間話 武虎の過去物語を聞いて
…………………………………………
……………………
武虎「…雛美火様と出会ったのは
城に働いて1ヶ月の頃で…
いやー…あの頃の雛美火王子は
近寄り難かったですね」
武虎さんは昔を懐かしむように、
ふふっと笑っていた。
彼女の話を聞いた私とオーロラさんは
お互いを抱きしめガタガタと震えていた。
オーロラ「武虎ちゃん…あなた強いわね
…私…貴方と同じ立場だったら
必死に泣きながら命乞いしていわよ」
激しく同感。
私も真っ青な顔でこくこくと頷いた。
私だったら、1分も経たないうちに、
気絶していただろうな…
それにしても…
「あのっ武虎さん、
1つ質問しても良いですか?」
武虎さんの過去を聞いて、
疑問に思った事がある。
武虎「はいっ良いですよ。何でしょうか!」
「じゃ…じゃあ…あの武虎さんは
その頃から男装をしていたんですか?
それには何か理由があるんですか」
オーロラ「そう言えば…牡丹城を働き始めてから既に男装をしていたって…」
武虎「はい…本当はこんな格好…
嫌でしたが…」
彼女は唇をかみしめ…
武虎さんは苦虫を噛んだ顔で、
自分の服装を忌々しく見た。
武虎「………………」
やがて、意を決して重たい口を
開いた。
武虎「焔火様からお願いされたんです。
自分の身を守る為に、男装をして欲しいって…」
「自分の身を守る為に男装を…
もしかして…当時の牡丹城は
女性が働きにくい環境だったんでしょうか」
オーロラ「…お城関係の職場だと…
場所によるのかしら?でも私が働いていた
シラトス城は働いている女性は多くいたわ」
うーん…何でだろ?と首を傾げる
オーロラさん。
武虎「いいえ…」
武虎さんはふるふると首を横に振り、
男装の経緯を話してくれた。
武虎「…2つ理由がありました。
1つは人間嫌いだった雛美火様に
殺される確率を下げる為…
当時の雛美菜様は男性より女性を
多く殺していました。
人間という種族が増えない様にと…
狙っていたんです。女性を…」
「……今の雛美火様から想像し難いですね…」
オーロラ「…ええ真澄さんの話を聞く限り
彼は人間には友好的だって…」
だって…牡丹城で人質にされた時、
出会ってすぐに気遣ってくれて…
優しかったし…
同じ種族の蓬ちゃんにも親切で…
薬草とか小物をプレゼントしていた。
桜貝町の襲撃だって…怪我をした妖怪は
多くいたけど…人間は1人も怪我して、
いなかった。
一体何が、彼の考え方を考えたのだろう。
武虎「出会った当初の雛美火王子は
そんな感じでした。私にまで嬉しそうに
人間を…彼に噛み付く妖怪をたくさん殺したと話していました。
…怖かった…次は私なんじゃないかと
ビクビクしていましたもん私…」
あの頃は危ない状態にいたなー私と、
ふふっと笑う武虎さん。
恐ろしい体験なのに、彼女にとっては、
もう愉快な思い出話になっているんだろう。
メンタルが強いな…
武虎「だけど…ある日突然
雛美火王子はパッタリと人間を
殺さなくなりました。」
オーロラ「え…いきなり
どうして?!」
武虎「…理由が…さっぱり…
突然、私に『人間はもう殺さない。
俺が間違っていた…武虎にも怖い思いをさせてすまない』って…」
「何かキッカケがあったんですかね…
武虎さんその時って何か大きな出来事って
ありましたか」
武虎「えーと…その時たしか…
私が牡丹城で働いて2年ぐらい
15歳の時で…」
武虎さんは、一つずつ思い返すように、
ポツリ ポツリとその時の状況を
語り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます