第8話 罠と証明(豆大福)③


翠狐「うん…単刀直入に言うけど

今回の試食会を妨害した人物…

雛美火様だよ」


「……………」


雛美火さん…どうして…


そう口にしたいけど

ショックのあまり言葉が出なかった。


彼女はいつも私を気にかけていくれて、

やさしくて 綺麗で…信頼できる友人…


友人と思っていたのは私だけだったの…?

雛美火さん…私…お菓子しか作れない

役立たずだから鬱陶しかったのかな…

嫌いになったのかな…


裏切られた感覚になり、悲しくなり、

目からボロボロと涙が溢れでた



そんな私の様子を見て、

蓬ちゃんが…


蓬「でっでもお狐様…もしかしたら

雛美火様じゃないかもしれませんよ

ほらっ証拠が無いじゃないですか」


「蓬ちゃんっ……ぐすっ…」


大人気なく泣いている私の為に

雛美火さんを擁護する言葉を

翠狐さんに投げかけたが…


翠狐「……僕も…雛美火様じゃないって

信じたかったさ…でも………

彼女がやった痕跡が見つかったんだ…

証拠もわざと残しているよ


まるで…僕達に宣戦布告を出しているような…」


帰ってきた答えがあまりにも、

残酷だった。




「………っ……」


蓬「………そんな……………」


もう…雛美火さんを擁護する事が

出来なくなってしまい、


私と蓬ちゃんは…黙り込むしかなかった。



翠狐「真澄さん…辛いのは分かるよ

裏切られた感じだよね…


でも、これだけは言わせて…

雛美火様は真澄さんが嫌いで

邪魔している訳じゃない」


「……嫌いじゃない……」


嫌われていないなら…

良かった…


嫌いじゃないと聞けて

重い気持ちが少し軽くなった。


翠狐「ねえ…真澄さんは

クモード王国に戻る為、

和菓子を作っているんだよね」


「…はい、大切な人達に会いたいですから…ただいまって言うために…」


翠狐「…これは真澄さんとっては…

酷かも知れないけど…向こうで待っている人達の為に約束してくれる?」


翠狐さんは真剣な顔つきで

私に約束を取り付けた。



翠狐「…今の話を聞いても雛美火様に対しては普通に接して…それと出来る限り

あまり関わらないようにしてほしい


たとえ…この先、何があっても…

見て見ぬふりをして 誰がどうなっても

クモード王国に戻る事だけ考えて」



……あまりにも…酷だ

約束なんて守りたくない。


でも…でも…そうでもしないと、

クモード王国に戻れない状況なんだね


我儘を言っちゃだめだ

私に協力してくれる仲間のたちの為、

クモード王国の大切な人達の為、

心を鬼にしないと!


「……分かりました……約束します

翠狐様…蓬ちゃん…

最後までよろしくお願いします」


心の中で覚悟を決め、

2人に対して頭を深く下げた。


翠狐「最悪な状況にならないよう

僕、頑張るよ !もし、全部終わったら

また、僕と蓬でこうしてお茶とかどう?」


蓬「良いですね!今度は【洋菓子】を

使ったお茶会とか 翠さんや黒夜ちゃんも

一緒に!」


「翠狐さん…蓬ちゃん……はい!

全部終わったら、是非お茶会を

しましょう ……よーし…」


うじうじするのは もうおしまい!


私は任された事を

集中して頑張ろう!!


なので、ごめんさない雛美火さん

貴方は私に何を求めるているのか

分からないけど…


私は貴方に応える事ができません

どうかお許し下さい


涙を拭って、自分の頬をパチンと叩き、

喝を入れた。




…………………………………………



…………………………………



……………………


……………




あの時の私は、

本当に約束を守るつもりでした。


『たとえ、なにがあっても

見て見ぬ振りをする』と



……もし、あの時の翠狐さんに話せるなら



ごめんなさい、私は

約束を守る事が出来ませんでした。



そして…みんなの前から

突然いなくなる事をお許しください。


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