第3話 オキニスside③

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パンド「では、時間になりましたので、

それぞれの国で決めた『雛美火王子の刑』を

話してください。まずは…」


「……………」


…話を聞くとやはり、多くの国々は

【王位を剥奪した上での処刑】が多かった。


牡丹王国も…


焔火「牡丹王国も…全員…

王位を剥奪した上で処刑を求める

理由はあれど…

雛美火は…多くの者を殺めている…

儂達の力じゃどうする事もできない」


焔火国王は目を瞑り、

唇を噛み締めながら俯いていた。



…焔火国王


自身の息子に対して、刑を決めるだなんて

心苦しいのに…




翠狐「…雛美火王子を野放しにしたのは、

僕らだって責任がある…

死ぬつもりで国一丸となって、

雛美火王子を抑えていれば…」



焔火「何言っているんじゃ!!

国一丸になって止めていたら、

さらに死者が増えていたはずだ!

…牡丹王国は滅亡する


前々から他の国に要請すれば…

力を借りればこんな事には…


雛美火より力が無かったばかりに

…甘やかして育てたせいじゃ…

本当にすまない…頼りない国王で…」


翠狐「……焔火国王…」



知らなかった…牡丹王国では、

雛美火王子が1番力が強いのか…

国王が止められない程に…


…話の内容を聞いて、焔火国王は

なるべく牡丹王国が平和に保てるように、

裏で回っていた事も初めて知った。


焔火「牡丹王国からは以上だ…」



項垂れる焔火国王は

翠狐さんに支えられ、

席についた。



パンド「…牡丹王国も処刑なんですね

てっきり庇って減刑を求めるかと思いました。」


カリカリと巻物に刑をまとめると、

俺たちの方を見た。


パンド「では、最後にクモード王国、

お願いします。」



リール「オキニス、頼むぞ」


「はい、父上」


俺は席から立ち上がると、

クモード王国の皆んなで決めた刑を

説明した。



「俺たちの国は雛美火王子にしっかり

罪を償わせて頂く為、


力を封じこめた上で

200年間シラトス王国の地下牢に収容。

この世の営みを遮断させます。」



俺の説明に一同は響めきだした。


それもそうだろう。


今回はクモード王国が

1番大きな被害が出ているのに、


その国が「処刑を求めない」なんて、

驚くだろう。


案の上…



シリンヌ「オニキスの国はその刑で

良いのか?甘すぎるんじゃ…

雛美火王子は真澄さんに危害を加えたのに」



シルク「…たしかに僕の国の地下牢は

脱出不可で雛美火王子を入れるには

良いかもしれない


だが…君たちはそれで良いのか?

僕は悪い芽はすぐにつむべきだ」


パンド「……僕も直ちに処刑にすべきだと思う。こんなに多くの罪を犯しているのに

生かすなんて、許されるべきじゃない」



反対意見がやはり多かった。


でも…!!


「皆さんの気持ちも分かります。だけど、

しっかりと時間をかけ罪を償うべきです。

その方が精神的にきますし、

雛美火王子の心も変わります。


現に人間嫌いだった彼が、

たった数年で人間を保護するように

なったんですから、

きっと変われるはずです


処刑をしてしまったら、

そこまでじゃないですか。」

 


焔火「……オニキス王子…」




「俺の憶測ですが、

…現に処刑を実行したとして、

心が変わらないままあの世へ…

いえ…『サイハテ』に行ってしまったら、


今度は『サイハテ』が牡丹王国と

同じ状況になると思います。」

 


パンド「……なっ…それは

非常に困るよ!!」


リール「………!!

処刑を反対した理由は

雛美火王子を反省させるだけじゃ

ないのか!」



「…それだけじゃありません。

『サイハテ』には、雛美火王子に

殺された方々がいますので、


もし、生前と同じ状況になったら、

きっと彼らは救われませんし、

最悪の場合、悪霊化すると思います。


全体の観点から考えた上で、

俺達クモード王国は

雛美火王子の処刑を求めません。


以上となります。」


頭を下げ、席に座った。



私情になるが、

俺も真澄も雛美火王子の処刑は

望んでいないからな…


ただ、刑を決めるのは国王達だからな

この先はどうすることもできない。


…どうか、雛美火王子が処刑されず、

ちゃんと生きて罪を償って

くれますように…


そう心の中で呟きながら、

その後の会議を傍聴した。

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