第9話 ゴールの手前③


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3人からの手紙を読み終わり、

便箋を折りたたみ封筒の中に閉まった。


そう言えば、オーロラさんと武虎さんは…

どうなんだろう。


気になって、ちらっと

先にオーロラさん方から見た。


オーロラさんは…


「そうなの…良かった…良かった

2人とも幸せになって…ふふっ」


うっすら涙を浮かべ、

幸せそうに微笑んでいた。


そんな姿を見て、私もつられて笑みを

浮かべる。


彼女にとって嬉しい事が

書かれていたんだね。


彼女の送り先は、

シルク魔王とシリンヌ王子。


亡くなってもなお、

2人の様子を気にかけるなんて

忠誠心が立派だな。私も見習わないと。



うんうんと頷きながら、

続けて武虎さんの方を見た。



武虎さんは…


武虎「……これは本当なの……」


呆然と立ち尽くし、

手に持っていた便箋を落としていた。


……どうしたんだろう…

手紙の内容が良くないんだろうか。



ひらひらと地面に向かって

舞い落ちる便箋。

 

便箋は私の足元に止まった。


便箋を拾い上げ

武虎さんの元へ駆け寄り…


「武虎さんっ便箋を…どう…ぞ……」


手渡そうとした時、

武虎さんの姿に違和感を感じた。


さっきまで無かったものが、

彼女にあったんだから。



「武虎さん…貴方…『影』がありますよ…

地面っ地面を見てください!」


武虎「……えっ…私は…もう死んでいる

……!!……」



武虎さんは視線を下にずらと、

自身に影がある事に気づき、

目を見開き驚愕した。



武虎「……影が…ある……

この便箋に書いている事は…

本当なんですね…焔火国王…」


武虎さんは…ボロボロと涙を流し、

その場にうずくまる。


「たっ武虎さん、大丈夫ですか

ええっと…失礼します!」


私は彼女を落ち着かせようと

背中をさすった。


武虎さんが泣いてしまうなんて…

便箋のの内容は一体どんな事が

書かれていたんだろう。


あと…


私自身と武虎さんの影を

じっと見据えた。


影があると言う事は、

この世で身体が生きている証拠。


扉を潜れば,私と同様に

武虎さんも生き返る事が出来るんだよね。



バタ バタ バタ



オーロラ「2人ともどうしたの⁈

蹲っちゃて調子が悪いの?

大丈夫?!」


私達の様子を見て、

オーロラさんが慌てて駆け寄ってきた。



オーロラ「一体何があった…

…えぇぇぇ武虎ちゃんに影がある!!!」


武虎「……はいっ……グスッ

そうみたいなんです…

私の身体…この世で生きていたんです。

…便箋に書かれてありました。

2人とも見て良いですよ。」


「はいっ…ありがとうございます。

お言葉に甘えて見ますね」

 

拾った便箋を表にひっくり返し、

オーロラさんと2人で便箋の内容を見た。


……えっーとなになに…


国王様と雛美火さんは親子ではない。

叔父と甥の関係だった事。


兄夫婦は幼い頃の雛美火さんに殺され、

既にこの世にいない事。


……武虎の身体はこの世で生き続けた事。


……パンド国王の力を借りて、

魂も生き返るに成功した事。


そして…国王様も武虎さんと

同じ気持ちだった事。



「生き返る事に…成功…」


書かれている内容に驚きだけど…

……こんな奇跡ってあるんだ…



オーロラ「武虎ちゃん!良かったじゃない

真澄さんと一緒にこの扉を潜れば

生き返る事が出来るわよ」


武虎「…っ…はい はい…まさか

私もこの世に戻れるなんて…

焔火国王、櫻海さんや檸門さん達にも

…会えるっ」


嬉しい…とボロボロと涙ぐむ

武虎さんに私も嬉し涙が…


うぅぅ本当に良かった…


ホロリと落ちてくる涙を拭い、

私は武虎さんに手を差し出した。



「武虎さん一緒にこの世に戻りましょう!」


武虎「っ…もちろんです!

真澄さんと一緒に戻りましょう。

この世へっ」



彼女は泣きながらも笑顔で、

私の手を握り返した。

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