暑がりの神様【一人読み10分】
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朗読につき、読み手の性別は問いません。
<以下本文>
むかしむかしの夜は本当に真っ暗で、地上の動物たちも、空の鳥たちも、海の魚たちもほとほと困り果てていました。
赤ん坊イワシが迷子になっていても、お母さんは子どもを見つけることができません。
喉が渇いたイノシシは、木々に頭をぶつけるばかりで泉にたどり着けません。
日暮れまでに帰れなかったカササギは、闇が怖くて降りられず、夜通し飛ばねばなりません。
ところで夜というのは、暑がりの神様が涼をとろうと空をすっぽり黒い布で覆ってお日様を隠してしまうから暗いのでありました。
ある夜。帰れなかったカササギが必死に飛び続けていると、うっかり空にぶつかってしまいました。くちばしが刺さってしまって助けを求めても、誰一人カササギが見えません。
泣きべそをかきながら暴れた拍子にくちばしが抜け、慌ててカササギは巣に飛んで帰りました。
小さな小さな光を頼りに、カササギは帰ることができたのです。
夜空の小さな穴はやがて北の導き星となりました。
生き物たちは夜空に穴をあけることを覚えました。自分の姿や友達の姿を夜の帳に穿ち、夜は少しづつ明るくなっていきました。
困ったのは神様です。光の当たるところがだんだんに暑くなるので、少しづつ少しづつ布をずらして我慢するのですが、いつまでも続く物でもありません。
布に穴をあけないように動物たちへ頼みますが、動物たちは暗くて困ると譲りません。
それなら夜空に灯りを掲げるからと、神様は月をかけました。動物たちは納得しましたが、月は白く眩しくて、なかなかゆっくり寝られません。
神様はだから、少しづつ月を隠すことにしました。
隠したままだと動物たちにばれるので、少しづつ夜の布で覆っては、また少しづつ開いていきます。
そうして、月ができました。
しばらくは穏やかな日が続きましたが、やがて夏がやって来て、暑がりの神様はまた弱ってしまって、泉の鯉に相談に行きました。
岩山の澄んだ水に住む鯉なら、何かいい方法を知っているんじゃないかと思ったのです。
鯉は言いました。何者にも負けない強い尾びれと、五色にかがやく鱗をくれたら、きっと夜空を冷やして見せますと。
神様は喜んで鯉の望みをかなえました。
鯉はさっそうと泳ぎ出し、岩山の滝をぐいぐいと昇っていきました。力強くしなる尾びれは滝の水を叩き、霧に変えていきます。
どこまでも昇る鯉はやがて滝の清水を引き連れて空へ上り、立派な龍となって夜空を駆けました。
こうして夏の間、暑がりの神様は夜空の川に水浴びをして、ゆっくり過ごせるようになったのでした。
めでたし、めでたし。
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