第4話 ある鬼と従者の物語④※武虎side
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雛美火「今の言葉はお前が言ったのか?」
「…………………」
目の前に雛美火王子が立ちはだかり、
冷たい瞳で私を見下した。
ザザザッ…
気づけば、私の周りにいた妖怪たちは、
1mほど離れて警戒態勢。
自分の身を守る為、
なにかバリアみたいな物を纏っている。
よっぽど妖怪たちにとって、
雛美火王子は恐怖の対象なんだと、
目に見えて分かった。
雛美火「……ちっ…どいつもこいつも…
……人間…お前は『美しい』と言ったか?」
私の背中の衣類を掴み、
至近距離に顔が近づけられる。
「……はっ…はい」
急な出来事で
なんとも情けない声が出てしまった。
美人の真顔ってこわい!
威圧感が半端ない!!
雛美火「……ほう…お前は得体の知らない
人間の癖に…この俺が恐ろしくないと…」
「……………」
恐ろしい…
雛美火王子を見る前は、
冷酷無慈悲で恐ろしいイメージを
持っていた。
でも目の前の雛美火王子は…
恐ろしいと言うより、
悲しいそうに見える…
まるで、誰かに温かさを求めている様な…
構ってほしい気もする。
なんだか、ひとりぼっちなりたての
私と似ているな。
ならっ…
「…恐ろしくないです」
雛美火「…………!!…」
「僕から見た貴方は美しくて綺麗です。
恐ろしいだなんて、これっぽちも
ありません」
正直な気持ちを言葉にして、
安心させる為にニコッと笑顔を見せた。
雛美火「…………っ…何だよ
人間の癖にっ……欲しかった言葉を…
(小声)」
雛美火王子はボソリと何か呟くと
私を掴んでいた衣類をパッと離した。
え…いきなり離したら…
ベシャ!
嫌な予感は的中して、
顔から床にダイブしてしまった。
「~~~っ!!」
痛いっ…オデコを強打したから、
ヒリヒリする…うぅ~
やっぱり撤回!なんて妖怪なの
人の心がない!!
雛美火「……ふはっ…久しぶりに笑えたな」
何ですって!!
何?!私馬鹿にされた感じ?!
怒りたい気持ちを押し殺し、
雛美火様の顔をチラッと見上げたら、
雛美火「本当に…変な…子供…」
雛美火様は笑っていたが、
切なげで今にも泣き出しそうな表情で
私をじっと見て
雛美火「……………………」
やがて顔を背けた。
雛美火「お前の名は「武虎」と言ったな
……気に入った」
ぼそりと私だけ聞こえるぐらいの
大きさで呟いた。
「はっ…はい………へ?」
気に入ったとは…?
ふっと鼻で笑われ、
くるりと周り歩き出し
カツ カツ カツ
すたん!
玉座に座った。
雛美火様の一連の行動に
周りにいた妖怪たちは驚き、
ざわざわと動揺していた。
その後は何事も起きずに、
会議が始まった。
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後から先輩に話を聞いたら、
通常ならば、雛美火様に目を
付けられた人は殺されるそうだ。
だけど、私を殺さなかった事に、
全員、驚いたそうだと…
その話を聞いて、改めてゾッとした。
やっぱり冷酷無慈悲で
恐ろしい妖怪じゃん!!
極力、彼とは関わらない様にしよう!
そう…心に決めた。
だけど…
雛美火「武虎!なにをしている
早く来い!置いていくぞ」
「たっ…ただいま」
雛美火「お前はか弱い人間だから
俺の後ろにいろ!」
「はっはい…」
極力関わらない様に、
努めているのに、
その努力は虚しく、
だんだんと雛美火様との
関わりが増えていった。
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