本編 第3章 後半

第7話 思い出の和菓子(豆大福)①


前回のあらすじ

一昨日、牡丹王国の桜貝町にて観光…

じゃなかった 豆大福の材料を買いに行った。


そして…今日は…


緑「さあ、真澄、蓬ちゃん

時間内に必要な分の豆大福を作るわよ」


黒夜「きゅーきゅ!(頑張れー三人とも!)」


材料が全て揃い、

三人がかりで豆大福を作る事になった。


現在、朝の9時…


15時の試食会までには

まだ6時間もある。

母さんと蓬ちゃんの三人で手分けして

作れば余裕で間に合う!


「うん!さあて…今日はたしか30人分

作れば良かったんだっけ?…」


そう…楽観的に思い、

用意する人数を記載された紙を

ピラッと見たら…思いがけない数字が

書かれていた。


【本日、用意する人数分 100人分】


ひゃっ…100人分?!


国王様も昨日はたしか…


国王「明日の試食会の分は30人分を

作ってくれ その日は外出する者が多くてな

みんな残念がっていた…」


…とか言ってたよね!


どどどどうしよう….材料30人分しか

用意してないよ…



緑「あらっどうしたの真澄?

そんな青い顔して…

大丈夫?調子悪いの?」


「かか母さんどうしよう!!

この紙を見て!!蓬ちゃんも!」


私は持っている紙を慌てて

母さんと蓬ちゃんに見せた。


緑「それって人数が記載されている

紙よね?どれどれ…」


紙を見た2人も、

みるみる青ざめて…


緑「えっ?!30人分じゃなかったけ

100人分?!どう言う事なの?」


蓬「どうしましょう!

材料が足りないです…

それに100人分となると

私達の人数じゃ…間に合うかどうか…」


私と同じように、

慌てて、困り果ててしまった。


「……………………」


…そうだ…材料が足りない

今から買いに行ったとしても

材料があるかどうか……


それに…たった三人で、

100人分の豆大福を完成させる自信がない


……一体、どうしたら…


そう思い、項垂れた瞬間…



黒夜「きゅー…きゅう きゅう!

(…三人とも大丈夫!

僕が今から材料と人手を集めるから、

少し待ってて!)」


黒夜ちゃんが私達に向かって、

鳴き出した。


…えっ、なんて言ってるの?


私と蓬ちゃんは黒夜ちゃんの言葉が

分からず、母さんの顔を見ると…



緑「…黒夜ちゃん……

材料と人手を集めるって…無茶よ…

一体どうやって」


?!


母さんの言葉を聞いてびっくりした

黒夜ちゃんはそんな事言っていたの?


蓬「真澄さん…黒夜ちゃんの言葉

私達じゃ分からないので

ここは一旦、緑さんに任せましょう」


「うんっ…その方がいいね」



私と蓬ちゃんはお互いに頷き、

母さんの声に耳を傾けながら

引き続き2人の会話を聞く。


黒夜「きゅうぅ!きゅうきゅー

(大丈夫!僕に任せて、お狐様にも

協力するから…僕を信じて!!」


緑「…黒夜ちゃん…」


黒夜「きゅう…きゅう きゅう…きゅー!

(それに…豆大福は緑にとって…

思い出の和菓子なんでしょ?

…何があっても絶対に成功させるんだから!)」


緑「……!! なんでその事

黒夜ちゃんが知っているの…?」


黒夜「きゅ…きゅうきゅー!きゅーきゅ

(ごめん…今は言えないけど…

後でちゃんと言うから…

もう時間がない!僕行ってくるね

緑達は待ってて!)」


黒夜ちゃんはくるっと翻し、

タンッと音を立て、

料理場から走りだした。



緑「……黒夜ちゃん…ありがとう


よしっ…私達も黒夜ちゃんが戻ってくるまで

出来る限りの事はしましょう

真澄、蓬ちゃん!」


「分かった!私は 用意された材料分で

母さんと豆大福を作る

蓬ちゃんは人手の確保をお願い」


蓬「了解です!今から

料理長や先輩方に聞いてきます!」


待っているだけじゃ、

時間が勿体無い…


私達もできる事を見つけだし、

作業に取り掛かからないと…


15時の試食会に間に合わない!


私達は死にものぐるいで

それぞれの作業に取り掛かった。


……………………………………………………



………………………………………………



2時間後…



緑「…とりあえず これで30人分の

豆大福は完成ね…」


「うん…後は残り70人分…

材料が来るまで待つしかないね 母さん…」


急ピッチで作業を進めた事により

材料がある分の豆大福が完成した。


1人分に対して、豆大福が2個。

それを30人分となると60個…


……正直、これでもキツかった

本来は3人で余裕を持って、

豆大福を作る予定だったから…


あと70人分作らないといけない…

…となると…70人分×2個で…えーと…

残り…140個……


…エゲツない量…

母さんと私だけじゃ

完全に間に合わない…


でも、今回は大丈夫


蓬ちゃんが助っ人 2人を呼んでくれて、

今ちょうど豆大福の作り方を教えているから



蓬「先輩、生地を餡子に包む際は…」


先輩1「成る程、そういう風に包めば良いのか」


先輩2「豆入りの生地に餡子…

不思議な組み合わせ

どんな風に完成するのか楽しみ」


助っ人の2人は料理人だからか

飲み込みが早い

数十分後には豆大福の作り方を熟知した。


あとは…黒夜ちゃんが、

材料を集めてくれるだけ…


だけど…あの小さな身体で、

一体どうやって…材料集めを…


……心配になってきた


なら、私もっ…


「ねえ母さん 私も……」


材料探しの為、外に出ようと

口に出した瞬間…


バタ バタ バタ…


複数人の足音がした。


ガララッ!(扉を開ける音)



黒夜「きゅーきゅきゅー!!

(お待たせ皆んな! 材料と

助っ人連れてきたよ)」


翠狐「蓬ー!僕も助っ人に来たよ」


扉が開いたとともに、

黒夜ちゃん、翠狐さんが中に入り


呉紅店主「私もお手伝いに参りました

緑さん、真澄さん、蓬さん」


なんと、材料買う為に利用したお店の

店主さんが来てくれた。


3人とも相当な量の荷物を

持っていて…ゼェゼェと息を切らし

急いで材料を集めてくれた事がわかった。


「みなさん ありがとうござます!

こんなにいっぱいの量…

残りの70人分も充分作れます

ささっお三方は休んで下さい

緑茶、お持ちします。」


緑「真澄!緑茶持ってきたよ

3人に渡してね」


「えっ…早い!ありがとう母さん!

じゃあ、持ってくね よいしょっ」


母さんが用意してくれた

お盆を持ち、3人の前に…


音を立てないように湯呑みを置いた。


喉が乾いたのか3人はすぐさま、

ごくごく音を立て

一気に緑茶を飲み干した。


すごい、あの緑茶…

結構 湯気たっていたのに…

熱くないのかな?


黒夜「きゅー…きゅう(ありがとう 真澄

あぁ…生き返る…)」


呉紅店主「緑茶が美味しいですね…」


みんなは全く熱がってる様子はなく

ほー…と落ち着いている。


翠狐「あー…落ち着く……って

ちょっとみんな!!

ゆっくりしてる場合じゃないよ!

豆大福を作らないと


それと真澄さん聞きたい事があるんだ」


翠狐さんがカッと目を開き

バッと私の方を見た。


翠狐「一体、誰が100人分作れなんて

言ったのさ?!」


「えっと…人数分は紙に書かれていて、

その紙はいつも調理場に

置かれているんです

たしか……」


ガサ ゴソ ガサ ゴソ


「あった!これです」


ポケットに入れていた紙を取り出し

翠狐さんに渡した。



翠狐「ありがとう 真澄さん」


そう言って

渡された紙を見た瞬間…


翠狐「……この紙!! 黒夜!呉紅店主

この紙を見て!!」


翠狐さんは驚いた顔をして、

黒夜ちゃんと呉紅店主にも

その紙を見せた。


黒夜「きゅー?きゅきゅきゅ!!

(どうしたんですか?翠狐様

……なっなんでこの紙が此処に!!

この紙は国の秘密裏に使う物じゃ)」


呉紅店主「……この紙…術がかかってるわ

たしかに100って書かれているけど…」


翠狐「……術をかけた人物に

後から変えられるかもね……

…変えられたら困る…見ただけじゃ

証明にならないし…何か証拠を残せれば…」

(この紙を用意した人物は

…だいたい予想がつく

あの方しかいない…邪魔してまでも

真澄さんをこの国に居て欲しいなんて…

あまりにも身勝手すぎるよ)


黒夜「きゅきゅうきゅーきゅ きゅう

(翠狐様!それなら良い方法があるよ

緑!)」


何かの話し合いが終わり、

黒夜ちゃんは母さんの名を呼び


緑「どうしたの?黒夜ちゃん」


黒夜「きゅーきゅーきゅう!きゅっ

(この紙をスマホという機械で写真を

取ってくれないかな

術がかけられていて もしかしたら

文章が変えられるかもしれないんだ)」


紙を口にくわえ、

母さんの前に持ってきた。


緑「そうなの?!それは変わる前に

早く証拠を残さないと

ちょっと待っててね」


何故か、母さんはスマホを取り出し、

パシャと黒夜ちゃんの写真を撮った。





『この対応』が後の出来事に

役に立つなんて この時は思いもしなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る