた!? 弟子? 弟子だと!? 勇者貴様、貴様と言う奴は!! よりによってこんな小僧を隣に!!! くそ! 鬱陶しい小僧だ! 待て勇者、ここは通さん!」
◇乱入者
「とう!」
◆トビー
「ぐっ……、どけ小僧!!」
◇乱入者
「くらえ!」
◆トビー
「ぐはっ! なんだというのだ。おれの、恨みの力が、貴様なんぞに打ち破られるというのか!?」
◇乱入者
「これで! 終わりにする!」(必殺技を構える)
◆トビー
「おのれ、おのれ。勇者と戦うことすら叶わぬというのか。おれを倒すのはお前じゃない、お前じゃない、お前じゃないんだよ!!!」
◇乱入者
「でりゃぁ!」
◆トビー
「(必殺剣を喰らった叫び)」
0:静寂。転換。瀕死のイゼルヴロク
◆トビー
「小僧……おれを倒したのはお前じゃない。おれは魔王様と共に、勇者に破れたのだ。魔王様の命とともに、おれの命も消えるのだ。
おれを、殺したのは、お前じゃない、お前じゃない、お前じゃないんだよ……」
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