第8話 罠と証明(豆大福)①



国王「ん?! この量はどういう事か?

儂は昨日、真澄さん達に30人分

用意するよう命じたのだが…」


翠狐さんが会場にいる人数が

少ない事に 驚いているのに対して


国王様も余りの膨大な量の豆大福を見て

驚愕している。


…国王様は人数の件に関して、

何も知らないようだ…


…だとしたら、

一体誰があの紙を用意したのかな?


翠狐「国王様…当日、

用意する人数分の紙を

調理場に置いている事はご存知でしょうか?」


国王「ああ、知っている

儂が家来に命令した事だからな

用意する分を間違えないように…」


翠狐「実は今回その紙に100と書かれていたんですよ あと特別仕様の紙でして

呪いもかけられていました」


国王「なんだと?!」


えっ?!そうなの

呪いかけられているの この紙?!


もう一度 持っている紙を

見たけど、私からしたら

普通の和紙にしか見えない。


何も呪いなんて…


国王「なっ…その紙は…?!」


国王様は私の持っている紙を見ては、

目を見開き…


恐ろしい形相になって…


国王「その紙を持つな!離すんじゃ!!」


ヅカヅカと私に近寄り、

持ってい紙を取り上げられた。


「………ひぇ…な何か…

問題がございましたでしょうか…」


国王「良かった…間に合って

真澄さん…自分の手を見るんじゃ」


…え?……私の手?


おそる おそる、

視線を手に向けると、

両手は少し赤くなっていた


あと少し持っている時間が長かったら

火傷になっていたかもしれない


熱いものを触ったら、

感触で火傷する事が分かって、

すぐ離せるのに…


持っている紙は

全く熱さを感じなかった。


国王「人間と妖精が長く持つと

火傷するんじゃ…

料理人は手が命だからな

……何故この紙が人間の真澄さんの手元に?

妖力が高い妖怪専用なのに…

すまない…今後は家来に指導していく」


「いえ、国王様のお陰で火傷せずに

済みました ありがとうございます」


…もし、あの紙を持ってた時間が

10秒長かったら…


火傷する上に…和菓子作りが

出来なくなる…


和菓子作りが出来なくなると…

クモード王国に戻れない…


考えるだけでゾッとした。


よかった…本当に火傷しなくて…


ほっとして自分の手をさすった。


国王「……しかし…この紙に書かれている

数字は30となっておるぞ…

100なんて……」


翠狐「国王様…今からその件につきまして

証明いたします 」


国王「何?証明だと…?」


翠狐「はいっそうです

…という事で…黒夜!お願い!」


翠狐さんは黒夜ちゃんを呼び、


その呼び掛けに黒夜ちゃんは

母さんの着物のくるぶし部分の裾を

引っ張り国王様の前に母さんを連れ出した。


翠狐「ありがとうね黒夜

緑さん僕を『スマホ』という機械で

写真を撮ってくれるかな?」


緑「!なるほどそういう事ですね

だからスマホを…分かりました 撮ります

はいっチーズ!」



カシャ(写真を撮る音)


母さんは翠狐さんを撮り、

撮った写真を国王様に見せた。


国王「何だこれは?

翠狐が画面の中に……??

いや本人は目の前にいるし…」


初めて見る写真に国王様は

翠狐さんとスマホを交互見て

驚きを隠せない


驚いている国王様を尻目に、

翠狐さんは説明を入れた。


翠狐「凄いでしょ 真澄さんの世界では

その時の風景を写して、それを保存できる

機械があるんです。


こっちの世界だと鏡みたいな物ですね」


国王「鏡で…保存できる…凄いな…

真澄さん達の世界はそんな便利な

物があるのか…」


翠狐「はい…ですので念の為、

お昼頃、人数分の用紙を

このスマホという機械で

写して保存したんですよ

緑さん、国王様に…」


緑「了解、国王様…これが私達が

見た人数分の用紙となります


撮った時間は大体11時ごろになります」


母さんはスッと指でスマホを操作して、

人数分の写真を国王様に見せた。

写真を撮った時間も告げて…


国王「………お主らが言っている事は

本当なのだな…誰かが…和菓子作りを

妨害している」


写真を見た、国王様は落胆して、

私達に向け頭を下げた。



国王「すまない…皆の者、

国の為に和菓子作りをしているのに

この様な仕打ち…あんまりだ…


…よって……」


国王様はお皿の上にある豆大福を

一口囓りこう言った。




国王「豆大福を認める。限られた時間の中、

この膨大な量を作ったのも関わらず、

丁寧に作った事を感謝する


それと認められた和菓子は6つ

残りは4つなるが…

今回、儂ら側に不正があったので


和菓子作り残り【2つ】にする」



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