第10話 ゴール


長くて短いような、

苦しい事があったけど、楽し事もあった

2度とないだろう…旅路は今終わりを迎えた。



「この扉を潜ったら……私達は…」


武虎「ええ…この世に戻り、

目を覚ましますね…」



目の前にある大きな瑠璃色の扉を見て

ゴクっと息を呑む。


…やっと…やっと

この世に戻れる…みんなに会えるんだ…


ただ……扉を潜る前に

言わなきゃいけない事がある。


後ろを振り返り、

私達はオーロラさんに向かって、

深く頭を下げ、感謝の言葉を伝えた。



「「オーロラさん今までありがとう

ございました!」」



「オーロラさんがいなかったら、

私っ…この世に戻る事なんて

絶対に出来ませんでした!」


オーロラ「ううんそんな事ないわよ

真澄さんが諦めずに頑張ったから、

ゴールできたのよ。本当に良かったわ

それに…私も真澄さんにお礼が言いたい」


「……へっ…お礼をするような事なんて

私…一度もしてませんよ」


疑問に思い頭を傾げる。


何かしたっけ?迷惑かけるような事しか

していないような…


私の言葉にオーロラさんは

首を横に振り、


オーロラ「真澄さんは気付いていないけど

してくれたわ…ありがとう…

『大切な人達』と連絡を繋げてくれて…

武虎ちゃんに生きるキッカケを与えてくれて」


感謝してもしきれないわと、

小さく呟き、深々とお辞儀をした。

 

同時に…武虎さんも

私に向かって、頭を下げた。



武虎「真澄さん、本当にありがとうございます。私…貴方が居なかったら、

生き返る事なんてできなかった」


「武虎さん…私の方こそ、

一緒に協力してくれて

ありがとうございます!

この世に戻ったら、絶対に会って

お茶しましょう!」



武虎「ええっ勿論ですとも!

それと…オーロラ先輩

18年間…私を見捨てずに守ってくれて

…励ましてくれて…ありがとうございます」


オーロラ「武虎ちゃん…

そんなっ…私は側にいただけで…

…でも…」


オーロラさんは、嬉しそうに笑みを浮かべ、

武虎さんを優しく抱きしめた。



オーロラ「幸せになるのよ。またすぐにあの世に戻ってきたら、怒るからね!約束よ」


武虎「はっはい…はい……っ……

オーロラせんぱぁい…うぇぇん…」



…2人の姿を見て…なんだか、私も泣きそう…

オーロラさんとは、ここでお別れなんだよね。


もう2度と会う事もないんだよね…


「………」


ボロ ボロ ボロ


私の涙腺も崩壊した。



オーロラ「えっ…2人とも…

泣かないでよっ…もう…

笑顔で見送る予定だったのに…

ぅぅっ……グスッ 」



結局…3人とも大泣きして、

お互いに握手したり、抱きしめたりと

…ちょっとしたお別れ会になった。




……………………………………………………



…………………………………………



………………………………



……………………………




オーロラ「じゃあ2人とも!

気をつけてね」


ブンブンと大きく手を振る

彼女に手を振りかえす。


武虎「オーロラ先輩…」


武虎さんは手を振り返さないで、

大きな声でこう叫んだ。


武虎「私達と同じ時代に転生したらっ

もう一度、会いましょう!!」


「……!!」


……そっか…

オーロラさん自身が言っていた。

転生試練が受かって

後は生まれ変わるだけって…


……きっと、時期とタイミグが

良ければ、転生したオーロラさんに

会えるかもしれない!


「オーロラさん!私達は一足先に

この世に戻ります!貴方のこと

お菓子を準備して待ってます!」



オーロラ「武虎ちゃん…真澄さん…

…ありがとう…また、この世で会おうね!」


…顔に涙跡を残しながらも

笑顔で見送るオーロラさんに、

もう一度大きく手を振りかえして、

扉の方に振り向いた。


すると…

扉はギギギと音を出しながら開き、

パァァと白い光が放ち出した。



「戻りましょう!武虎さん…この世へ」


武虎「はい!18年振りにみんなに

会えるんだ…元気かな…」



お互いに手を取り、

扉の中へ歩き出した。


温かくて優しい光…


扉の中は薄い水色で

波のような音が…聞こえる…


心地が良…い


……………………


……あれ…なんだか

眠たく…なってきたような…



クラッ……バタン…



ここで私の意識はプツリと

切れてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る